帰宅後の奇襲と、実家の温もり
事前準備を終え、くたくたになりながら実家に帰宅すると、居間から聞き覚えのある賑やかな声が聞こえてきた。
ドアを開けると、両親と一緒に笑顔の叔母が座っている。
(あぁ、またお見合いの話を持ってきたな……)
佐藤は瞬時に察し、一気にゲンナリした心地になった。
上着を脱いで夕食を食べるために食卓の席につくと、待ってましたと言わばかりに叔母が目の前に一枚の写真を突き出してきた。
「なに?」
「佐藤くん、この前見せたこの写真の女の子覚えてる? 実は向こうから『佐藤さんを紹介してほしい』って言われてるのよ! もう一度ちゃんと考え直してくれない?」
話を聞くと、どうやら佐藤たちが最近街で色々と面白いイベントを手掛けている噂が彼女の耳に入り、年の差に対する躊躇よりも「面白そうな人」という興味が勝ってしまったらしい。
佐藤は頭を抱え、切実な声を上げた。
「……いやいや、流石に無理ですよ。僕みたいなオジサンと会ってもいいことなんて何一つないんですから、うまく断ってください」
隣に座る両親としては、本音を言えば息子に早く結婚してほしいのだろう。だが、さすがに相手が若すぎることに気が引けているのか、テレビを見たまま何も聞こえないフリを決め込んでいる。
「まあまあ、そう固いこと言わないで! 実はね、彼女『明日のイベントに行きます』って言ってたから、現地で直接紹介するわねー!」
それだけ言い残すと、叔母は「じゃあよろしくね!」と嵐のように荷物をまとめて、そそくさと帰っていってしまった。
「……やられた」
逃げ場のない現場での奇襲予告。しかも会社の敷地でやるイベントに職場やサークルの人間まで巻き込むことになるとは思いもしなかった佐藤は、深いため息をついた。
気を取り直し、両親と一緒に温かい夕食を囲む。
お見合いの件には触れず、たわいもない近況報告をしながら、ゆっくりとビールを傾ける。
(色々あって大変だけど……年末にこうして実家で普通にご飯を食べて、両親と晩酌できるって、実はすごく贅沢で幸せな時間なのかもな)
どこか心がじんわりと温かくなり、佐藤は盃を置くと両親に声をかけた。
「あ、そうだ。明日のイベント、せっかくだから二人もおいでよ。蕎麦も打つし、美味しい天ぷらや鴨出汁もあるからさ」
「あら、本当? じゃあお邪魔しようかしらねぇ」
母親が嬉しそうに微笑み、父親も「おう、楽しみにしとるよ」と小さく頷いた。叔母の爆弾には頭が痛いものの、実家のぬくもりに包まれながら、佐藤は明日訪れる賑やかな一日へ向けて静かに盃を干した。




