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僕が逃げた利器と得た安住  作者: 藤一


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仕事納めと、あたたかな納会

12月28日、山口製作所は今年最後の営業日を迎えた。

午前中から全社で年末の大掃除に取りかかっていると、佐藤のスマホに市役所の担当者から電話が入った。

「佐藤さん、お疲れ様です! 明日29日の昼過ぎ、事前準備としてテントの設営位置の確認やポスターの貼り付け、当日の動線打ち合わせで山口製作所さんへ伺いたいのですが……」

「わかりました。社長に確認してみますね」

作業の手を止めて社長に伝えると、「うん、そうだと思ってたよ! 全然オッケーだから、明日対応よろしくね」と予想していた通りの返事が返ってきた。

さっそくサークルメンバーに連絡を入れたが、みんな自身の本業の仕事納めで手が離せないとのこと。佐藤がサークル代表として明日の昼の打ち合わせを引き受けることになった。ついでに「明日の夕方、予定通り鴨肉を持って喫茶店に仕込みに行きますね」と伝えて電話を切る。

大掃除の現場に戻ると、職人たちの作業場は普段から整理整頓が行き届いているため、あっという間にピカピカになっていた。職人たちの自らの仕事場に対する誇りが覗く。

自然と大掃除の中心は事務室へと移ったが、人数が多いこともあり15時頃にはあらかた片付いてしまった。

「よし、みんな掃除ごくろうさま! 17時まで各自のデスクを綺麗にしたら、そのまま納会に繰り出すぞー!」

社長の威勢のいい声が響く。毎年使っている近くの居酒屋を予約してあるらしい。

佐藤は最後の難関である自分のデスク周りの書類整理やPCの清掃に取りかかったが、なんだかんだ一番時間がかかり、17時ぴったりにようやく作業が完了した。

上着を羽織って居酒屋へ向かうと、店内ではすでに現場の職人たちによる「0次会」が始まっており、出来上がった顔で賑やかに笑い合っていた。

「佐藤くん、おつかれー! こっちこっち!」

事務方の同僚たちに呼ばれ、空いている席につく。最初の一杯に冷えた生ビールを注文し、乾杯して喉を潤した。

18時、最後のメンバーが店に滑り込んできたところで、社長がグラスを持って立ち上がった。

「えー、みなさん、今年一年本当にお疲れ様でした! おかげさまで今年の売上は非常に安定していました。そして何より、秋の工場見学イベントで我が山口製作所の名前が地域に広まり、なんと新規契約のお話まで舞い込んでおります! 来年はさらに良い年にできるよう、みんなで頑張っていきましょう!」

拍手が起こる中、社長は少し照れくさそうに言葉を続けた。

「それと……AI導入の件では、結局なかなか成果が出ない中、みんな文句も言わずに実験に協力してくれて本当にありがとうね!」

その言葉に、店内からはドッと温かい失笑と苦笑いが巻き起こった。誰も責める者はなく、あの迷走劇すらも笑い飛ばせる良い雰囲気が場を包み込む。

「あと、明日と明後日は会社の敷地で年越し蕎麦のイベントをやるから、特に予定がない人は遊びに来て手伝ってね! それじゃあ……今年一年、お疲れ様でした! 乾杯ー!」

「乾杯ー!」

ジョッキがぶつかり合う快い音が店内に響き渡り、山口製作所の賑やかで気持ちのいい納会がスタートした。一年の労をねぎらい合い、美味しいお酒と料理を囲みながら、楽しく温かな夜の時間が流れていくのだった。

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