あっさりOKと、広がる支援の輪
翌朝、出社してすぐに社長へ昨日の市役所からの打診を伝えた。
「社長、市役所の人から『30日の蕎麦打ちと2日の餅つきをちょっとした街のイベントとして周知したい』って言われたんですけど……」
「おお、いいじゃない! OKだよー!」
社長は二つ返事で快諾してくれた。
「うちの敷地を自由に使ってくれて構わないよ。ただ、終わった後の後片付けだけは、市役所もサークルもみんなで責任持ってちゃんとやろうね、ってことだけ約束してくれればね」
さっそく市役所の担当者に社長の了解が出た旨を伝えると、電話の向こうで担当者が歓声を上げた。イベントの告知や市民への周知は市役所側で一手に引き受けてくれることになり、さらに「この前の工場見学会の時のように、商工会にも声をかけて出店やキッチンカーを手配してみます!」と張り切っていた。
(……待てよ、市役所が本気で広報してキッチンカーまで来るとなると、相当な人出になるんじゃないか?)
ただのサークル活動の延長のつもりだったが、急激に規模が大きくなってきたことを察した佐藤は、仕事が終わるとすぐに蕎麦打ちを教えてくれたあの蕎麦屋へ電話を入れた。
「……というわけで、市役所が広報してちょっとしたイベントになりそうなんです。僕たちだけで打ちきれるか不安で……」
事情を説明すると、店主は電話口でガハハと豪快に笑った。
「そりゃあ大騒ぎだな! 当日はうちも営業があるから直接手伝いには行けないけど、うちで打った生蕎麦を50玉分くらい提供してやるよ! それを予備で持っていきな!」
「えっ、本当ですか!? お代はどうすれば……」
「代金なんて、イベントが終わった後に売上の結果を見て気持ち程度で払ってくれりゃいいよ。楽しんできな!」
職人の粋な計らいに何度も感謝を伝えた佐藤は、続いて先日お世話になった製粉所へ連絡を入れた。
「50人前分の蕎麦が打てるくらいの蕎麦粉と強力粉を注文したいのですが」
「毎度どうも! 50人前ね、バッチリ用意しておくよ!」
生蕎麦50玉+自分たちで打つ50人前で、合計100人前近くの蕎麦が確保できる見通しが立った。
あとは当日必要な大鍋やコンロ、ツユを入れるカップ、箸、薬味の準備、そして餅つき用の餅米の追加手配など、必要なものをリストアップしながら準備を進めていく。
「まさか年末の年越し蕎麦がこんな大仕掛けになるとはな……」
秘密基地の小屋でリストを検分しながら、渡辺さんたちサークルメンバーもどこか嬉しそうに苦笑いを浮かべていた。しかし、その瞳には「街のみんなに美味いものを食わせてやるぞ」という職人魂のような熱い火が灯り始めているのだった。




