年末年始の話題と、予期せぬ広がり
週明け、会社に出社すると事務所内はどこか年末独特のソワソワした雰囲気に包まれていた。
「佐藤さん、年末年始の予定は決まりました? 年末は大掃除でバタバタしますけど、このあたりの神社は出店やキッチンカーがたくさん出て、かなり盛り上がるんですよ」
同僚から声をかけられ、周りの社員たちも「俺は雪山にスノボ行く予定」「うちは関東から孫が来るから、一緒に遊ぶんだ」と、それぞれ楽しそうな連休の予定を教えてくれた。
「佐藤さんは何するんですか?」と聞かれ、「僕も家の大掃除と初詣くらいですかね。あ、あとはサークルのみんなで年越し蕎麦を打って、餅つきをやる予定です」と答えると、ちょうど給湯室から出てきた社長が目を輝かせて会話に割って入ってきた。
「えっ! 楽しそうだねぇ佐藤くん! ねぇ、よかったら会社の敷地を貸すからさ、来られる社員だけでも集めて、一緒に作った年越し蕎麦を食べたり、年明けに餅つきをやったりしない?」
「えっ、会社でですか? サークルのみんなに確認してみないと分からないですけど……」
「そうだねぇ。31日と元旦はみんな家族と過ごすだろうからさ。もしサークルの許可が出たら、30日に年越し蕎麦、2日に餅つきあたりで計画してみてよ!」
ノリノリの社長に苦笑いしつつ、「聞いておきますね」と引き受けた。
仕事が終わると、さっそく佐藤はいつもの喫茶店へ向かい、集まっていたサークルメンバーに社長の提案を話してみた。
「会社の敷地で蕎麦打ちと餅つきですか。30日と2日あたりでどうですかね?」
「おお、いいじゃないか! 正直年末年始なんて特にやることないし、大歓迎だぞ!」
おじさんたちが快諾してくれたその時、カウンターの奥でコーヒーを飲んでいた男性が「あの……すみません!」と声をかけてきた。以前、イベントの引き継ぎで一緒になった市役所の職員だった。
「今の話、聞こえてしまいまして……! ぜひ僕たち市役所メンバーも混ぜてもらえませんか? できればまた市で周知して、ちょっとした町おこしイベントみたいにしたいんです!」
思いがけない申し出に、佐藤とサークルメンバーは顔を見合わせた。
「僕たちサークルとしては全然構いませんけど……場所を提供する会社がどう言うかですね。明日、社長に確認して回答しますね」
「本当ですか! よろしくお願いします!」
静かに内々で楽しむはずだった年末の蕎麦打ちと餅つきが、またしても賑やかな大騒動になりそうな予感を秘めながら、佐藤は店をあとにした。




