運命の朝と、高まる熱気
ついに迎えたイベント当日の朝。心配された天気も見事な秋晴れとなり、佐藤はいつにも増してすっきりとした心地よさで出社した。
午前中の通常業務を手早く片付け、午後の開催に向けて最後の確認作業に入る。
昼過ぎになると、渡辺さんたちサークルのメンバーが作業着姿で続々と駆けつけてくれた。手作りの木製ベンチやウェルカム看板、セピア色の写真を飾ったパーテーションの陳列状態を一つひとつ入念にチェックしていく。
敷地の端に目を向けると、商工会から派遣された軽食や飲み物を売るテントの設営もすっかり完了していた。
「おーい、準備はどうですかー?」
佐藤が声をかけると、テントの中で焼きそばの仕込みをしていた商工会のおじさんたちが「バッチリだよ! お祭みたいで最高だね!」とハイテンションで手を振り返してくれた。会場全体に、どこかソワソワとしたお祭り前夜のような熱気が漂っている。
そこへ、スーツ姿の市役所の職員が息を切らせて様子を見にやってきた。
「佐藤さん! ついに今日ですね! 準備の進み具合はどうですか?」
「順調ですよ。敷地内の動線も完璧です」
「素晴らしい! 実はですね、事前に『工場内の見学は安全のため先着順だけど、敷地内の展示エリアや出店は誰でも入れます』って周知を出したんです。そうしたら市役所の窓口で『絶対行きます!』ってすごい数の問い合わせがありまして……」
職員はスマホの画面をかざしながら、興奮気味に続けた。
「市の公式SNSにも告知を出したら、普段は数十件程度の『いいね』が、なんと今回は100件以上ついたんです! 市民の期待値、めちゃくちゃ高まってますよ!」
「えっ……100件以上!?」
予想をはるかに超える反響に、佐藤もサークルメンバーも一瞬目を丸くした。
「おいおい、本当に大賑わいになりそうだぞ……!」
「よし、気を引き締めていこう! 受付のノベルティと案内の段取り、もう一回確認だ!」
SNSの反響を聞いたことで、おじさんたちのエンジンは再点火した。看板の傾きを直したり、パンフレットの並べ方をミリ単位で整えたりと、最後の確認作業に一段と熱が入る。
時計の針は12時30分を回っていた。開場まで、あと30分を切った。
手作り感と本気が詰まった「大人の本気の文化祭」の幕が、まもなく上がろうとしていた。




