巻き込まれたおじさんたちと、爆走するおもてなし計画
翌日から、佐藤は通常業務の合間を縫って少しずつ見学の準備を進め始めた。案内用のみやすいマップの作成や、安全な見学ラインを示すためのテープ貼りなど、地道な作業をこなしていく。
その日の帰り道、報告も兼ねてサークルの溜まり場へ顔を出し、見学計画の進捗を話した時のことだ。
「おいおい佐藤くん! なんでそんな面白いイベントに俺たちを混ぜてくれないんだよ!」
渡辺さんと小林さん、高橋さんが一斉に身を乗り出してきた。
「いやいや、これは会社の行事ですから……」と苦笑いする佐藤に、「社長に相談してみてくれよ!」とおじさんたちの圧が押し寄せる。
翌日、ダメ元で社長に「サークルの仲間も手伝いたいと言っているんですが……」と話してみると、「いいよー! 人手は多い方が助かるし、面白そうじゃないか」と、いつもの調子で軽い返答が返ってきた。
お墨付きを得たおじさんたちは大張り切りだ。
その週末、さっそく全員で集まり「工場見学おもてなし計画」の作戦会議が始まった。
「ただ工場を見るだけじゃ味気ないだろ! 俺たちの今までやってきたDIY技術をフル活用しようぜ!」
短期間でできるアイデアが、次から次へと飛び出していく。
裁縫:見学者用のオリジナルスタッフエプロンと、持ち帰り用記念ノベルティの制作
家具作り:エントランスに置く特設のパンフレットラックや、休憩用の木製ベンチの設置
木工・簡易建築:見学ラインを仕切るおしゃれな木製パーテーションと、入口のウェルカム看板の制作
「おいおい……これ、ただの工場見学じゃなくて一大イベントになっちゃいませんか!?」
佐藤の心配をよそに、おじさんパワーのギアは完全にトップに入っていた。
「善は急げだ! ホームセンターに行くぞー!」
計画がまとまるやいなや、全員で車に乗り込みいつもの大型ホームセンターへ直行。木材、塗料、布地、工具をドッサリと買い込み、準備を開始した。
途中で一応、作業途中のイメージ図を手に社長へ顔を出し、「ここまでやっちゃって大丈夫ですか……?」と確認したものの、社長は「いいよー! すごいねぇ、賑やかでいいじゃない!」とまたしても超絶軽い返事。
その軽快な「いいよー」がさらに火に油を注ぎ、おじさんたちのやる気は最高潮へ。
ただの「平日午後の小規模な会社見学」だったはずの企画が、サークルメンバーの熱意によって、街を巻き込む手作り感あふれるおもてなしイベントへと変貌を遂げようとしていた。




