真っ暗闇の配線と、赤く染まる秘密基地
日曜日の朝。誰一人遅刻することなく、約束の時間よりも早く全員が渡辺さんの作業場に顔を揃えた。おじさんたちはもともと早起きなこともあり、朝から全員の顔がイキイキと輝いている。
「よーし、昨日の続きから一気に完成させちゃうぞ!」
今日もテーマは「徹底的な遮光」だ。納屋の小部屋に入り、ドアを閉めて完全に室内を真っ暗にする。目撃されるわずかな光の漏れも許さないため、暗闇の中で目が慣れるのをじっくり待ってから、隙間がないかを入念にチェックしていく。
「あ、佐藤くん、そこの換気口のふちからほんのうっすら光が入ってるな」
「本当ですね! 遮光シートを二重にしてテープでガッチリ固めます!」
丁寧な作業が続くが、ここでひとつ予想外の事態が発生した。みんな暗室の遮光対策を優先しすぎたせいで、部屋の中が完全に暗闇と化してしまったのだ。
「うわ、これ何も見えないぞ……」
「計画が甘かったな! 電源コードの配線と赤色電球のセットを、真っ暗な中でやらなきゃいけないとは!」
手探りでコンセントの位置を探し、コードを這わせ、ソケットに赤色電球を取り付けていく。あちこちに手をぶつけながら「痛っ!」「そっちは壁だよ!」と笑い合うおじさんたち。準備の手順としてはちょっと抜けがあったものの、「これはこれで宝探しみたいで面白いな」と誰もが楽しんでいた。
パッと赤色電球のスイッチを入れると、暗闇の中に怪しくも美しい赤い光がふんわりと広がった。
「うわぁ……! すごい、本当に写真館の暗室だ!」
赤色電球の灯りの下で、坂本写真館のおじいさんから譲り受けた現像バットや薬品、そして昨日買ってきた印画紙を順番に整然と配置していく。最後にポータブルクーラーのスイッチを入れ、室内の温度が薬品の適正温度にしっかり保たれるか効き具合を確認した。
冷え冷えとした空気と、赤い光に包まれた怪しい秘密基地のような空間。
「完璧だ……! ついに僕たちの暗室が完成したぞ!」
完璧に整った設備を見渡し、佐藤たちは手応えを感じながら互いに顔を見合わせてニヤリと笑った。




