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僕が逃げた利器と得た安住  作者: 藤一


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35度の酷暑と、真夏の「足水」大作戦

9月に入ったのにまだまだ酷暑が続いていて、田舎のこの街にも容赦ない真夏の太陽が照りつけていた。観測史上最高レベルの暑さが続き、この日の気温はなんと35度を超える酷暑を記録していた。

「あっちぃ〜……! アスファルトから蜃気楼が見えるぞ……」

そんな猛暑の中、商店街では「夏の納涼フェア」が開催されていた。日差しを遮るアーケードの下とはいえ、買い出しにやってくるお年寄りや、夏休みを持て余した子どもたちは、みんな汗だくでハァハァと息を吐いていた。

「この暑さはヤバいな。熱中症になっちゃうよ……」

商店街の役員である鈴木の呼びかけで、佐藤たちDIYサークルも急遽「納涼サポート隊」として駆り出されることになった。

「よし! こんな日こそ、大人が本気で子どもとお年寄りを涼しませてあげよう!」

佐藤たちが用意したのは、大きなバケツとタライ、そしてたくさんの氷。商店街のベンチの横に冷たい水を張ったバケツを並べ、素足で浸かってもらう——足湯ならぬ『足水(あしみず)』体験コーナーを設置したのだ。

「おばあちゃん、買い物大変だったでしょう。靴下脱いで、ここに足を浸けてみて!」

「あらぁ、いいのかい……? じゃあ失礼して……」

買い出し袋を抱えた近所のおばあちゃんが、恐る恐るバケツに足を浸す。

「ひやぁぁ〜〜っ!! こりゃあ冷たくて気持ちいいわぁ……! 頭のてっぺんまでスッキリするよ!」

「ガハハ! だろ? 途中で氷も追加しちゃうからね!」

渡辺さんがドサッと追い氷を投入すると、冷たさが倍増。噂を聞きつけた子どもたちも「僕もやる!」「私も!」と集まってきた。

「つめたーい!!」「氷持って帰っていい!?」

バケツの中でバシャバシャと足を弾ませ、はしゃぐ子どもたちの歓声と、それを見守るお年寄りたちの優しい笑顔。商店街のあちこちから爽やかな笑い声が響き渡り、酷暑の不快感を吹き飛ばしていった。

さらに、午後のメインイベントとして始まったのが『大人VS子ども! 商店街・水鉄砲大合戦』だ。

佐藤たちはビニールシートで防水対策をした広場で、ポッカサッポロの空き容器や市販の強力水鉄砲を手に子どもたちと対峙した。

「よし、かかってこい! 大人の威厳を見せてやる!」

「やーい! おじさんたちをやっつけろー!」

「バシャシャシャッ!!」

子どもたちが一斉に水鉄砲を撃ち込んでくる。佐藤も渡辺さんも、頭から足をすっぽり濡らして大はしゃぎだ。

「冷たっ! 気持ちいい〜〜!」

「佐藤くん、後ろから狙われてるぞ! ガハハ!」

全身びしょ濡れになり、服が重たくなるほど水をかぶったが、真夏の風が吹くたびに体温が奪われ、驚くほど涼しい。

何より、無邪気に水を掛け合い、大人も子どもも一緒になってお腹を抱えて笑い合うその時間は、どんなエアコンの風よりも贅沢で爽やかだった。

「ふぅ……! めちゃくちゃ涼しくなったな!」

びしょ濡れのTシャツを絞りながら、佐藤は眩しい夏空を見上げた。

真夏の太陽の下、冷たい水と弾ける笑顔。手作りの「足水」と水鉄砲遊びは、この街の暑い夏を最高に涼しく、そして忘れられない思い出に変えてくれたのだった。

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