深夜1時の乾杯と、やりきった男たち
「よし、組み立て開始だ!」
20時。鈴木が店の鍵を閉めると同時に、磨き抜かれたパーツが店内に次々と運び込まれた。
事前の正確すぎるマーキングと完璧なカットのおかげで、作業は驚くほどスムーズだった。下穴に吸い込まれるように吸いついていくモクネジ。「ウィン、キュッ!」とインパクトドライバーの心地よい音が店内に響き渡る。
1本脚のベースを天板にしっかりと固定し、先生に教わったあの「荷物置き棚」をジャストサイズで組み込む。さらに脚の底には床傷防止のフェルトを貼り付け、椅子とテーブルが次々と完成していった。
そして、夜が深まった深夜1時(25時)を回った頃。
「よし……これで、最後のモクネジ締まったぞ!」
佐藤がドライバーを置いた。
古い四角いテーブルと椅子をすべて裏手へ運び出し、出来上がったばかりの「丸型1本脚テーブル」と「レトロなレザー調クッションチェア」を整然と配置していく。
店内を少し離れた場所から見渡した全員が、息をのんだ。
「……うわぁ」
そこにあったのは、もはや「普通の田舎の喫茶店」ではなかった。
シックな濃い茶色のアンティーク風レンガ壁紙。それに完璧に同化するように佇む、深みのある木目の丸テーブルと、温かみのあるレザーチェア。天板の下にさりげなく設けられた荷物置き棚も、まるで最初からそこにあったかのように自然に馴染んでいる。
空間全体から漂う圧倒的な一体感と高級感。
「すごい……本当にできちゃったよ……」
佐藤が呟くと、渡辺さんがニヤリと笑って、自分の大きなリュックサックをごそごさと漁り始めた。
「ガハハ! 思った通り、めちゃくちゃ早く終わったな! 1時なら余裕だ!」
渡辺さんがリュックから取り出したのは、キンキンに冷えた缶ビールと、手作りの枝豆や塩もみキュウリなどの自家製おつまみだった。
「ほら、みんな! 乾杯するぞ!」
「あ……!」佐藤はハッとした。「渡辺さん、そういえばLINEで『今夜は全員、歩きかタクシーで集合な!』って書いてましたよね……これのためだったんですか!?」
「当たり前だろ! 男仕事の後に、完成した自分の作品を眺めながら飲むビールより美味いもんがこの世にあるかよ!」
渡辺さんの粋な仕込みに、全員が大爆笑した。
プシュッ! プシュッ! と缶ビールを開ける音が響き、夜中の喫茶店で「完遂の乾杯」が交わされた。
「乾杯ーーーー!!」
冷えたビールが喉を駆け抜け、自家製の塩キュウリが身体に染み渡る。上機嫌になったおじさんたちの、温かい語らいが始まった。
「最初はさ、渡辺さんの農機具小屋のDIYから始まったサークルだったんだよなぁ」
「それが、まさか街の喫茶店の一部を丸ごとリノベーションしちゃうなんて思わなかったよ」
「小林さんのセンス、高橋さんの手際の良さ、渡辺さんのパワフルさ、佐藤くんの正確な設計……そして鈴木さんの美味しいコーヒー。全員の力が噛み合った結果だね」
「次のDIYは何をやろうか?」という話も出かけたが、佐藤は静かにビール缶を持ち上げた。
「次は次回集まる時までにゆっくり考えましょう。……今夜はただ、この完成した最高の喫茶店の風景を、じっくり味わいませんか?」
「……そうだね。それが一番贅沢だ」
アンティーク調の温かい照明に照らされた店内。自分たちの汗と情熱が詰まった最高の空間で、おじさんたちは深い達成感と幸せに満たされながら、静かに夜が明けていくのを味わっていた。




