黄昏のビンゴ大会と、商店街の熱気
週末。夏空が広がる商店街の広場は、出店の甘い香りと子どもたちの歓声で包まれていた。
佐藤たちは景品を提供したことと、役員でもある鈴木の口利きのおかげで、主催者テントの特等席からビンゴ大会の様子を見学させてもらうことになった。
ステージの中央に目をやると——。
「おぉ……本当に目玉商品みたいに飾られてる!」
渡辺さんたちが作った3脚の椅子が、特設ステージのど真ん中に誇らしげに並んでいた。プロの手による壁紙やスポットライトを浴びて、手作りとは思えない存在感を放っている。
やがて、司会者の声がスピーカーから響き渡った。
『さあ、本日のメインイベント、大ビンゴ大会のスタートです! 本日の目玉商品は、なんとお肉や家電だけではありません! 街の職人(?)たちが心を込めて手作りした、世界に一つだけの本格オリジナルチェアも届いております! これが本当に素晴らしい出来栄えでして……!』
大げさなアナウンスに、渡辺さんたちが「職人だってよ!」と互いの肩を叩き合ってニヤニヤしている。
「さあ、ビンゴスタートです!」の合図とともに、会場の熱気が一気に跳ね上がった。
ガラガラと回る抽選箱。カードを見つめる真剣な目差し。「リーチ!」「あー、惜しい!」という声援とため息が交錯する中、ついに最初の「ビンゴ!」が上がった。
ステージに登ってきたのは、40代ほどの中年男性。
景品を見渡した男性は、迷うことなくステージ中央へ歩み寄り、渡辺さんの無骨な無垢材チェアを指さした。
「最近、自宅の書斎の椅子が壊れて探してたんですよ。これ、すごく頑丈そうでデザインも渋くて最高です!」
「よしっ!!」テントの陰で渡辺さんが小さくガッツポーズを決めた。
続いて2人目のビンゴは主婦の女性。彼女は迷わずドーンと置かれた「お米20キロ」を担ぎ上げ、「今の時代、食費が本当に大変だから助かるわ〜!」とリアルな笑顔を見せて会場の爆笑をさらった。
3人目のビンゴは小学生の男の子。彼は景品の中からスケートボードなどのアーバンスポーツ用サポーターセットを嬉しそうに抱えて走っていった。
豪華な家電、お肉、お米、おもちゃ……バラエティ豊かな景品が次々と貰われていく中、小林さんのファブリックチェアと高橋さんのアイアン脚チェアも大人気だった。
そしてビンゴ開始から15分ほど、ちょうど10人目のビンゴ達成者が高橋さんの椅子を大事そうに抱えてステージを降りた。
『はい! 街の手作りプレミアムチェア、これにて完売(?)でございます! ありがとうございました!』
自分たちが手塩にかけて作った椅子が、ちゃんと人の手に渡り、喜ばれている姿を最後まで見届けることができた。胸の奥がじんわりと温かくなり、言葉にできない心地よい気分が広がっていく。
「はい、お疲れさん! 大大成功だったな!」
そこへ、冷えた缶ビールを両手に抱えた鈴木がやってきた。冷たい缶をみんなに手渡すと、鈴木は上機嫌で賑わう広場を見渡した。
「最近は郊外にデカい大型ショッピングモールができて、うちの商店街もすっかり元気がなくなってたんだけどさ……こうして人が集まって笑ってるのを見ると、やっぱりみんな、この泥臭い商店街が大好きなんだなぁって思うよ」
プシュッと缶ビールを開け、夕暮れ時の商店街で乾杯した。
提灯の明かりが灯り始め、どこか懐かしいお祭りの匂いが漂う。
自分たちの作ったものが、ほんの少しだけこの街を明るくしたのかもしれない。佐藤は冷えたビールを一口飲み、目の前に広がる暖かい街の景色を、いつまでも目を細めて眺めていた。




