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僕が逃げた利器と得た安住  作者: 藤一


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座り心地の追求と、運命の一脚

土曜日の朝、佐藤たちは再び隣町のホームセンターへと向かった。

特設会場に到着すると、今回の木工ワークショップの講師は前回とは違う先生だったが、とても物腰が柔らかく丁寧な教え方をする人で、全員ほっと胸を撫で下ろした。

「今日はどんな家具を作りたいんですか?」

先生に尋ねられ、佐藤たちは自分たちで張り替えた喫茶店の壁紙の写真を見せた。

「実は、この壁紙に合う喫茶店用のデスクとチェアを作りたいんです!」

写真を見た先生は「お〜、すごい! 本格的なアメリカンヴィンテージですね!」と感心してくれたあと、プロならではのアドバイスをくれた。

「喫茶店で使う家具なら、デザインのカッコよさだけじゃなくて『座り心地』と『実用性』を一番に考えないとダメですよ。長居しても疲れないようにクッションを入れるのも手ですし、家具の脚の裏には床を傷つけない&カタカタ音を防止する緩和剤(フェルトやゴムシール)を付けるのも必須です」

「なるほど……! 見た目だけじゃなくて、お客さんがどう過ごすかまで計算しないとダメなのか!」

おじさんたちは真剣な表情でカタログを開き、「あーでもない、こーでもない」と頭を悩ませ始めた。

すると、小林さんが提案した。

「ねえ、せっかく今日はいろんな素材やクッションが選べるんだから、全員バラバラの雰囲気で椅子を1脚ずつ作ってみないか? それを喫茶店に持ち込んで、どれが一番しっくり来るか確かめようよ!」

「それ、面白いですね!」

こうして、それぞれが自分の好みでデザインを決めて作業がスタートした。

渡辺さんは無骨な無垢材をガシガシ削ったワイルドな木製チェア。小林さんは呉服屋のセンスを活かした渋いファブリッククッションの椅子。高橋さんはシンプルなアイアン脚の現代風チェア。そして佐藤は、クッション性とレトロな雰囲気を両立させたレザー調の張り地を選んだ。

木材を切り出し、脚を組み立て、ネジを締め、クッションを固定していく。

最後に保護とツヤ出しのためのニスを丁寧に塗り込み、乾燥待ちの時間に入った。出来上がった4つ並びの椅子を見た先生が、思わず声を漏らした。

「いやあ、皆さん上出来ですよ! 歪みもないし、クッションの張り加減もプロ顔負けです!」

先生に絶賛され、おじさんたちは思わず顔を見合わせて「ヘヘッ」と照れ笑いを浮かべた。気分が良くなったところで、ホームセンターのカフェコーナーでコーヒーを飲みながら次の予定を話し合う。

「デザインが1つに決まったら、今度はその材料を大量買いしに来ないとな」

「ああ、テーブルの天板用の板も一緒に買おう!」

ワークショップを終え、一行は出来立てホヤホヤの4脚の椅子を車に積み込み、そのまま鈴木の喫茶店へと向かった。

「お〜、お帰り! どうだった?」

営業中の店内に4つの全く違うデザインの椅子を持ち込み、新しく張り替えたレンガ壁の前にズラリと並べてみた。

「どれも捨てがたいな……」

鈴木が腕を組んで悩んでいると、ちょうど居合わせた常連のお客さんたちにも「どれが一番座り心地良さそうに見えます?」と意見を聞いてみることにした。

「う〜ん、この木目もカッコいいけど……長居するなら、こっちのレトロでクッションがしっかりしてるやつが一番落ち着くなぁ」

お客さんたちが実際に座り比べてみた結果、圧倒的に評判が良かったのは——佐藤が作った『レトロなレザー調クッション×ダークブラウンの木枠』の椅子だった!

「決まりだな!」渡辺さんが佐藤の肩をポンと叩いた。「レトロさとクッション性を両立した、佐藤くんモデルで量産決定だ!」

「やった……!」佐藤は自分の作った椅子が認められ、誇らしさで胸がいっぱいになった。

お店の雰囲気にぴったりの「理想の一脚」が決まり、次は本格的な量産とテーブル作りへ。おじさんたちの秘密のリノベーションは、いよいよクライマックスへと向かっていくのだった。

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