昼休みの白球と、まさかの対戦相手
月曜日の昼休み。
山口製作所の裏手にある小さな広場で、佐藤は同僚とキャッチボールをしていた。
「ナイスボール! 佐藤くん、筋がいいね!」
パシーン! と革のいい音が空に響く。最初は佐藤と同僚の2人だけで始めたキャッチボールだったが、その心地よい音に引き寄せられるように、一人、また一人と社員が集まってきた。
グローブを持ってきた者、缶コーヒーを片手にベンチで見学する者、通りがかりにヤジを飛ばす先輩たち。
「……あれ? 結構集まってないか?」
佐藤がふと立ち止まって人数を数えてみた。
「1、2、3……見ている人も合わせたら、11人もいるじゃん!」
「おいおい、11人いたら野球の試合ができるじゃないか!」
同僚が笑いながらバットを振るジェスチャーをした。すると、見学していたベテラン社員がニヤリと笑って身を乗り出してきた。
「試合なら、近所の商店街チームに声をかけてみようか? あそこ、定期的に草野球の試合相手を探してるんだよ」
「えっ、商店街チームですか?」佐藤はハッとした。「商店街ってことは……もしかして純喫茶の鈴木さんも入ってたりします?」
「鈴木さん? ああ、入ってる入ってる! 鈴木さんは確かセカンド守ってたはずだぞ」
「やっぱりか!」佐藤は思わず笑ってしまった。ここでもあのサークルの繋がりが顔を出すのだから、この町は狭くて面白い。
みんなで「ポジションはどうする?」と盛り上がり、紙とペンを出して打順と守備位置を書き出してみた。内野も外野も意外と経験者が多く、綺麗にポジションが埋まっていく。
しかし、ある重大な問題にぶち当たった。
「……待てよ。ピッチャーをやれるヤツ、一人しかいなくないか?」
「あ、本当だ。本格的に投げられるのは営業の木村だけだ……」
草野球とはいえ、ピッチャーが一人だけでは打たれたりスタミナが切れたりした時に試合が崩れてしまう。
「まあ、遊びの延長とはいえ、やるならある程度真面目に勝ちに行きたいよね」
佐藤が言うと、周りも頷いた。
「会社の若い奴のお父さんとか、近所で投げられそうな人がいないか声かけてみようぜ」
「うちのチーム、上は50代までいて平均年齢が高いからな。交代要員も含めて、控えを揃えて18人は欲しいところだ」
あれこれ作戦を練っていると、商店街チームと連絡を取ってくれていた先輩がスマホを片手に戻ってきた。
「おい、先方の商店街チームから返信が来たぞ!『明日の夜、隣町のナイター設備があるグラウンドで合同練習やるから、良かったら一緒に練習しないか?』だってさ!」
「明日の夜!? タイミング早っ!」
あまりの展開の早さに全員で顔を見合わせたが、断る理由なんてどこにもなかった。
「せっかくのお誘いだし、参加できるメンバーだけで行ってみましょう!」
作業着の袖をまくり上げ、おじさんたちの「大人の本気の遊び」は、DIYの木工仕事から今度はグラウンドの土の上へと飛び火していくのだった。




