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僕が逃げた利器と得た安住  作者: 藤一


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日曜のモーニングと、繋がるDIYの輪

金曜夜からのオールナイト作業の疲れを癒やすため、土曜日は文字通り泥のように眠った。

そして迎えた日曜日。目覚ましもかけずに泥のように眠ったおかげで、目覚めは最高に爽快だった。時計を見ると9時半を過ぎている。

「あぁ〜、めちゃくちゃ寝た……!」

佐藤は着替えを済ませると、足早に鈴木の喫茶店へと向かった。

「カランコロン!」とドアをくぐる。

朝の柔らかい日差しに照らされた店内は、自分たちで張り替えたアンティーク調のレンガ壁紙が見事に調和し、以前よりも何倍も渋く、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。近くで見ても、自画自賛したくなるほどの出来栄えだ。

「いらっしゃい、佐藤くん。よく寝られたかい?」

カウンター越しに鈴木が笑顔で迎えてくれた。

「バッチリです! まだモーニングって頼めますか?」

「もちろん、11時までやってるよ」

注文したモーニングセットのトーストとブレンドコーヒーが運ばれてくる。サクッと香ばしい厚切りトーストをかじり、挽きたてのコーヒーを一口すする。

(休日の朝10時前に、居心地のいい喫茶店で美味しいトーストとコーヒー……なんて贅沢な時間だろう)

都会にいた頃は、休日の朝といえばダラダラとスマホを眺めて終わっていた。自分の手で居心地を良くした空間で過ごすこのひとときは、何物にも代えがたい幸せだった。

そこへ、「カランコロン」と再びドアが開いた。

入ってきたのは、山口製作所の会社の同僚だった。

「あれ、佐藤くん? こんなところで朝飯?」

「あ、お疲れ様! ここのモーニング、すごく美味しいんだよ」佐藤は挨拶もそこそこに、思わず壁を指さして自慢し始めた。「ねえ、この壁紙見てよ。実はこれ、僕たちのDIYサークルで金曜の夜に張り替えたんだよ!」

「えっ、マジで!? プロがやったんじゃないの!?」同僚は目を丸くして壁紙に近づき、エンボス加工の立体感を指で確かめた。「すごいな……めちゃくちゃカッコいいじゃん! え、自分たちでこんなことできるの? 面白いことやってるなぁ……俺も自分の家の部屋、やってみたいかも。コツとか教えてよ!」

「いやいや、僕らも教えるほどの hindsight(実力)はないよ!」佐藤は苦笑いしながら手を振った。「実は先週、隣町のホームセンターで職人さんが教えてくれるワークショップに参加したんだ。そこでプロに教わったからできたんだよ」

そう説明しながら、佐藤はスマートフォンで「あのホームセンター、またワークショップやらないかな」と検索してみた。

すると画面を見た佐藤は、思わずコーヒーを吹きそうになった。

「……嘘だろ!?」

「どうしたの?」

「次回開催の案内が出てるんだけど……『プロが教える! 無垢材で作る本格デスク&チェア作成ワークショップ』だって……!」

「「な、なんだってー!?」」同僚も驚いている。

あまりにもタイミングが良すぎる。壁紙の次は「机と椅子」をどうしようかと話していた矢先、まさにそのものズバリのワークショップが開催されるのだ。

「これ、絶対に神様が『机も自分たちで作れ』って言ってるよ……!」

佐藤はその場ですぐに自分たちの分の枠を予約した。

その後、グループLINEで渡辺さん、小林さん、高橋さんに「奇跡的に机と椅子のワークショップ見つけました! 予約しちゃいました!」と連絡を入れると、全員から即座に返信が届いた。

『よっしゃーー!! もちろん行くぞ!』

『土曜のスケジュール調整完了!』

『道具の準備は任せろ!』

今回も全員の予定がバッチリ噛み合った。

「教えるのは無理だけど」と佐藤は同僚に向かってニッコリ笑った。「来週のワークショップでまたプロの技を盗んでくるから、完成したら見に来てよ!」

広がり続けるDIYの輪と、どこまでもタイミングの良い運命。佐藤たちの「大人の本気の遊び」は、まだまだ止まりそうにない。

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