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僕が逃げた利器と得た安住  作者: 藤一


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ホームセンターというテーマパーク

「なぁ、トラクターの上を跨ぐ高床棚と、草刈機の壁掛けハンガー……これ、柱や壁の強度大丈夫か?」

週末の秘密基地。

作業に取りかかる前、佐藤がふと小屋の梁(はり)を見上げて言った。

当初は「10平米のシンプルな物置」のつもりで建てた骨組みだ。そこに重いコンテナや農機具を空中吊りにして、大人が二人で乗るような補強棚まで追加するとなると、耐荷重が心配になってくる。

「おお、流石は佐藤くん、慎重だな!」鈴木がニヤリと笑った。「でも安心しろ。この小屋の柱と骨組み、最初から渡辺さんが『どうせなら一番頑丈なやつにしよう』って言って、2×4材の倍の厚みがある2×6(ツーバイシックス)材を混ぜて組んであるんだ」

「えっ、2×6材ですか!?」

「おう!」渡辺さんが胸を張る。「雪が積もっても潰れんように、骨組みだけはガチガチに作ってあるんだよ。だから、壁と梁にちょっと『金具』と『受け木』を追加して補強してやれば、草刈機どころか人間がぶら下がってもビクともせん!」

「なるほど……! 最初からオーバースペック気味に作ってあったんですね」

「というわけで佐藤くん、補強用のL字金具とコーススレッド(強力ネジ)を買いに、近くの大型ホームセンターまでドライブと行こうか!」

——車で15分。

やってきたのは、資材館を併設した巨大な大型ホームセンターだった。

自動ドアをくぐると、木材の匂いと金属の重厚な匂いが漂ってくる。ズラリと並ぶのは、見たこともないような巨大な電動工具や、プロ用の建築資材の数々だった。

「うわ……すごい種類だ……」

佐藤は目を見張った。

東京にいた頃もホームセンターには行ったことがあったが、日用品コーナーを少し覗く程度だった。だが、今の佐藤には「工具や資材」が全く違う輝きを放って見えた。

高圧洗浄機、見たこともない形状の特殊ノコギリ、壁を塗るための漆喰(しっくい)や珪藻土、おしゃれなレトロ電球、ヴィンテージ風の取っ手金具……。

(あ、このトタン風の金属パネル、壁のアクセントに使ったらカッコいいかも……)

(このインパクト用のソケットセットがあれば、もっといろんな作業ができるな……)

見ているだけで、「こんなものまで作れるんじゃないか」と妄想が膨らみ、胸がワクワクと踊る。まさに大人にとってのテーマパークだった。

鈴木が「あったぞ、この極厚の補強金具だな」と目当ての資材をカゴに入れた。

「佐藤くん、なんか欲しいものあったか? ついでに買うぞ?」

「えっ」

一瞬、棚に並んだ最新型のサンダー(研磨機)や、おしゃれなソーラーガーデンライトに手が伸びそうになった。しかし佐藤は踏みとどまり、首を振った。

「……いえ! 欲しいものは山ほどありますけど、どこにどう使うか具体的なイメージがないのに買ったら、ただの無駄遣いになっちゃいますから。今日は補強金具だけにします!」

「ハハハ! 偉いな佐藤くん! DIYの最大の敵は『使い道を決めてない衝動買い』だからな!」

鈴木が豪快に佐藤の背中を叩いた。

買わなかったけれど、悔しさはない。

「いずれスキルが上がったら、あの工具を使って何かを作ってみたい」という未来への楽しみが、またひとつ増えたのだから。

必要な金具だけを買い、ホクホクした気持ちでホームセンターを後にした佐藤たち。

小屋へ戻り、買い立ての頑丈な金具をガチッと打ち込んでいく補強作業へと、再び腕を振るうのだった。

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