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僕が逃げた利器と得た安住  作者: 藤一


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トントン叩く傘釘と、屋根の上のソーラー

「佐藤くん、高所作業だ! 脚立に登れるかい?」

週末の秘密基地。鈴木が屋根下地の木枠を指さした。

小屋の屋根は、2×4材で組んだ傾斜フレームの上に、分厚いベニヤ合板を敷き詰めた状態になっていた。佐藤がハシゴを登ってベニヤの上に足を乗せると、ミシミシとも言わずしっかりとした手応えが返ってくる。

「すごい……! ベニヤ一枚張っただけで、大人が乗ってもびくともしないですね」

「だろ? 2×4材のフレームが荷重を分散してるからな。この上に防水シートを重ねて、仕上げに波板を打つぞ!」

高橋さんが下から黒い「アスファルトルーフィング(防水シート)」のロールと、波板(トタン・ポリカ製の波状の板)を引っ張り上げてくれた。

ベニヤの上に防水シートを隙間なく敷き詰め、タッカーで「バチン!バチン!」と留めていく。これで雨漏り対策は完璧だ。

さらにその上から、半透明の硬質ポリカーボネート製の波板を重ねる。

「波板を留める時は、この専用の『傘釘(かさくぎ)』を使うんだ。頭にゴムがついているから、釘の隙間から雨が入らないようになってる。波の『山』の部分に打つのがコツだぞ。谷に打つと雨水が溜まって漏れるからな!」

「なるほど、山に打つ……!」

佐藤は傘釘を手に取り、トントン、と玄能(金づち)で叩き込んだ。

トントン、と木肌と波板が締まる心地よい手応え。

「佐藤くん、上手い! 釘を叩くリズムがいいねぇ」

下でペンキ塗りをしていた小林さんが見上げて目を細めた。

波板を張り終え、ひさしの部分までしっかりと屋根が覆われた。

そして、いよいよ本日のハイライト——渡辺さんが軽トラの荷台から抱えてきた「小型ソーラーパネル」の登場だ。

「よし! この100Wのソーラーパネルを屋根に据え付けるぞ!」

「渡辺さん、この波板の上に載せて大丈夫なんですか? 重さで凹んだりしません?」

佐藤が心配して尋ねると、渡辺さんはガハハと笑った。

「大丈夫だ! このパネル、アルミ枠だけど5キロくらいしかないからな! 2×4の丈夫な下地が入ってる場所に『Z型ステー』っていう金具をネジ留めして、しっかり固定すればビクともせんよ!」

屋根の南側に傾斜を合わせ、ソーラーパネルを金具でガチッとネジ留めする。

「配線は屋根の端から中へ引き込んで……ポータブル電源に接続!」

高橋さんが作業を完了させると、小屋の中に置いたポータブル電源の液晶画面に『CHARGING 85W』という青い文字がパッと灯った。

「「「おおーーっ!!」」」

小屋の中から歓声が上がった。

太陽の光を受けて、手作りの屋根の上のパネルが発電を開始したのだ。電線も引かれていない畑の隅っこで、自分たちの手で建てた屋根が、エネルギーを生み出している。

「屋根もできた! 電源も確保した! 完璧なオフグリッド秘密基地の完成だー!」

鈴木が拳を突き上げると、みんなで屋根を見上げて大笑いした。

ベニヤを敷き、防水シートを張り、傘釘をトントンと打ち込み、太陽光を取り込む。

ひとつひとつの泥臭い手作業が積み重なって、雨風を凌ぐ立派な「屋根」となり、自分たちの空間を守ってくれている。

屋根の上で受けた東北の爽やかな秋風と、コンコンと釘を打った手の痺れ。

佐藤は、自分の手で暮らしの場所を作り上げたという確かな誇りを噛み締めていた。

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