ラジオ音源の本格収録と、予期せぬ素材の追加
木曜日。定時を終えた佐藤は、カバンを手にいつもの喫茶店へと向かった。
昼間の仕事の合間、食堂や休憩室で世間話をしながら仕入れてきた最新の社内ネタをメモ帳に書き足してある。
「佐藤くん、お疲れ! さっそく昨日試したBOX抽選方式で、本番の音声録音に入ろうか!」
鈴木さんが用意してくれたマイクの前に座り、スマートフォンの録音アプリを起動する。
「山口製作所の裏ラジオ〜! 本日は社員旅行のバス移動中にお届けしております!」
和やかなオープニングトークから始まり、箱から紙を引いてはエピソードを披露していく。佐藤が昼間仕込んできた「職人さんが愛用するマイマグカップの秘密」や「社長のドジな失敗談」など、臨場感あふれるネタが次々と飛び出し、あっという間に目標だった20分枠の収録が完了した。
「よし! 完璧なテンポだったんじゃない?」
録音を止めて音源をみんなで聞き返していた時、ふと渡辺さんが首をひねった。
「うーん……トーク自体はめちゃくちゃ面白いんだけど、よく聞くとネタが『社長』と『職人さん』に偏ってないか?」
「あ……本当ですね。男性陣の豪快なエピソードが多くて、事務員さんや他の部署のネタがあまり入ってないかも……」
「これだとバスの中で事務の女性陣が聞いた時に、ちょっと置いてけぼり感が出ちゃうかもしれないな」
どうリカバーしようか全員で考えていると、小林さんが膝を打った。
「そういえば! 年末の忘年会でやった『一芸大会』の動画や音源、スマホに残ってるぞ! あの時、事務の〇〇さんが披露した意外すぎる特技の音源とか、裏でバタバタしてた面白ハプニングの録音がある!」
「それだ! それを短く編集して『あの年末の一芸大会プレイバックコーナー』として挿入すれば、事務員さんのネタもバッチリカバーできるし、全員が懐かしくて笑えるんじゃない?」
さっそく年末の音源を引っ張り出し、追加のトークと合わせて再編集を行う。
結果として、社内のあらゆる部署・職種の人たちが網羅された、まさに「山口製作所130名の全員参加型ラジオ」が完成した。
「よし! これで時間的にもピッタリだし、最高の車内BGMができたぞ!」
時計を見ると、ちょうど夕食時で腹の虫が鳴り始める時間だ。
「いい仕事をした後は、やっぱりこれで締めだな!」
鈴木さんが冷えたビールと、香ばしく炒めためんたいポテトや枝豆などの手際良い肴をテーブルに並べてくれた。
「かんぱーい!」
乾杯のグラスがカチンと鳴り響く。美味しいビールと美味しい料理を囲みながら、満足感に包まれてその日の夜は賑やかに更けていくのだった。




