夕方の報告会と、本気のルールブック作り
定時を迎え、仕事を終えた佐藤は足早にいつもの喫茶店へと向かった。
扉を開けると、いつもの席でサークルメンバーがコーヒーを片手に待っていた。佐藤が席に着くやいなや、渡辺さんが期待に満ちた目で尋ねてくる。
「佐藤くん、おかえり! どうだった? 市役所と商工会の反応は」
「バッチリでしたよ!」
佐藤は昼休みに行なった電話の内容をさっそく報告した。
まずは商工会とのやり取りを伝えると、「よし! 人気のキッチンカーを集めてもらえるなら、セレクト鍋との食のバリエーションも増えてイベント全体が華やかになるね!」と鈴木さんが身を乗り出した。
続いて、市役所とのやり取りと、社長から提案された「野球盤のイベント後の行き先」についての話を打ち明けた。
「社長から『大掛かりな野球盤だけど、終わったらどうするの?』って聞かれて、僕もハッとしたんです。そこで市役所に『イベント後に寄贈できますか?』って相談してみたら、すごく喜んでくれて『ぜひ欲しい!』って言ってもらえました!」
それを聞いたメンバーたちは、一瞬ぽかんとした後に「あーっ!」と声を上げた。
「たしかに……終わった後の処分とか保管のこと、すっかり考えてなかったよ!」
「さすが社長、視点が鋭いな……! でも市役所が引き取ってくれるなら最高の着地点じゃないか!」
小林さんが手を叩いて喜ぶと、渡辺さんがスケッチブックを見つめながらキリッとした表情に変わった。
「市役所に寄贈して、今後の市のイベントや子供たちの行事でもずっと使ってもらえるとなると……これは絶対にテキトーなものは作れないぞ。失敗は許されないな!」
「そうですね! 安全性も耐久性もバッチリな、みんなが本気で楽しめるものを作り上げましょう!」
全員の目の色がガラリと変わり、職人魂に火がついた。
「今の設計案でも十分に遊べるけど、市役所に寄贈して色んな人が使うなら、だれが審判をやっても揉めないように『公式ルールブック』もちゃんと作ろうよ!」
「いいねぇ! ベンチの配置や交代ルール、特別ローカルルールなんかも明記して、大人な仕上がりのイベントツールにしよう!」
「市役所も商工会もノリノリで後押ししてくれてるんだ。これはもう、やるしかないぞー!」
喫茶店内に威勢の良い声が響き渡り、山口製作所ものづくりサークルの「本気のキック野球盤製作プロジェクト」は、一層の熱を帯びて動き出すのだった。




