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僕が逃げた利器と得た安住  作者: 藤一


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週明けの報告と、市役所・商工会との手応え

月曜日。出社して自分のデスクで準備をしていると、社長がやってきて「佐藤くん、イベントの企画はどんな感じになりそうかい?」と尋ねてきた。

佐藤は昨日の試作会と買い出しの成果をまとめたメモを開き、説明を始めた。

「メインの体験企画として、敷地の約30平米をフルに使った手作り『リアルキック野球盤』を作ります。飛びにくいスポンジボールを使って、小さな子供からお年寄りまで安全に遊べる仕組みです。それと飲食ブースでは、40種類ほどの具材とこだわりの出汁を選んで楽しめる『セレクト鍋』を提供しようと考えています。あと、今日これから市役所と商工会にも連絡を入れて連携をとる予定です」

「ほう! セレクト鍋にリアルキック野球盤か! またサークルのみんなで新しい面白いことを考えてくれたんだねぁ」

社長は感心したように頷いていたが、ふと顎に手を当てて首をひねった。

「たださ、そのキック野球盤って結構大掛かりな作り物になりそうだけど、イベントが終わった後はどうするんだい? まさか使い捨てで捨てるわけにもいかないだろう?」

「あ……」と佐藤は言葉に詰まった。イベント終了後の保管や処分については、まだサークル内でも具体的に話し合っていなかったのだ。

すると社長はニヤリと笑って、アイデアを出してくれた。

「まあ、うまく作れたらの話だけどさ、市役所に寄贈してみたらどうだい? 完成度が高いものなら、市が主催する他の地域イベントや子供向け行事でも再利用できるだろうしね」

「確かに……! それはすごくいい活用法ですね!」

「よし、市役所に連絡するときにちょっと打診してみてよ」と言い残し、社長は機嫌よく社長室へと戻っていった。

◇

昼休みになり、佐藤はさっそく市役所の担当部署へ電話を入れた。

今回の工場敷地でのイベント計画と、地元のテレビ局から取材打診が来ている旨を伝えると、担当者は「それは素晴らしいですね! 市の広報やホームページでの周知協力についても前向きに検討します」と快く応じてくれた。

一通りイベント内容の共有を終えた後、例の野球盤の件を切り出してみる。

「実は今回、30平米ほどの木製リアルキック野球盤を手作りする予定なのですが、もしイベント後に状態が良ければ、市のイベントや公園行事などで使っていただくために寄贈させていただくことは可能でしょうか?」

すると電話の奥で担当者が声を弾ませた。

「えっ!本当ですか!? そういった大型の体験型遊具は子供向けイベントでも大人気なので、しっかりした作りのものでしたらぜひ頂きたいです! あ……申し訳ないですが、買い取りのお金はお出しできませんけどね(笑)」

「あはは、もちろんです! 無償で使っていただけるなら作り甲斐があります」

笑顔で電話を終えると、続いて商工会へと連絡を入れた。

商工会の担当者にイベントの概要と「セレクト鍋」の企画を伝えると、「セレクト鍋、面白いですね! 冬のイベントにぴったりだ!」と大盛り上がりとなった。さらに話は出店ブースの件へと広がる。

「それなら、うちから地域の人気キッチンカー数店舗に声をかけて、メニューが被らないように手配をまとめましょうか! 一緒に地域を盛り上げましょう!」

商工会側もノリノリで協力を買って出てくれ、トントン拍子に話が進んでいった。

市役所への寄贈という着地点も見つかり、地域との連携もバッチリ固まったことで、佐藤は手応えとワクワク感を深めながら午後の業務へと向かうのだった。

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