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僕が逃げた利器と得た安住  作者: 藤一


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休日のオイル交換と、受け継がれる手技

日曜日の朝。焼きたてのパンとコーヒーを前に「今日は特にやることもないなぁ」とのんびり考えていると、両親が「今日うちの車のオイル交換するけど、どうする?」と話しているのが聞こえた。

「え、自分でやってるの? 俺も一緒にやらせてよ!」

実家にある普通車と軽自動車は、走行距離に関わらず3ヶ月周期で定期的にオイル交換を行っているらしい。佐藤はさっそく作業着に着替え、工具を手に庭のガレージへ向かった。

「まずはエンジンを5分くらいかけて暖機運転だ。オイルを温めて柔らかくしておくと、古いオイルが抜けやすくなるからね」

父親のアドバイスを受けながら、車のエンジンを1分、2分とアイドリングさせる。

エンジンを止めたら、車体の下にガレージジャッキを差し込んで手際よく持ち上げ、安全のためにジャッキスタンド(ウマ)を噛ませた。まずはボンネットを開け、エンジンルーム上部にあるオイルフィラーキャップを少し緩めて空気の通り道を作る。

続いて車体の下に潜り込み、底面にあるオイルパンのドレンボルトへメガネレンチをかけた。

ぐっと力を込めると、カチッとボルトが緩む。最後は手でボルトを回しながら、オイルが手にドバッとかからないよう絶妙なタイミングでサッとボルトを外した。

「うわっ、結構黒くなってるな……!」

熱を帯びてサラサラになった黒い古いオイルが、ドレン穴から勢いよくドバババと排出され、下に置いた廃油処理BOXへ吸い込まれていく。この全量が抜け切るのを待つ時間が、なんとも言えない心地よい静けさを生んでいた。

オイルがポタポタと点滴のように垂れる程度まで抜け切ったら、次は復旧作業だ。

新品のドレンパッキン(ワッシャー)をボルトにセットし、まずはネジ山を傷つけないよう手回しで優しく締めていく。着座したところでレンチに持ち替え、手応えを感じてから「キュッ」と規定トルクを意識して本締めを施した。

「よし、下の栓は完璧だな!」

車体を地上に降ろし、ジョッキに注いだ新しい黄金色のエンジンオイルを、オイルフィラーキャップの注水口から静かに注ぎ込んでいく。キャップをきっちり締め、再びエンジンを始動。1分ほどアイドリングさせて新しいオイルをエンジン全体に循環させた。

最後にエンジンを止め、数分置いた後にオイルレベルゲージを抜いて布で拭き取り、再度差し込んでオイルの量を確認する。

ゲージの「F(フル)」と「L(ロー)」のちょうど中間から8分目あたりの位置にきれいなオイルが付着しているのを見て、佐藤はニッコリと笑った。

「ばっちり適量だね!」

普通車と軽自動車の2台分を二人で手際よく終わらせると、ちょうど一時間ほどで作業は完了した。

「すっかり手際が良くなったなぁ。昔は車のことなんてさっぱりだったのに」

父親にそう褒められ、手に付いたオイルの匂いを洗剤で洗い流しながら、少し誇らしい気持ちになる。

カラーボックスの組み立てや料理、そして車のメンテナンス。自分で手を動かして暮らしを整える面白さを、またひとつ身体で覚えた日曜日となった。

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