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僕が逃げた利器と得た安住  作者: 藤一


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目を覚ますと庭の方からパチパチ、コロコロと静かな音が聞こえてきた。

窓から覗いてみると、すでに両親が昨夜の炭火焼きの後片付けを始めていた。約束通り手伝おうと急いで庭へ向かう。

「おはよう! 手伝うよ」

散らかったゴミを集めて分類し、消し炭の中から次回も使えそうな綺麗なものを集めて袋に詰めていく。もともとそこまで大きな規模ではなかったこともあり、二人と作業すればあっという間に片付いてしまった。

ちょうど作業が終わったタイミングで、家の方から「朝ごはん出来たわよー」と声がかかる。

手を洗って居間へ向かい、いつもの椅子に腰を下ろすと、テーブルの上には炊きたてのご飯、納豆、ふっくら焼けた卵焼き、自家製の漬物、そして湯気が立つお味噌汁という完璧な日本の朝食が並んでいた。

「いただきます」

一口頬張ると、身体の隅々まで温まるような安心感に包まれる。

ご飯を食べながら「今日は特に予定もないし、一日どう過ごそうか」と考えていると、ふと料理への意欲が湧いてきた。

「せっかく時間があるなら、ちょっと凝った料理でも作ってみようかな」

思い立ったのは、ローストビーフとタンドリーチキンだ。

さっそく近所のスーパーへ向かい、ローストビーフ用の牛もも肉のブロックや、鶏もも肉、カレー粉、プレーンヨーグルトなどの材料を買い込んで帰宅した。

キッチンに立ち、まずは肉を冷たすぎないように常温に戻す。牛肉には塩コショウとニンニクをしっかり擦り込み、鶏肉は特製のスパイスとヨーグルトを合わせたタレにじっくりと漬け込んだ。

ここから肉に味を染み込ませて馴染ませるために1〜2時間ほど待つ必要がある。

そうこうしているうちにちょうどお昼時になった。スーパーでついでに買っておいた生麺のラーメンを茹でて昼食にすることにする。

(具なしのシンプルな素ラーメンで済ませようかな)

そう思っていたら、見かねた両親がササッとフライパンを振り、シャキシャキの肉野菜炒めを作ってラーメンの上にドカンと乗せてくれた。香ばしい野菜炒めラーメンに化けたそれを三人で美味しく平らげ、食後のお茶を飲んでホッと一息つく。

時計を見ると午後2時を回っていた。肉の準備もバッチリだ。

「よし、焼き始めよう!」

オーブンレンジの温度を設定して予熱を開始。その間に熱したフライパンで牛肉の表面にしっかりと香ばしい焼き色をつけていき、予熱が終わったオーブンへ投入する。続いて、コンロの下の魚焼きグリルを使って、ヨーグルトで漬け込んだ鶏肉をジューシーに焼き上げていく。

じっくり火を通したら、最後は熱々の肉をアルミホイルでぴったりと包み込み、余熱でじわじわと中に火を通す。

(ふぅ……結構バタバタしたけど、良い感じだぞ!)

少し置いてからアルミホイルを開けると、肉汁の芳醇な香りが広がった。

まずはローストビーフから包丁を入れる。お店のように綺麗な薄切りにするのはなかなか難しく苦戦したが、切り断面は見事なきれいなピンク色だ。西洋ワサビとポン酢を少しつけて口に運ぶと、赤身肉とは思えないほど柔らかく、噛むほどに肉の旨味が溢れ出してきた。

「うわ、うまい……!」

続いて余熱が落ち着いたタンドリーチキンも一口大に切り分け、味見のためにひとくち食べてみる。ヨーグルトの効果で驚くほど肉質が柔らかく、スパイスの香りが口いっぱいに弾けた。

夕食に家族で食べられるよう綺麗にお皿へ切り分けて盛り付けながら、 Satoは手作りの楽しさを噛み締めていた。

(お店で数千円払って食べるような料理が、自分の手でこんなに美味しく作れるんだな……)

旅行の企画も、ものづくりも、そして料理も。自分の手を動かして誰かに喜んでもらうプロセスの楽しさを改めて実感した、充実の休日となった。

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