寒空の庭先炭火焼きと、温かな団らん
金曜日。この日はまだ全員からのアクティビティ回答が出揃っていなかったこともあり、定時で仕事を終えると無理に集計を進めず、ゆっくりと帰路に就いた。
家につくと、両親が庭先で七輪に炭を起こしているのが目に入った。
「こんな寒空の下で何やってるの?」と尋ねると、「冷凍庫に焼き鳥があったから、炭火で焼いて食べようかと思ってね」と父親が笑う。
「それならビールはもちろんだけど、焼きイカとか香ばしいトウモロコシも欲しいね!」
乗り気になったものの、あいにく冷蔵庫にイカがなかったため、佐藤は近所のスーパーへ買い出しに出かけた。
鮮魚コーナーで無事にイカを見つけ、店内をのんびり見て回っていると、サークルの渡辺さんと小林さんにばったり出くわした。
「あれ、佐藤くん! こんなところで何してるの?」
「あ、渡辺さんに小林さん。実は実家の庭先でバーベキュー……と言うのもおこがましいんですけど、七輪で炭火焼きをやろうと思って買い出しに来たんですよ」
そう話すと、二人は目を輝かせて「えっ、めちゃくちゃ楽しそうじゃん! うちの家族も混ぜてよ!」と食いついてきた。
慌てて実家に電話を入れて確認すると、両親は「全然いいわよ! 自分の分の食材とお酒だけ買ってきてね」と快諾してくれた。そこで渡辺さんたちもスーパーで肉やビールをどっさりと買い込み、みんなで一緒に佐藤の家へ向かった。
実家につくと、おじさん組はさっそく七輪を囲み、炭の爆ぜる音を背景にビールをプシュッと開けて乾杯を始める。女性陣や子供たちは肉が焼き上がるまでの間、居間でご飯を取り分けたり自家製の漬物を準備したりして、のんびりと雑談をしながら待っていた。
やがて、じっくりと炙られた焼き鳥やイカから香ばしい匂いが立ち上り始め、徐々に焼き上がっていく。
「ほら、焼けたぞ〜!」
次々と焼き立ての肉やイカが配られていく。炭火で外はカリッと、中はジューシーに仕上がった焼き鳥を頬張り、キンキンに冷えたビールで流し込む。
「やっぱり炭火でシンプルに焼いて、市販の焼肉のタレをつけるのが一番美味いな!」
「わかる! このシンプルさが最高の贅沢なんだよねぇ」
渡辺さんと小林さんと顔を見合わせ、共感しながら大笑いして杯を交わした。両親も「年明け早々、こんなに大勢で賑やかに過ごせるなんて嬉しいねぇ」と目を細めて喜んでいる。
そこへ、匂いにつられたのか近所に住む叔母さんが「私も混ぜて〜!」とひょっこり現れた。
佐藤の顔を見るなり「佐久間ちゃん呼ぼうか?」と茶化してくるが、「今日は急だし用事があるから無理よ〜! でも事前に言ってくれたら絶対に飛んできたのに! 次回は絶対に誘ってね!」と、本当にお見合い相手を連れてこられなかったことを心底残念がっていた。
そんな賑やかな宴は続き、気づけば21時を回っていた。すっかり満足した渡辺さんたちと叔母さんは、「ごちそうさま! 最高に楽しかった!」とお礼を言って解散となった。
みんなを見送った後、片付けを始めようとすると、両親が「ある程度片付けて炭の火をしっかり消したら、残りは明日の朝明るくなってから片付けるからもういいよ」と優しく声をかけてくれた。
(あぁ……そういえば昔から、バーベキューの後の面倒な片付けはいつも両親がやってくれていて、自分はいつも楽しかった記憶のまま気持ちよく寝られてたんだな……)
幼い頃からの両親の温かい気遣いを思い出し、胸の奥がじんと温かくなった。
「明日は朝からちゃんと片付け手伝うね」と心の中で決め、家に入ってお風呂でしっかりと体を温めてから、心地よい酔いとともに布団に潜り込むのだった。




