集まった本音と、新たな名物
定時を迎え、アンケートの回収状況を確認すると約7割が集まっていた。締め切りは「水曜日中」と伝えてあったため、未回答者へのリマインドは明日の朝に回すことにして、集計データをダウンロードして鈴⽊さんの喫茶店へと向かった。
店に入ると、鈴木さん、小林さん、渡辺さんの3人がすでに集まっていた。さっそくパソコンの画面を開き、集計結果を共有する。
午前中に職人さんたちから届いた「任せた!」や「酒が飲めればいい」という大雑把な回答を見せると、渡辺さんたちが爆笑した。
「あはは! まあ、現場の職人さんたちらしいなぁ。俺も自分が同じ立場だったら同じこと書いてそうだもん」
しかし、後半に集まった残りの回答を見ていくと、社員やそのご家族たちのバラエティ豊かな本音が見えてきた。
特に圧倒的な人気を集めていたのが「鶴ヶ城」だった。やはり歴史あるお城の存在感は抜群で、多くの世代からチェックが入っている。また、女性社員やご家族のOL層からは「赤べこの絵付け体験」が絶大な支持を集めていた。
一方で、意外にも希望が少なかったのが「猪苗代ビール館」だった。
「ビール館は人気ないね。まあ、夜のホテルでいくらでもお酒が飲めるからわざわざ昼間に行かなくてもいいか、って判断かもね」
小林さんの推測に全員が頷く。ただ、同じ敷地内にある「世界のガラス館」には程よく票が入っており、備考欄には「ガラス吹き体験をしてみたい」という熱意あるコメントも添えられていた。さらに「野口英世記念館」は、小学生のお子さんがいるご家庭から「子供の学習用にぜひ立ち寄りたい」という希望が多く寄せられていた。
当初の無数にあった候補から、社員たちの希望によって綺麗に優先順位が絞られ始めていた。
そんな中、アンケートの自由記述欄から浮上した「想定外の希望」があった。それが——「馬刺しが食べたい! お土産に買って帰りたい!」という声だった。
「あぁ! 最近テレビで会津の馬刺し特集やってたな! 九州の脂が乗った馬刺しと違って、会津は赤身を辛味噌で食べるのが絶品なんだよ」
「うわ、美味そう……! 俺も食べたい!」
テレビの影響か、メンバーたちも一気に馬刺しモードに突入した。ホテルの夕食バイキングか、2日目の昼食スポットに組み込めないかと盛り上がる。
その一方で、「なんで喜多方ラーメンが入ってないの?」という惜しむ声も散見された。
「喜多方ラーメンかぁ……やっぱり食べたいよね。でも、ここから喜多方まで足を伸ばすと往復の移動時間で他の観光が全部飛んじゃうんだよなぁ」
「申し訳ないけど、今回は時間の都合上スルーせざるを得ないな。代わりに会津若松市内で美味しい会津ラーメンやソースカツ丼を食べられる店を探そう」
苦渋の決断だが、全員の意見が一致した。
「明日残りの3割が届いたらもう少し票はばらけるかもしれないけど、全体の感触や軸はしっかり掴めたね」
「よし、この勢いで希望を叶える3グループのルート案を固めていこう!」
残りの回答に期待を寄せつつ、サークルメンバーの企みはさらに熱を帯びていくのだった。




