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僕が逃げた利器と得た安住  作者: 藤一


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アンケートの配布と、膨らむ期待

月曜日、出社した佐藤はまっすぐ社長室へ向かい、昨日サークルメンバーと作成した全社アンケートの原稿を差し出した。

「社長、旅行のプランを絞り込むために、みんなに希望のコースや行きたい場所のアンケートを取りたいのですが、確認していただけますか?」

「どれどれ……おお、よくできてるね! 良いよ良いよ」

満足そうに目を細めた社長だったが、「で、今はどんな感じの案が出てるの?」と身を乗り出してきた。佐藤が「観光組」「プール・アクティビティ組」「スキー・温泉組」の3コース構想や、候補地のラインナップを説明すると、社長は少し残念そうに首をひねった。

「そっかぁ、やっぱり本場の喜多方ラーメンや山都の塩ラーメンを食べに行くのは日程的に難しいかぁ。あと、桧原湖のワカサギ釣りやモーターボートなんかも実はちょっと気になってたんだけど……今回は見送りかな?」

食い入るように希望を口にする社長の子供のような表情を見て、佐藤は思わず苦笑した。

「じゃあ社長、それらも全部アンケートの選択肢に入れちゃいましょうか! もう既に盛りだくさんなので、候補が一つ二つ増えても変わりませんよ。回答が多く集まった人気スポットを組み合わせれば、見えてくるベストルートもあると思いますし」

「本当かい!? いやぁ、頼もしいねぇ!」

お昼休みになり、佐藤はさっそく全社メールとチャットツールでアンケートの回答依頼を送信した。締め切りは集計作業を考慮して「水曜日の定時まで」と告知する。

告知を見た社員たちからは、すぐに大きな反響があった。

「えっ、佐藤くん! 会津ってこんなに遊ぶところあるの!?」

「正直、冬の雪山だから『昼はスキーして夜は温泉でお酒飲むだけ』かと思ってたよ。それだけじゃ勿体なさすぎるな!」

「子どもが喜びそうな体験がいっぱいある! 家に帰って家族会議して決めるよ!」

添付された各地の観光情報やグルメの紹介文を読みながら、社内のあちこちで「どこに丸をつけるか」で盛り上がり、みんなワクワクした表情を浮かべていた。

「よし、これでまずは水曜日の結果待ちだな」

社員たちの弾んだ声と期待感を肌で感じながら、無事に一日分の業務を終えた佐藤は、すっかり心地よくなった帰路の足取りを進めるのだった。

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