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金林檎はおやつに含まれますか  作者: 佐々木勇二


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第十二章 山頂の話、あるいは最初の一歩

向こう岸で、顔を上げたとき、ヴェルト師がいた。

いつから来ていたのかはわからなかった。

老人はエリィを見て、ただ頷いた。それだけだった。

エリィも何も聞かなかった。聞く必要がないと思ったし、聞いたとしても「そういうもんじゃ」と言われる気がした。

ヴェルト師は、そこにいた。

それだけで十分だった。


岩の道が、上りになった。

今まで横に延びていた道が、ここから上へ向かい始めた。傾斜は急ではなかったが、確かな上りだった。石の質が変わった。白みが強くなった。踏むたびに少し滑りそうで、でも滑らなかった。

霧があった。

視界の先が白くなっていた。厚い霧ではなく、薄い霧だった。向こうに何かがあることはわかるが、形がわからない種類の白さだった。

歩き続けた。

霧が、薄くなった。

薄くなって、晴れた。

山頂が、見えた。


エリィはそれを、じっと見た。

遠かった。まだ遠かった。でも、見えた。白くて、高くて——静かだった。怖くなかった。輝いてもいなかった。ただ、そこにあった。

ずっと聞いてきた音の、発生源がある場所が、あった。

腹が、鳴った。

静かな岩場に、はっきりと。


カエルの足が、止まった。

エリィは気づいた。カエルが山頂を見ていた。

一拍あった。

それからカエルは、また歩き始めた。

何も言わなかった。

男の歩幅が、変わった。

速くなっていた。今まで一定だった歩幅が、初めて変わった。山頂の方向へ、少し前のめりになっていた。

エリィはその変化を見た。また読もうとした。やはり読めなかった。でも今回は、前と少し違った。輪郭がないのではなかった。輪郭が、もうこちら側を向いていなかった。周囲を測っていない人間の気配だった。計算が、終わっていた。

エリィは視線を山頂に戻した。

ヴェルト師は道の足元を見ていた。山頂を見ていなかった。ただ、次に踏む石を確かめながら、歩いていた。


道の途中に、鳥がいた。

岩と岩の間の、狭い場所に。小さな鳥だった。羽を持っていたが、広げていなかった。広げ方を忘れたような格好で、岩の上に座っていた。目が開いていたが、何も見ていなかった。

エリィは立ち止まった。

近づいた。

鳥はエリィが近づいても、動かなかった。逃げなかった。怯えてもいなかった。ただ、そこにいた。いることといないことの境が、曖昧になっているような鳥だった。

エリィは荷物を下ろした。内側のポケットに手を入れた。

金属板が二枚。

白を取り出した。

しゃがんで、岩の上に板を置いた。赤の板のときと同じだった。何と言えばいいかわからなかったので、何も言わなかった。ただ、ここにいていいと思いながら、板に触れた。

鳥の目が、変わった。

焦点が、戻ってきた。何かを見る目に、なった。

羽が、動いた。

広げ方を思い出したように。ゆっくりと、それから一度だけ大きく広げて——飛んだ。

音がした。

羽が空気を打つ音だった。金属の音ではなく、ただそれだけの音だった。

エリィは板を拾おうとしたが、板はもうなかった。岩の上に、何もなかった。

立ち上がって、荷物を確認した。

青の板が、一枚。

それだけだった。

エリィは荷物を閉じた。何も言わなかった。


カエルが、少し離れた場所から見ていた。

エリィの手元を見ていなかった。

足元を見ていた。エリィが立っている場所の、岩の縁を見ていた。石と石の間の草の端を。白い板を使っているあいだ、その縁がどんな色をしているかを、確かめるように。

何も言わなかった。

エリィは気づかなかった。


また歩き始めたとき、エリィは荷物の中の本を、服の上から押さえた。

あった。

答えはまだ出ていなかった。

山頂が、近くなっていた。

まだ遠かったが、さっきより近かった。白くて、静かで、変わらない山頂が、確かに近づいていた。

エリィは前を見た。

道があった。

金属の音が、一定のリズムで聞こえていた。遠くなっていなかった。近くなってもいなかった。橋を渡る前と、同じ距離にあった。

ただ、そこにあった。

まるで最初からそこにあったように。まるでエリィが来るのを、ずっとそこで待っていたように。

エリィは一歩、踏み出した。


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