二つの異見
次回の投稿は多分水曜日12時です。
魔法の使い方は撃って放つだけではない。
そのことにディーノが改めて気づついたのはつい最近の出来事だった。
きっかけは自身のオリジナル魔法、杖強化の改良をしていた時だった。
エンチャントをもっと改良することはできないかと考えていた時にふと疑問が浮かんだのだった。
なぜエンチャントは長時間維持できるのだろうと……
魔法というのは基本的に単発、一度イメージした現象を作り出し、放ちそれで終わりだ。
しかしエンチャントは魔法を作り出したあと、魔力を流すことで形を維持している、イメージをしないでもだ。
そこでディーノはある仮説を立てた。
魔法とは自分が消えたと認識しないまでは形は残ったままで認識して初めて完全に消えるものではないのか、というものだ。
わかりやすく言い換えてみよう。
魔法をテレビゲームに例えよう、イメージはゲーム機本体、中身はソフトだ。
テレビゲームを遊ぶ(魔法を使う)には二つが揃ってないといけない、しかしソフトがなくともゲーム機本体さえ無事なら他のソフト(新たな魔力)でもいいわけだ。
だが、ゲーム機本体が壊れてしまうと別の本体がなくてはソフトがいくらあっても意味を成さない。
そしてゲーム機本体が壊れるのは自分が遊び終えた(魔法を使い終わった)と思ったときに初めて壊れるわけだ。
ならばその終わったという認識ができなかったとき、もう一度魔力を流せば魔法は復活するのではないだろうか?
そういった理論から完成したのがディーノが今使っているブーストの原理だ。
「おおおおおおおお!!」
トラゴと撃ち合いながらディーノは体の各所に魔力を流している。
魔力の流れた先から火が現れ、ディーノの体を速くする。
ディーノのブースト魔法はあらかじめ全身から火が出るというイメージを持ち、体を動かす時に力を入れる部分に対して無意識に魔力も流すことで魔法を発動させる。
それによって体の動きと魔法の発動を同期させているのだ。
もちろんこれは一朝一夕でできるものではない。
体を動かすのと同時に魔力も同じように動かす、右手を前に出すなら魔力も右手に流すといったことをほとんど同時にすることで初めて運用可能なものだ。
そのためディーノは修行のほとんどを自身の魔力操作に当てることとなった。
今や寝ている間でもするようになってしまった魔力の移動、それによってディーノはブースト魔法を完成させた。
これなら行ける、ディーノがそう思い始めた時だった。
ガキ!!
「!?」
今まで、流れるような連撃によって攻め続けていたがそれが今完全に止められてしまった。
防御されクリーンヒットができなくてもすぐに杖を引き、新たな攻撃を仕掛けることで連撃ができていたがそれができなかった。
「ようやく慣れたぞ……その速さにな」
ただ、防御するだけでなく、攻撃のくる方向に力を入れて防ぐ。
それによって相手の動きを完全に止める防御、いままでは速さに対応できずにいたためただ剣を置くだけだったためディーノはすぐ動けたが今の防御で完全に止められてしまった。
「続けようじゃないか!」
トラゴがそう言うと剣を振りかぶり縦に打ち下ろす。
わかりきった攻撃にディーノは身を引き、避けるがそれだけでは終わらなかった。
ドゴォォ!!
振り下ろされた剣が地面を砕き、小さな礫がディーノを襲う。
「くっ!(こいつ化物かよ! ブースト状態の俺に追いついてきただけじゃなく、この硬い地面をただ腕力だけで割るってふざんけんなよ!)」
小さな礫をマントで体を覆うことで防いだディーノだがトラゴの底知れない強さに恐れすら抱き始めていた。
―――――――――――――――――――ー
ディーノとトラゴ、二人の戦いを見ながらディーノはアランに聞いた。
「アラン、どっちのが有利っすか?」
その質問にアランはすこし逡巡したのち答えた。
「トラゴだな」
「理由は?」
「ディーノが未知の術でトラゴに体が追いついたとは言え、それだけ…ディーノに決定打はない。 それに違う手段に移ろうにもトラゴはその出先を潰そうとするだろう。 やはり竜人族、とりわけリザード種は全種族最高の体を持つというのは伊達ではないということだ」
「ほぇ〜、恐ろしいっすねぇ〜」
イブはアランの解説を聞くとフィールドに目を向ける。
そんなイブにアランは内心こう思っていた。
(しかし正直俺はあの二人よりも…いや今まであった誰よりもお前のほうが強くなるだろうと思っているのだがな。 `あの時´に見せた力の片鱗、お前は思い出せないみたいだが……知る知らない、どちらの方が幸せなのだろうか……)
「はぁ……難儀なものだな」
――――――――――――――――――――
時を同じくしてソニアもまたテオドラにイブと同じ質問をしていた。
それにテオドラは間髪入れずに答えた。
「ディーノ君の方ね」
「なんでですか〜?」
「理由はね、トラゴ君は剣士でディーノ君は魔術師だからよ」
ソニアはその答えに頭に疑問符を浮かべたがテオドラが詳しく教えた。
「トラゴ君の実力は流石ね、全校生徒の前であんなことを言い放つだけあるわ、でも彼が剣士である以上、今見えるものが全てだわ。それに対してディーノ君は今は苦戦しているとは言え、今使っている魔術以外にもまだいくつか見せてないものがあるはず、魔術師というのは敵に手段が全て見えないというのが最大の長所、底を見せ始めたトラゴ君と見えないディーノ君、ならば軍配は後者にあがる。」
「流石お嬢様! よく見てますね〜 わたしなんて恐くてもう直視もできないですよ〜」
ソニアは顔を手で覆って指の隙間からチラチラとフィールドを見る。
そんなソニアの姿を見るテオドラには一つ確信があった。
(あなたならあの二人が同時に襲いかかっても防ぎきってしまうのでしょうね)
あわわ〜とでもいいそうなソニアの表情を見てテオドラはすこし表情がゆるんだ。
(優しすぎるのがあなたの欠点ね)
ガチャの誘惑に耐える日々が続くなぁ




