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氷魔法

次回は土曜日12時です。




アランとテオドラの二人が持論を解説していた頃、ディーノもまた自身の戦況について考えていた。


トラゴの攻撃にさらされているディーノは己の不利を悟っていた。


トラゴの攻撃に今はついていけているがいつまでもこのままだとディーノはいずれ窮地に立たされるのは明白だった。


なぜならばディーノの使うブーストは魔法だからだ。


魔法なのだから魔力は当然必要になる。


現在使っている魔法は二つ、エンチャントとブーストだけだ。


この魔法に必要な魔力はさほど多くはない、せいぜいソメ級一発分だがそれでも長時間維持するというなら話しは別だ。


戦闘が始まって10分程が立っているがすでにディーノの魔力は残り半分を切ろうとしていた。


アランとテオドラは知らないことだがディーノの魔力は一般的な魔術師と変わらない。


特待生なのだから多いだろうと思っている二人の意見はそもそも前提条件が違っているのだ。


(ブーストを維持しないといけないのが辛い! これがないとすぐに決着がついちまう!)


そう思ったディーノはエンチャントを解いた。


「ようやくその鬱陶しい魔法を解いたか!」


そう言ったトラゴはさらに速度をあげてディーノに剣を振るう。


エンチャントを解いた理由は魔力消費を抑えるためでもあるがそれ以外にも理由はある。


一つはブーストの魔法に集中する為、二つの魔法を維持したたままの戦闘ではどちらかがおろそかになってしまい攻撃も防御もどっちつかずになってしまう。


そのためどちらか一方のみを残すことにし、ブーストの方を取ったのだ。


エンチャントのみを維持したところで体がついていかねば無用の長物、だから避けることのできるブーストにした。


そしてもう一つはトラゴを倒す算段をつけるためだ。


最初はエンチャントとブースト魔法だけで行けると思っていたディーノだがそれが今や避けるのに必死にならざるを得ない現状だ。


それならばこの相手に対し、効果の薄いエンチャントとは別の魔法を用意する必要がある。


相手の弱点は体温を奪う攻撃、そこからディーノはどうすればいいかを考えているところだった。


そんなディーノのことなどお構いなしにトラゴは攻撃を続ける。


左腕に向けて縦に切りつけようとし、交わされるがその剣を強引に返し、首筋あたりを横一文字に斬りかかる。


ディーノはそれを屈むことで回避するがトラゴは躱されるもそのまま勢いのまま回る。


ディーノは一瞬勢いに負けたのかと思ったがすぐに回避行動に移った。


トラゴは斬りつけた勢いのまま尻尾でディーノの足元を攻撃してきたのだ。


当たってはひとたまりもないとディーノは飛ぶがトラゴの攻撃はもう一弾あった。


「空中じゃ避けれまい!」


今度は剣でまた横一文字に斬りかかる。


剣、尻尾。剣での上下上の三段切り、これがトラゴの得意とする攻撃の一つでもあった。


空中に居るディーノは焦らず魔力を体に流す。


すると、ブースト魔法で下に加速させ素早く降り、後ろにステップをする。


そして避け切った次にディーノは軽くジャブのつもりでディボ・ウォーター・ボールをトラゴに撃つ。


これで決めると三段斬りに勢いをつけたトラゴは避けきれず、あたってしまう。


「ぐっ! 水魔法じゃダメージに入らない!」


少し、動きの止まったトラゴだがまたも剣を振るい始める。


(くそ! 今の隙じゃあれが限界だ!)


ディーノは本当ならあの場面では氷魔法で止めと行きたかったところだった。


しかし、ディーノにはそれができなかった。


理由としてはその程度の隙では氷魔法の用意などできないからだ。


氷――凍結という事象を引き起こすには水の凝固点、0度より低い温度が必要になるのが普通だが魔法の場合は温度で凍結させるのではない。


空気中の水分子を圧縮させ、分子構造を組み替えることで氷を生み出しているのだ。


しかし、それには二つの段階が必要となる。


空気中、何もないところから氷を生み出すにはまず気体である状態から液体にし、そこから固体とせねばならない。


しかしそれには時間がかかる、空気中の水分などそこまで多くはない。


それを圧縮し構造を変えるとなると、とても広い範囲の空気が必要となる、攻撃に使用するほどの大きさともなればなおさらだ。


それゆえ、あの隙ではウォーター・ボールが精一杯となってしまう。


そのことでディーノは己の師匠の凄さを改めて実感していた。


シルヴィアならその程度の隙でも当然のように氷魔法を出すだろう。


それはディーノには理解できないほどの速さだ。


しかし、これはディーノが科学を知ってしまっているというのがひとつの要因でもあるのだろう。


なまじ、凍結という事象を知ってしまっているため難しいものだと頭の片隅で考えてしまい魔法の発動が遅れてしまうのだ。


そレに対してシルヴィアなどは完全にイメージのみ、難しいことなど考えずに出すため速くなるというわけだ。


科学を知るのは良いことばかりではないというわけだ。


しかし、ディーノは無策でウォーターボールを出したわけではない。


戦いはいよいよ終盤にさしかかろうとしていた。











サクスペの選手作りムズイ……

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