馬車
今話から魔獣の名前をベスティアに変更しました。次回の投稿は日曜日12時です。
今日の日付は火の月の9日、俺が師匠の家を出てから2ヶ月ほどが経った。
今はパエーゼ村を出発した王都に向かう隊商の馬車の中で揺られている。
王都につくのは一ヶ月後だそうだ。
途中の村で商品の買い付けや売りなどをしていくので直接向かうよりも若干遠回りらしい。
これまでの道中ではベスティアは出ず、平和な旅路だ。
俺は元々雇われていた冒険者の人たちと一緒に夜の見張りや周囲の警戒などを手伝っているがそれでも暇な時間はできるものだ。
馬車に揺られながら見慣れない景色を眺めるのも楽しいがいつまでも外を見ているのだけでは暇は潰しきれない。
そんな時間を俺は娯楽作りに励んでいた。
パエーゼ村にいた頃やっていた遊具作りや地球にあったものを再現するのは意外と楽しかった。
今は球技のルールを思い出し、自前のメモ帳に書き出しているところだ。
手始めに野球、バレーあたりを書いているのだがやはり俺だけでは技術力不足で再現するのは難しそうだ。
もっと簡単に出来そうなものではボードゲーム系があるがそちらの方を作ってみようかな
とそんな事を考えていると誰かが俺に話しかけて来た。
「ようディーノ 何やってるんだ?」
「ラウロさん」
彼の名はラウロ、ここの隊商が雇っている専属の40代くらいの冒険者の人だ。
ちなみに専属冒険者とは商人の人が直接雇う冒険者の人だ。
通常、依頼はギルドを通して冒険者が受注するが、この専属冒険者になるとギルドで依頼を受けることはできず、雇い主である商人の護衛しかできなくなる。
専属冒険者のメリットは安定した収入とギルドを通した時の手数料が発生しないことだ。
デメリットとしては自分の好きな依頼を受けることができず、かなり暇を持て余すことだ。
娯楽の少ないこの世界では暇を持て余すことはかなりの痛手だ。
「また何か考えているのか? 見せてみろって」
「ダメですよ 勝手に見ないでください まだ見せれるものじゃないんですから」
ラウロさんが俺の手帳を勝手に見ようとするが俺はすぐに隠す。
この手帳に書かれているのは俺が信頼できる人にしか見せれない。
娯楽のことだけでなく地球における科学や法律、憲法など俺の思い出せる限りのことが書かれている。
見せてしまえば大変なことになるのは必死だ。
「なんだよ ケチだなぁ でもお前の作ったリバーシって名前だっけ? あれはいいものだな!」
「そうですか?」
「当たり前だろ! 今まで退屈だった馬車の中で遊べるんだぜ! 代わり映えのない景色をじっと見ないで済むんだ! ありがたいことだよ」
「はぁ」
「なんだよ その反応は〜 ん? もしかしてお前初めてか 村から出るの?」
「まぁそうですけど なんでわかったんですか?」
「何回もこうやって村の行き来するような奴は大抵旅路は暇なものだからな 初めての時だけだよ見慣れない景色を見て喜べるのは」
「へぇ〜」
「だからお前みたいに旅の暇を知らないのは初めてのやつだけさ そういえばお前なんで王都に一人で向かってるんだ?」
「学園に入学したいんですよ」
「ああ学園か そろそろそんな時期か しかしお前結構頭いいだろ? 学園で2年は暇じゃないか? あの村にいるままでいいと思うが」
「俺は学園で特待生になるつもりなんですよ」
「特待生!? お前冒険者か騎士団志望か!? リバーシで転がり込んでくる金だけで一生暮らせるのにか!?」
「いやリバーシはパエーゼ村に商売権売りましたから俺にはお金入ってこないですよ」
「はぁ!? 億万長者になる権利を売ったのかよ!? ハーレムも夢じゃねぇのに!?」
「ハーレムも億万長者も別に狙ってませんからね」
「お前の考えは全くわからんな しかし特待生か お前で行けるのかぁ?」
「ラウロさんは学園のこと知ってるんですか?」
「当たり前だろ 俺もそこの卒業生だ」
「ホントですか!?」
「まぁな 俺の代の時には特待生はいなかったな 挑戦したやつもいたって話だが誰も受からなかったらしい」
「俺が卒業して2年くらいたったあと特待生が出たらしいがそいつはメチャ強かったぞ 俺も少し見ただけだったが圧倒的に他とは違って見えた」
「その話詳しく知りたいんですけど!」
「また今度な しかしそれを知っているからなぁ お前が特待生になれそうに俺は思えないが…… ってそういえばお前があの村の近くに出たカラード単独で倒したんがったか? ならもしかしたらか」
「どういう評価なんですか? それ」
「ま、カラード単独で倒せないような奴が特待生になれるわきゃないってのだけは確かだな」
「はぁ 特待生って結構厳しいんですね」
「当たり前だろ 特待生になったような連中はどいつもこいつも化物ばかりさ 歴史上見ても有名な冒険者や騎士は元特待生が多いって話だぜ」
「そうなんですか」
「おうよ っとそろそろ交代の時間だ また後でリバーシでもやろうぜ」
ラウロさんはそう言うと馬車の外に出たようだ。
師匠は特待生になれると言っていたが本当になれるんだろうか、不安になってきた。
HRようやく開放できた…獰猛化モンスターの体力多すぎィ




