土壁
年末年始につきお休みをいただきます。次回の投稿は6日12時です。
太陽もそろそろ沈みそうな夕暮れどき、黄金色の大地を走る人影がひとつあった。
周りには建物も木もないだだっ広い平野、あるのは周りよりも少し盛り上がって出来ている整備されている馬車道
そこを走っているディーノは敵と出会う前に考えていることがあった。
(カラード…クリスさんの話とこの前にあった熊である程度奴らの特徴が推測できる)
(おそらく奴らの色は魔法の属性に対応していると考えるべきだろう)
(赤の熊は火もしくは炎属性なんだろう、だから普通のベスティアよりも火属性に耐性があって水属性に弱かった)
(今回の象は氷属性の魔法を使ったとクリスさんが言っていた、だから青は氷属性、もしかしたら水属性も持っているかもしれない)
(そして熊が腕を伸ばしたこと…これに関してはほんとに謎だおそらくクリスさんの言っていた特殊な技なんだろうが関連性がなさすぎる)
(それに熊は火魔法を使ってこなかった…カラード全部が魔法を使えるわけじゃないのか?)
ディーノが考えをまとめようとしていると今まで視界には平野が流れて行くだけだったが初めて変化が現れた。
ディーノは足を止め息を整えた。
(ふぅ結構な距離を走ったな…地球の時ならこんなに走れなかったけどな 修行のおかげだな……さて)
止まって目を凝らすとぽつんと何かがいるのが見えてくる。
(多分あれが今回の相手だな…周りには何もないみたいだし移動速度も速くない)
ディーノは冷静に自身とあたりの状況を分析をする。
(奴は多分まっすぐこっちに向かってくるだろう、ならわざわざ近づいてやる必要はないな)
(あたりに村か何かがあったら急ぐ必要があったけどないからな じっくりと準備をさせてもらおう)
(まずは遮蔽物を作っていかないと魔法をつかう相手には壁がないと防ぐのが難しいからな)
ディーノは杖を振るいあたりに自分の体が隠れる位の高さの土の壁をいくつも作っていく
(魔法を防ぐには対属性の魔法もしくは同属性の威力の高い魔法を使う必要がある)
対属性とは所謂相性のいい魔法のことである、火には水、氷には炎というやつだ。
(壁を作るのに魔力は使うが奴の魔法を防げるかどうかもわからないし防ぐのにどれくらい魔力がかかるかわからない)
(ならこの魔力消費は必要経費だ)
自身の魔力の一割ほどを使って壁を作る。
間隔をあけてしっかりと固めた土の壁、ディーノはこれに盾の役目以外にもいくつかの意味を持たせていた。
その一つが相手の移動の制限だ。
相手が巨大な象とはいえ高さ1m以上の土の壁は十分移動の邪魔をできる。
これで足元を素早く動けば壁に足を取られて転ぶかもしれない、そうディーノは考えている。
しかしただの土の壁では簡単に壊される。
その可能性もあるがそれはそれでいいとディーノは思っているのだ。
壊されてもその一瞬動きが鈍れば大技をたたき込める、グラン級以上には発動に少し時間がかかるそのため一瞬の隙が必要なのだ。
壁を作っていくと象の全身がはっきりと見える距離まで近づいてきている。
ゾウの姿はマンモスのように毛が生えてなくアフリカゾウのように長い牙があった。
体色は全体が淡い青色をしているが牙だけは白い。
壁の最後の仕上げはゾウが自身のすぐ近くに来て初めてできる。
理由は壁の配置を象の周りに円状に配置したいからだ。
1種の闘技場のようにしてゾウを真ん中に配置する。
そうすることで初めて仕上げと言えるからだ。
ディーノはゾウを誘導するためにディボの火魔法を打つ。
ゾウがこちらに気づいたようだ先程までよりも速度を上げてこちらに向かってくる。
(これでほかに仲間がいたらなぁ 最初の一発で大技ぶっぱなしてもいいんだけど一人だとできないのが辛いところだな)
ディーノは猛烈な勢いでこちらに来るゾウを尻目に頭の中で相手をどうするかの算段をつけていた。
(まずは勢いを止めないといけないな)
このまま自分に突っ込んでこられたら避けるのは厳しい、そのためにまずは様子見がてらに魔法を使う。
「ソメ・ファイヤー・ウォール!」
炎の壁、ただ普通に使えば大抵のベスティアは突破してくる。
ベスティアには恐怖という感情がない、そのため対人と違ってこの魔法を使って足止めをすることはできない。
しかし、今回ディーノは炎の壁を相手の足元で発生させた。
ブモォー!とゾウは悲鳴を上げて止まった。
止まった瞬間ディーノはゾウの後ろに最後の壁を作った。
下から発生する火の勢いとおそらくゾウの弱点だろうことからゾウの先程までの勢いを完全に失わせることができた。
ゾウは炎の壁が収まると体制を立て直し前にいるディーノを観察するかのように止まった。
ディーノは目の前に止まったゾウから熊とは比べ物にもならない威圧感のようなものを感じ冷や汗を流す。
ディーノは左手を前に出すいつもの構えをとり、手に持つ杖に魔力を流し始め、ゾウは鼻を揺らしながら地面を蹴り動きを見る。
両者がにらみ合い、間合いを計る。
先に動いたのはゾウだった。
極度の緊張感に10秒が1時間にも感じるような感覚にディーノが陥り一瞬構えが崩れたその瞬間を逃さずゾウは動いた。
両前足を高く上げディーノを踏みつぶそうとスタンプを繰り出す。
ディーノが気づいた時にはゾウはもう足を踏み下ろそうとしている瞬間だった。
それでもディーノは走り相手の攻撃をかわす。
(グッ! 揺れが!)
攻撃自体はかわしたがディーノは地震のような揺れに足を取られ止まったしまう。
ゾウは首を振り、ディーノに鼻を鞭のようにしならた。
ディーノはそれを見て用意していたエンチャント・ファイヤを杖にかけ薙刀のようにした杖で鼻を受け止め、切った。
(危なかった! 強化の用意ができてなかったら殴られえてた!)
ゾウは痛みからか悲鳴を上げる、ディーノは追撃をかけるかと動き出そうとしたが牙になにかが集まっていくような感覚を感じ走って近くにあった壁の裏に隠れた。
隠れると壁の裏から氷魔法のブリザード(氷の礫を含んだ冷気の風)が来た。
スケールはソメはくだらない、グランにも届きそうなブリザードを壁で防いだディーノはホッと安堵の息を漏らす。
(壁の用意ができてなかったらこれを魔法で防がなかったらならなかったのか…魔力がいくらあっても足らないな)
ディーノが壁を作ったのは良かったなと考えているとドシンドシンと揺れるのを感じた。
(?……何だ?)
ゾウが何をしているのかとディーノが壁から顔を出そうとすると「うわ!!」衝撃とともに自分の前にゾウの牙が現れた。
ゾウは壁に突進して牙でディーノを突き刺そうとしてきたのだった。
普通の土の壁なら壁ごとディーノにゾウの頭突きがあたっていたはずだった。
しかし、ゾウのブリザードによって壁の表面は凍りさらに強度を増していた。
そのため牙が突き刺さるだけで済んだのだった。
あわやあと10数cmずれていたらあの牙に貫かれていたという状況にディーノは恐怖したがディーノは先ほどと同じように牙に力が集まっていくのを感じた。
(やばい! このままだと防げない! 直撃する!)
ディーノは咄嗟に牙を踏み台にして壁の上に飛び乗り、さらに壁の上からゾウの頭の上に飛び、杖に魔力を貯める。
(さっきまでの攻撃で火や炎魔法が弱点なのはわかった! なら!)
ディーノは自分の得意な炎魔法を出す。
「ソメ・ボルケーノ・シュート!」
杖を持っていない左手から通常の火魔法よりも高温である炎魔法をバーナーのように打ち出す。
ボルケーノ・シュートはゾウの眉間に当たった瞬間、勢いよく水蒸気をあげる。
ゾウは当たった瞬間怯み牙に貯めていた魔力も霧散する。
ディーノは魔法の反動を利用し後方に飛び、手も使って着地するとゾウを見上げる。
(グッ! どうだ!)
ゾウの姿は水蒸気に隠れて確認できない。
少しすると水蒸気中に黒いゾウのシルエットが現れる。
完全に水蒸気が晴れるとそこには眉間のあたりが凹んでいるゾウが現れた。
ブォォオオオーン!!!
明らかにダメージを追っているはずなのにまるで無傷だと言わんばかりにゾウは雄叫びを上げる。
(ま、あれだけで倒せるわけがないか でもダメージは与えれる あとは…)
ゾウは口を開けると無数の氷の弾をディーノに打ち出す。
(アイス・バレットか!)
ディーノは球を右に左に転がりながらも避けながらゾウに近づき、エンチャント魔法を使う。
(エンチャント・ボルケーノ!)
エンチャント・ボルケーノはエンチャント・ファイヤと違って炎を直接纏うのではなく圧縮された高温で切り裂く魔法強化だ。
しかしエンチャント・ファイヤは魔力を多く流すと刀身が伸びるので汎用性や攻撃範囲ではこちらが勝つ、一長一短なのだ。
ディーノはエンチャント・ボルケーノでゾウの右前足を切り裂いた。
(くっ! 切断はできなかったか!)
ゾウの足は大きく切り裂かれたが刀身の短さから完全に切断はできず半分ほどを切るだけに終わってしまった。
ディーノもすべてのアイス・バレットを避けきれず、ところどころ切り傷や打撲の跡が残る。
ディーノは痛みからゾウの後ろに回り込むと膝をついた。
(いってぇな! もう!)
ゾウは巨体を動かし後ろにいるディーノの方を向こうとする。
ゾウの巨体では後ろに向くには時間がかかる、ディーノはその時間を利用して`水魔法´を用意した。
魔法の用意が終わるとディーノはゾウから走って距離をとりゾウに向かい言葉を繋いだ。
「これだけの土の壁 材料はどこから出したと思う?」
ゾウはこちらを向きディーノの言葉のなど聞きもせずに走ってくる。
「ソメ・ウォーター・レイン」
ディーノは水魔法ウォーター・レインを使い、あたりの地面にかなりの水をまく。
ゾウはズシンズシンと辺りを揺らしこちらに来る。
ディーノは迫るゾウに何もせずじっとしている。
(さてうまくいくかな?)
ゾウが水をまいたところの上に乗った瞬間、ゾウの姿が消えた!
ディーノはゾウが消えたのを見てふぅと安心した。
「うまくいってよかったよ さっきの質問の答えだ」
ディーノが先程までゾウのいた場所に歩き、下を向いた。
「土はここから動かした」
そこにはすっぽりとゾウが落とし穴にはまっていた!
ディーノが土の壁を作った最大の理由、それがこれだった。
土の壁は自分を守るための盾であり、相手の動きを封じる檻であり、落とし穴を作るためのものだった。
しかしただ地中の土をうごかして空間を作るだけではこうはうまくはまらない。
そこで利用したのがある現象だ。
「液状化による地盤沈下 賭けだったがうまくいったようだな」
そう、液状化現象だ。
液状化現象とは簡潔に言うと硬そうな地盤が地震の揺れで液体状になることだ。
今回、地震の代わりにゾウ巨体を動かす振動を利用した。
空洞が下にある土は水によって柔らかくなりさらに液状化が合わさることでさらに崩れやすくなる。
その上にゾウが乗れば地面はゾウの体重を支えきれずに崩れるというのがディーノの考えた策だった。
ゾウは狭い空間の中で足を動かすことができず、ただディーノに向かって鳴き声を出すだけだった
当然ディーノはこの落とし穴がうまくいかなかった場合のことも考えてはいたがどれも成功するかどうかのわからないものばかりだった。
その中でこの落とし穴は一番可能性が高く失敗してもリカバリーの効くものだったので第一選択となった。
「さて、止めといいますか」
ディーノはこの状態のまま騎士団の応援が来るまでゾウを放置することも視野に入れていたがこれまでの戦いで自分の魔法が通用するのがわかったためここで自分で止めを刺すことにした。
ディーノは右手を掲げ呪文のように言葉を紡ぐ
「炎の元は土で作る…」
右手の上にはこぶし大の火の玉が現れる。
「炎の燃料は風で集める…」
火の玉の周りに見えないなにかが覆い被さる。
「炎の威力は水で高まる…」
さらに水の膜が火の玉を包む
「さぁ 最後だ! グラン・メテオ!」
ディーノが右手を降ると魔法が落とし穴の中にいるゾウの眉間のくぼみに向かう。
魔法が当たった瞬間!
ドォオオオン!!
爆風を伴って大きな爆発音がが辺りに響く。
ディーノは風魔法を使い反動を受け流し、落とし穴を見る。
そこには首から先を失ったゾウの巨体があった。
ディーノがそれを確認するとゾウの体は霧散していき象牙が一本残った。
ベスティアを倒したことを確認するとディーノは安堵の息を漏らし、腰を地面に下ろした。
「いっつ!! はぁ 今回も無傷とはいかなかったな 凍傷も起こってら治療しなきゃ でも倒せて良かった…」
ディーノが己の体を見るとアイス・バレットの時にできた傷以外に凍傷も起こっていた。
戦闘中はアドレナリンによって気づかなかったが終わったとたんに痛みが出てきた。
「グラン・メテオ 師匠に言われて周りに自分以外がいるときは使うなって言われたけどこれは自主的に封印すっかなぁ」
自分の使った魔法グラン・メテオ 威力の元は炎魔法による高温の炎と風魔法で`作った´水素、酸素などの可燃性の高い気体による爆発だが、これだけでは物理的なダメージが低いとディーノは考え隕石のように中心に土魔法で作った圧縮された岩を使い物理的な威力をあげ、さらに水魔法による水膜を使い水蒸気爆発も発生させるディーノのオリジナル魔法でも上位に位置する魔法。
準備に時間が掛かり、配分を間違えると暴発する危険な諸刃の剣のような魔法だが今回はそれを使うことにした。
この魔法の短所は扱いの難しさや作るのが難しいところだがそれを補ってあまりあるメリットがある、それが消費魔力の少なさだ。
グラン・スケールの威力を伴う魔法にも関わらず、ソメ・スケールの魔力でできる燃費のいい魔法なのだ。
「とりあえず帰るとしますか クリスさんたちにも報告しないとな」
接敵することは黄金色に染まっていた平原だが今となっては夜の色に染まりつつあった。
今回の話突っ込みどころが多いかもしれませんがディーノくんは現象について詳しくは知らず、こんな感じかなというふわっとした記憶でやってます。それでも再現できるのはひとえに魔法はイメージでするものだからです。ということにしてください。
それでも何かありましたら感想などでよろしくお願いします。




