心配
サッカーのクラブw杯が今日で最後ですね。広島にはなんとか3位になって欲しいなぁ
妙な胸騒ぎを感じながら家に戻るとリビングでアデーレさんが祈るようにテーブルの上で手を組んでいた。
「戻りました……アデーレさん、どうかしたんですか?」
気になって声をかけるとよほど集中していたのか俺が帰っていることに初めて気づいたようだった。
「あ、ディーノくん… おかえりなさい…」
「あ、ただいまです… どうしたんですか? 元気がないですね?」
「ええまぁ… ああディーノくんは知らなかったわね。 昨日の夜、あなたが寝てる間のことなんだけどもベスティアが出たって話があったのよ。」
「ベスティアがですか!?」
ベスティアと聞いて驚いたがこの世界では当たり前のことだこの村にだってベスティアは出る。
「ええ、それでいつものように村のみんなで退治しようってことになってクリス達が今日の朝に出発したんだけども…」
「どうしたんですか?」
「まだ帰ってきてないのよ… いつもならもう帰ってくるはずなんだけどもね…」
「それは…心配ですね…」
「ええ、それにアルマもまだ帰ってきてないから余計にね…」
「アルマちゃんもですか? いつもならもう帰ってもいい時間ですよね。」
「アルマは今日の手伝いでいつもより遅いのは知ってるからそこまで心配してないわよ。 でも不安でね…」
「そうですよね…… じゃあ俺アルマちゃんのとこに行ってきますよ! 俺も心配ですから!」
俺は不安がるアデーレさんを元気づけるように明るい声で言った。
「本当? じゃあお願いできるかしら。」
「ええ! 任せてください!」
「アルマは多分朝と同じところにいるわ 場所は大丈夫?」
「そこには朝に行きましたから大丈夫ですよ。 じゃあ行ってきます!」
「ディーノくんも気をつけてね」
「ええ!」
――――――――――――――――――――
少し急ぎ足で朝と同じ所に向かうと子供たちが追いかけっこをしているのが見えた。
ここに来るまで普段は村のおばちゃん達が大きな声で話をしている場所など通ったがいつもより活気がなく不安がっているようにも見えた。
そんな光景を見ていると自分まで暗い雰囲気になっていたが俺はその集団を見つけるとほっと一息を付いた。
よかった…遊んでて帰るのが遅くなっていただけか…
「あれ? ディーノ兄ちゃんじゃんどうしたの?」
子供たちの一人が俺を見つけて話しかけてくる。
そいつは俺を除くこの村の子供の中で最年長でみんなのお兄ちゃんみたいな存在だ。
俺はこの街で行商人以外では珍しい異邦人だから子供たちは興味津々で俺に話を聞きに来たりしてかなり親密になっている。
「ああ、もうこんな時間だからな。 心配してきたのさ。」
「ありゃ、もうだいぶ時間経ってたのか… 追いかけっこに夢中で気づかなかったや…」
「そうだな。 もう時間も遅いし早くみんなも家に帰れ、親御さんが心配していると思うぞ。」
「そうだな〜 もう帰るか、また明日遊べばいいしなぁ。」
「ああ、それに俺の公園もあとちょっとだ。 期待して待ってろよ。」
「お! もうすぐできるのか! 早く完成させろよ! みんな楽しみにしてるんだから!」
「ああ、ところでアルマちゃんはどこかな? 見えないんだけども。」
「アルマ? そういえばいないなぁ、さっきまでは一緒に遊んでたのになぁ。」
「なに? わからないのか?」
「う〜ん… あ! そういえばさっきあっちも森の方に行くのが見えたような…」
「あっちって村はずれの森のほうか?」
「多分ね」
「そうか… 俺はアルマちゃんを見つけて一緒に帰るからお前らはうちに帰れ、いいな! お前がみんなをまとめるんだぞ。」
「わかってるよ! でもまずみんなでエルモのおじさんに挨拶してからだよ」
ああそうか 今日はエルモさんの手伝いに来たんだったな 俺も頭が若干パニクってるらしい。
「そうか、エルモさんがいたか。 俺はエルモさんのとこに先に行ってるぞ。 子供たちみんなでまとめて来いよ。」
「うん!」
俺はエルモさんの自宅に向かった。
「エルモさん!」
「はいはいってディーノくんかい? どうしたんだ?」
「エルモさん、ベスティアが出たのは知ってますか?」
「ああ、今日の朝に討伐隊が出発しとったな。 わしももうちょい若けりゃ一緒に行ったんじゃが――」
「その討伐隊がまだ帰ってないんですよ!」
「ほ? それは珍しいの… 普通ならもう帰ってるはずじゃが… 何かあったのかの?」
「それはわからないですけど… それで村のみんなが不安になってますから子供たちをみんなのうちに返さないと。」
「そうじゃな… いつもはもうちょっと遊ばせてあげるんじゃが今日はここまでかの。」
「それでエルモさんにはみんなの付き添いをしてもらいたいんです。 子供たちだけでは不安ですから。」
「そうじゃな… あいわかった。 わしが責任もってみんなを送り届けよう しかしディーノくんはどうするんじゃ?」
「俺はアルマちゃんを見つけてから帰ります」
「見つける? アルマちゃんがおらんのか?」
「ええ、アルマちゃんは村はずれの方の森に行ったらしいので俺が連れて帰ります。」
「そうかい… 早く見つけるんじゃぞ。 もしも先にワシが見つけたら家に帰るように言って起こう。」
「お願いします」
「ディーノくんも注意するんじゃぞ」
「はい。 ではみんなを頼みます!」
――――――――――――――――――――
子供たちのことをエルモさんに頼んだ俺は村はずれの森のほうに向かった。
村はずれの森とは俺がいた森のことではなくまた別の場所のことだ。
俺のいた方の森は村に近いうえ、規模大きくこの村の木材事情の一手で引き受けている森だが村はずれの方は規模が小さく林と呼んだほうがいいくらいの場所だ。
そこはただ木が生えているだけなので村のみんなもここに来る行商人も滅多に入ることのない場所だが…
なぜアルマちゃんはそっちに行ったのだろうか…
しばらく走っていると森が近くなってきた。
すると森の手前、平野との境目にぽつんと座る人影が見えた。
人影を見た俺はさらにスピードを上げ近づいていった。
人影は俺が近づいてきているのがわかったのか立ち上がってこっちに向かってきた。
だいぶ近づき人影がアルマちゃんだとわかると俺は走るのを緩めて近づいた。
「おにいちゃーん!」
アルマちゃんは走る勢いのまま俺に飛びついてきた。
「はぁ、はぁ、もう心配したんだぞ」
「ごめんなさい〜」
アルマちゃんは涙声で俺に謝ってきた。
「どうしてこんなところにいたんだい?」
俺は屈んで目線を合わせて少し起こるように声を強めてアルマちゃんに問いた。
「うう、綺麗なちょうちょがこっちに飛んでったから追いかけてたらこんなところに来ちゃって〜」
「蝶々ってもう! アデーレさんも心配してたし勝手に遠くにきちゃダメじゃないか!」
俺は先程もで心配だったこともあり感情のあまり大声で叱ってしまった。
「ごめんなさい〜」
アルマちゃんは先程よりも大きな声で泣いてしまった。
俺はアルマちゃんが泣いたのを見て自分が何をしてしまったかに気づいた。
ここで大きな声で怒鳴るように起こってはダメだった…もっと優しくしかるべきだった…
俺はアルマちゃんを抱きしめて落ち着かせるようにに声をかけた。
「ごめん、ちょっと怒りすぎたね。 でもこれくらい心配してたんだ。 わかるかな?」
アルマちゃんはまだ目に涙を貯めているが俺にしっかりとした声で返してくれた。
「わかるよ、ほんとにごめんなさい」
アルマちゃんはしっかりとした子だ、自分が悪いことをしたというのをちゃんとわかっている。
ここから先はアデーレさんに任せよう 俺が言うべきことじゃないな
「じゃあ帰ろっかアデーレさんが心配してる」
「うん」
アルマちゃんの手を握り俺達は家へと向かった。
討伐隊の人たちも何ごともなければいいのだが
次回は水曜日12時です。




