第五話~己を振り返る
家に帰り着いた時にはもう日が暮れているところだった。ぐったりとしながらも、両手に抱えた大量の服を落とすまいと気力を振り絞り馬車から降りる。
女の人の買い物と掛けまして~、裁判と説きます。その心は?どちらも時間が掛かって決断までが長いってね!ハッハッハナイスジョーク!…今日はすぐ寝ようそうしよう。
元気のなさを心配するお母さまに少し寝てくると伝え、自分の部屋に入った。ベッドに横たわり、今の私を取り巻く環境、そして何よりも自分自身について考え始める。
私の名前はリディー、苗字はランだかロンだかで始まってた気がするけど正直よく覚えてない。年は五歳で、お母さまとたぶんお父様がいる、はず。前世のせいで今世の人格がぶれたり消えたりはしてないし、よくある別世界の人間に憑依したという恐ろしいオチはないと思う。根拠はないけれど、魂というか何というか根本的な所が前世も今世も一緒のような気がするのだ。というかいたいけな幼女の体を乗っ取ったとか仮定として考えるだけでも精神的によろしくなさすぎる。
精神年齢は前と変わっていないようだけれど如何せん体が幼いせいか今日転んだ時のように、行動が衝動的になってしまうみたいだ。これが俗に言う体に引っ張られるというものなのだろうか。普段の行動が年相応になるから家族に自分の変化を悟られにくいという利点があるが不便だし、何より努力チートが随分やりにくくなってしまう。ただでさえ文化水準が高そうで前世の知識が役に立たない可能性大だというのに…!
そういえば、私が暮らしている場所はどこの国なのだろうか。馬車の窓越しに眺めた建物の外観はゴシック調やらロココ調と言われている、要するにフランス風のものだった。服屋にあったのは洋式の服だけでアジア圏のものはなかったように思える。文化形態はヨーロッパに似ているのだろうか。気になる魔法については、私の今までの記憶によれば服屋や馬車以外にも何度か魔法らしき不思議現象を目撃しているし魔法文化は確実にあるだろう。魔法大国だったりすれば最高だけど私が魔法を学べるか、そもそも魔法を使えるのかが問題だ。
差別についてはどうだろうか。聞いたことはないが、娘の耳に入れたくないお母さまが気を使っていた可能性がある。むしろそれしかないだろう。定番なのは黒目黒髪への忌避、魔力の無い人間への蔑み、少数の種族への迫害…。
…異 種 族 !?
そうだよ異世界といえば亜人が定番じゃん!見た目幼女な一千歳越えのエルフに無精ひげのドワーフ、もっふもふの獣人に歌の上手い人魚!なんで忘れていたんだろうか!もうチート無双なんてどうでもいいかもしれない、一目でいい、その美しい姿を目に焼き付けたい!




