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第四話~奇跡も、魔法も、あるんだよ!

無事にたどり着いた服屋の前で、私は少々ぐったりしていた。

さっき乗った馬車には期待通り、バネもクッションもなかった。でも知識チートは使えない。確実に。なにせそもそも車輪がなかったからね!馬の後ろにぷかぷか浮かんでる箱があったときは自分の正気度を疑ったよ!魔法も奇跡もあることが判っていい収穫にはなったけど、乗っているときの微妙な浮遊感は好きになれない…。

前世を思い出す前にも馬車自体は見たことがあったはずなんだけれど、いまいち記憶があやふやというかぼんやりしたものしか残ってない。五歳児のリアル脳内はこんなものだからかもしれないけど微妙に不便だ。


「リディーちゃんどうしたの?そんなにぐったりして」


そんな事をつらつらと考えているとお母さまが心配そうに顔を覗き込んできた。

うん、下らないことしか頭にないのが申し訳なくなる麗しさだね。そういえばお母さまはおいくつなんでしょうか。外見からするに二十代前半?う-ん、わからない。年齢はいつか尋ねる機会があったら訊いてみたい。

そんなことよりも今はもっと重要なことがある。私の正面にそびえ立つはなかなかにファンシーな外見のこじんまりとした建物。身から出た錆とはいえできることなら回避したい。良心が咎めるがここは…!


「おかーさま?私、なんだかお腹が痛く…」

「…あら、ごめんなさいリディーちゃん。お母さまよく聞こえかったからもう一回言ってくれない?うふふ、リディーちゃんが一緒にお洋服買いに来てくれるなんて珍しいからちょっとはしゃぎすぎちゃってるのかもしれないわ~。昔からの夢だったのよねえ、可愛い娘と一緒に買い物するの」

「お洋服選ぶの楽しみだなーっ!」


着せ替え人形ルート、回避できませんでした!仕方ないよね!そんなに嬉しそうに微笑まれたら嫌ですなんて到底口に出せないもんね!そこまで無情にはなれないよ…!

気分は正にドナドナ、お母様に手をつながれて、私は光の消えた目をしながらお店の中に連れていかれます。



お店の中は沢山の服が舞い踊っていました。うん、今日は自分の目を疑うような出来事が多すぎる。

くるくると輪になって回っている服の一角にお母さまが手を近づけると回転する速さが緩やかになった。そのまま手を伸ばし、一つの服を私に見せる。


「このワンピースなんてどうかしら。糸の色が髪の毛とあってて可愛らしいと思うの」


お母さまが差し出したのは薄い小豆色の生地でできた丈の長いワンピース。襟ぐりには木の実のような飾りが付いていて可愛らしい。地味すぎず派手すぎず上品な雰囲気で、割合私の好みにも合っていたので素直に受け取って試着室に持っていく。正直すぐにでも帰りたいからどんな服が持ってこられても大抵は頷いておくつもりだったけどね!


かかっていたカーテンを閉めて鏡の前に立つ。目の前に映っているのは、小柄な少女。まあ、普通に私だ。おっさんとかが映ってたら軽くホラーだよ。着ている服を脱いで鏡に映し出された自分の姿をまじまじと見る。外見を一言で言い表すなら普通。没個性ともいう。栗色の髪に青のような緑のような瞳。俗に言う碧眼?元日本人の感性としては奇異に感じるけどこの国では特に珍しくもない組み合わせというね。目の色はお母さまから、髪の毛の色はたぶんお父様から?の遺伝だと思う。なんで疑問形かというとお父様の外見があやふやだから。毎日家には帰ってきてるはずなのに私の薄情物…。容姿は可愛らしいといえばそうだけど小さい頃は誰でも可愛いからなあ。お母さまはそこそこ美人なのに遺伝子は残酷だ。外見にはあまり頓着しないたちだけど、もし自分が美人だったら容姿無双出来たかもしれないと少し惜しいものがある。美人には美人の苦労があるだろうから地団太踏むレベルではないけれど。


じっと自分の姿を眺めているとお母さまからまだ~?と声がかけられた。やばい、何しにここに来たのかすっかり忘れてた!あわててワンピースに着替えて試着室の外に出るとそこには大量の服を笑顔で持ったお母さまが…!


家に帰るまで時間がかかりそうだ。

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