第三話~チートへのあくなき欲求
予期しなかった無慈悲な言葉に固まった私に気が付いていないのか、お母さまはそのまま話を続ける。
「リディーちゃんくらいの子が読むにはちょっと難しいんじゃないかしら。そもそも何で本が欲しいと思ったの?」
そりゃあ子供のうちから力を蓄えてうはうはのチートになるためですよげっへっへっへ、なんて本当の事は言えないので、私は清らかな五歳児、私は無垢な幼女…。と自己暗示をかけてお母さまに返答する。
「えっと…大人っぽくてかっこいいから?」
自分でもあほみたいな返答だと思うが仕方がない。それに、実際の五歳児なんて言葉は片言、呂律も微妙に回ってないのが当たり前だから不自然に思われることはない、はず。決して自頭が悪くて言い訳がとっさに浮かばなかったわけじゃない!
「あらあら。リディーちゃんはおませさんなのね~。じゃあ、かわりに新しいお洋服を買いに行きましょうか!」
「は、は~い!」
お母さま、急ににこにこ笑いだしたのはもしかして普段服に頓着しない私を着せ替え人形にして自分が楽しめるチャンスだと考えたからなんでしょうか。正直、服は本の代わりになりません…!ここであたかも本物の五歳児のように本が欲しいと主張できれば楽だったのかもしれないが、さすがにそれは気が引ける。大人しか読まないのなら絵本の様に手軽に入手できる物でもないのかもしれないし、値段だってきっと高いのだろう。そう自分に言い聞かせ、出かける準備をするために自分の部屋へとしょんぼりしながら歩いて行った。嗚呼、神童フラグが遠のいてゆく…。
出かける準備と言っても子供用の小さなポシェットに、くしを一つ入れるだけなので大した時間はかからない。お母さま曰く、身だしなみを整えることを意識するためだそうだ。
それにしても本が入手できないのなら一体全体どうすればいいのだろうか。半ば途方にくれながら自身の着用している薄手のワンピースを眺めていると、綺羅星のようにある可能性に思い当たった。それはズバリ…服飾系チート。
前世で読んだ小説の中にあった気がする。型紙の概念を教えたり、レースを作ったりしてお金をバンバン稼ぐ主人公の話が。生憎私には型紙の役割も微妙に分からないしレースだって編んだりしたことはないが服屋に行けばなにかチートへの秘策を見出すかもしれない!チートは一日にしてならず!チートになりたいのなら日々チートへの足がかりを見つけなくては!
私はポシェットを肩にかけ、先ほどとは打って変わった軽やかな足取りでお母さまのもとへ向かった。
どうやら服屋に行くのにはタクシーのように街中を巡回している馬車を使うらしい。BASYA!スプリングやクッションのアイディアでオイシイ思いができる定番アイテムじゃないですか!顔には出さないようにウキウキしながら馬車の到着を待つ。
「あら、服屋に行くのにゴキゲンね。何か良いことでもあったの?」
私にポーカーフェイスは装備されてないらしい。い、いや、でも、そう言い切るのは早い!子供の体に精神が引っ張られて感情が表に出やすくなっているだけだ!
自分の顔をぐにぐにといじっていたら馬車が目の前に到着した。さあ、どんな乗り心地の悪さなのか楽しみだ!




