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Ender Magia Chronicle  作者: 真夜
第一章 報復人 -BIRTH AVENGER-

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41.対立 -Quarrel-

「だけど、私たちは違う結末を行くつもり。彼女を救うためにね」


 ロザリアの状況に悲観し、まるで自分の事のように考えるライラックを見て、エトワールは隠しておくつもりだった計画を話すことを決意した。


「彼女の記憶が消える原因は恐らく封印が関係している。

 だから、私たちは魔王を完全に倒すつもり。

 悩んではいたけどシオンとリアの様子を見て、誰も知らない世界でまた孤独になるより、この世界で人として生きてほしいって」

「エトワール……俺も」

「その方法と実現性は?」


 何の話も聞かずに協力しようとするライラックを遮り、ジャックが現実を引き戻すように言う。


「ジャック!」


 立ち上がり反抗を見せるライラックにはエトワールはそれ止めて、真剣な面持ちで話を続ける。


「魔王は肉体を持たない魔力の塊だ。

 そしてロザリアの光の魔力で相殺もできている。

 なら、話は簡単。相殺だけじゃない。魔王の魔力をすべて消し去るくらいの光の魔力をぶつければいい」

「そんな簡単な話なら過去にやってるんじゃないのか?」

「そうかもしれない。だけどそれはロザリアが一度に出力できる魔力量にも限界がある。

 だから足りなかったんだと思う。

 でも、この時代には魔力がストックできる技術がある」

「もしかして、魔導機銃?」


 ライラックが最近、狩人の中でも話題になっている武器の事を思い出し、エトワールはそれに頷く。


「魔導機銃は魔石から魔力を抽出して、それを保存している。その記述を応用する。

 私の大剣にはそれと同じ技術がある。それにリアにも光属性の魔力のストックはもうお願いしているんだ。

 今日はそれを持っていなかったから、できなかったけど次戦うときは必ず仕留める」

「だが、それはあくまでも仮説だろ。成功するとは限らない」

「ジャック、魔法に詳しい君なら属性相殺についてよくわかっているはずだ。

 彼女の魔力が闇属性を相殺できている時点で想定を超える量の魔力をぶつければ確実に魔力の少ない方は消える。

 それに魔王は精霊の世界にいるのではなく、こちらに魔力という状態で存在する」

「だが、属性相殺は四属性で適用されるものであって、光と闇が完全に同じ状況になるとは限らない。

 それにため込んだ魔力で足りなかった場合の被害は?魔王には知能もあるんだろ?一度、失敗すれば対策される可能性だってある」

「君は優秀だけど消極的すぎないかな?理論上は可能なんだ、ならやるべきだと私は思う。

 それに、倒さなくちゃロザリアはずっと救われないままじゃないか」

「お前の話は成功前提で……」

「ちょっと待ち!」


 口論がヒートアップする二人にライラックはストップさせるために間に入る。

 そのライラックの姿を見て、ジャックは深呼吸して、突き放すようにエトワールに告げる。


「お前たちの作戦は勝手にやればいい。ただし、俺たちを巻き込むな」


 そう言って、ジャックはその場から離れる。


「ジャックはああ言ったけど。ラック、君も同じかい?」


 ライラックの表情は苦しそうで、ジャックと言葉も理解できるがエトワール、それにロザリアにも同情しているようにも見えた。


「少し……考えさせてくれ」


 そう言って、ライラックもエトワールの傍を離れた。

 エトワールの話を聞いた後、ジャックは少し離れた場所で身に着けていた装備を一度外し、その状態と残弾の確認を始めた。

 その様子を見たライラックがゆっくりと近づいて声をかける。


「もう行くのか?」

「ああ、夜のほうが相手も動きづらいだろ」


 ジャックはライラックの方を振り返らずに広げた装備を慣れた手つきで身に着けていく。


「ジャックはさっきの話についてどう思う」


 まるでさっきの話に何も感じなかったように作業を進めるジャックにライラックは聞くつもりのなかった言葉を投げかけていた。

 ジャックはすぐには返事をせずに、広げていた装備がすべて身に着け終わってからライラックの方を向く。


「俺たちにはスケールの違う話だと思った。俺たちが関わる話じゃない」

「だったら、親父たちの無念は誰が晴らすんだよ。あいつらばっかに任せて俺たちはただ見ているだけでいいのかよ!」

「無念とかにこだわって死んだら意味ないだろ。それにあの人たちは生き残るべきというはずだ」


 まるで自分の師や父親の死を冷たく突き放すようなジャックの言い方にライラックは力強くジャックの襟をつかむ。

「なんだよその言い方!どうしていつも他人事みたいに話す?

 お前の本心は、気持ちはどこにあるんだよ?」


 ジャックは無理やりライラックの腕を引きはがすと、いつものポーカーフェイスを忘れたように悲し気な視線でライラックに言い返す。


「俺はただ!お前に、お前たちに……」

「やめて!」


 二人の怒鳴り声がきっかけで目覚めたのかシオンが二人の間に飛び込み。


「もう……、やめて。喧嘩しないで、嫌だよ……みんながバラバラになるの」


 シオンは大粒の涙を流しながら二人に寄りかかる。

 今日一日で父親が死に、兄が倒れ、友達が襲われ、シオンは精神的に追い詰められている中、喧嘩する二人を見て無意識の恐怖に襲われていた。

 そんなシオンを見て、二人は言い合いを止めるが、互いに視線を合わせることはなかった。


「……シールウッドに会ってくる」


 ジャックは静かに呟くとともに早足で扉に向かう。


「待って、ジャック!」


 追いかけようとするシオンだが、感情がまとまっておらず、精神も不安定なせいで真っ直ぐに進めず、転びそうになるところをライラックに支えられる。

 ジャックは振り返らずに無言のまま家から出て行った。


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