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Ender Magia Chronicle  作者: 真夜
第一章 報復人 -BIRTH AVENGER-

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40.正体 -Rozalia-

 ステラとアステルはロザリアの様子を確認すると言って部屋を移動するが、恐らくこちらに来ないように見張るものだと思われる。

 二人が消えた後、エトワールは初めにジャックとライラックに質問する。


「二人は『光の勇者と闇の魔王』っておとぎ話を知っている?首都ではよく子供の頃に聞かされて、知らない人はいないほどなんだけど」


 二人は頷き、ライラックは物語の思い出を語る。


「ああ、よく知っている。勇者が希望の力で魔王を倒す話だろ。子供の頃は憧れたよ」

「こっちでも有名なんだね。

 実際はおとぎ話がどこまで事実なのかはわかってない部分も多いんだ。なんせこの物語がいつ作られたかもわからないし、長い時間を経て改変されている部分もあるだろうしね。

 でも、魔王が実在するのは間違いない」


 エトワールのなんの躊躇もない言葉にジャックは疑う。


「なぜそこまで言い切れるんだ?新種の精霊の可能性もあるんじゃないか?」

「実際魔王と戦った精霊からの証言だよ。それにこの土地、リムレイにも大きく関係している」

「リムレイが?でも精霊と話なんてできるのかよ」


 ライラックはリムレイが関係することに驚き、ジャックも同じ感想になる。


極精霊(マギアス)かつ、マギカラランにならそれが可能な住人がいる。あの土地は精霊を信仰している人たちがたくさんいるからね。それにあそこには最も人間と長く接している極精霊(マギアス)がいる。ジャックなら思い当たる精霊がわかるんじゃないかな?」


 エトワールはジャックの知識の豊富さを知っているからかわざとらしくこちらに向けて質問する。その質問にジャックは考える時間もなく即答する。


「マギカラランの長かつ守護者となるものと契約する、セティア=マギナスか」

「そう、あの有名な三大極神。

 災厄迫るとき、英雄を導き現れる天神――ウルティ=マギナス。

 強さ求め、紛争をまき散らす戦神――ノウヴ=マギナス。

 そして人に寄り添い、繁栄を生み出す守神――セティア=マギナス

 その、セティア―マギナスは過去に魔王と戦っている。このリムレイでね」

「リムレイはもともと精霊信仰があった土地だから、契約者がいた可能性はあるが、それならなぜ魔王が歴史に残っていない?」


 この土地の歴史はある程度は知っているが、過去に魔王が現れた記録はない。

 知っているのは過去に大規模な魔法戦争が起こり、その残留魔力が何も育たない砂漠の土地に変えたくらいだった。


「それはこの惨劇を繰り返さないためでもあったんだ。リムレイが草木も映えない土地になったのは魔王の力『衰弱』、生命と魔力のすべての力を弱らせることができる。便宜上、おとぎ話に倣って私たちは闇属性と呼んでる。

 その力がこの土地全てを満たしてしまったため、この土地は不毛な大地になったと意見もある。その力が知られれば利用する人も現れるかもしれないってことで、隠されていたんだと思う。

 私も知ったのはつい最近で、リアに出会うまでは半信半疑だったし。

 ラックはその魔力を受けたからどんなものかわかるよね」


 ライラックは思い出すかのように自身の手を握り直し、そのときのことを言う。


「確かにそうなんだけど、いつ食らったのか全然わかないんだよな。ただ、どんどん体が重くなって、意識すら保ってられなくなった。あれは気合とかで何とかなるものじゃないのはわかる。

 だが、この街を何も育たない大地に変える力とは思えない。それなら俺たち全員今頃死んでるだろ」

「それは魔王が目覚めたばかりだから。まだ万全な状態じゃないからだと思う。あと人ではなく獣と契約しているのも原因の一つかもね。

 そして奴の魔力は近づいただけで受けてしまう」

「ラック、どれくらい魔獣と接触していた」


 ジャックは魔王との接触時間や有効範囲がわかれば何かの対策になるんじゃないかとライラックに確認するが、ライラックはエトワールの言葉に反論するように言う。


「いや、一切魔獣には触れてないし、近づかれたのも一瞬だぞ」

「その一瞬でも奴の魔力は人の生命力を奪い続ける。だから誰も近づけないし、魔力の攻撃も奴には届かない。

 それが極精霊(マギアス)であってもね」


 近づくことすら許されない力、もしそれが真実なら、ジョーカーや他の狩人が手も足も出ないのが理解できる。ジャックたちが動かす船も動力源は魔石からの魔力を使っている。それすらも弱らせるなら逃げることもできない。

 そして、今までの話からある一つの推測が導き出され、ジャックはそれを口にする。


「なるほど、それで唯一対抗できる存在があいつの、――光属性の魔力だな」

「うん、ここまで言えば察しが付くよね。リアはこの世界で唯一、魔王に対抗できる光――『強化』すべての生命力と魔力を増幅させることができるの」


 エトワールは頷き、ロザリアの力の真相を答える。

 ジャックもこの内容から光と闇は対極に位置し、お互いの魔力がぶつかり合ったときに属性相殺を引き起こしているのだと推測した。

 ロザリアの力はあの魔獣を倒すためには必須であり、狙われた理由もはっきりした。

 ライラックもここまでは何とか理解はできたようだが、そこで一つの疑問にぶつかる。


「なるほどな。そこまではわかったんだが、そうなるとリアはいったい何者なんだ?もしかしておとぎ話の勇者なのか?」


 その言葉にエトワールは首を横に振り、推測である前置きを入れつつ言う。


「彼女自身は戦っていないと思う。彼女の力を与えられた者が勇者になった。

 現に私も彼女から精霊契約と同じ形で光属性の魔力を貰って魔王と戦うことができた」


 その言葉にライラックはますます混乱したのか、少しだけ眉間にしわを寄せ考える。


「いや、ますます意味が分かんないって。人が魔力を持っているなんて聞いたことないし、もしかして、リアは精霊だったりするのか?」


 ジャックも彼女に力があるのはわかるが、どうして精霊と同じようなことができるのかが気になった。

 しかし、この答えにはエトワールも困り顔を作る。


「ウィズピースで検査した結果は完全に人間よ。ただリア自身は自分の事の記憶を失っているせいでその出生自体何もわからないの」


 そこから、彼女の存在は謎が多いことが、まだまだあると感じたが、ジャックにはロザリアの在り方で大きな障害になるかもしれない疑問が生まれる。


「いくつか気になったんだが、あの魔獣はもしかして本体じゃないのか?

 ロザリアが人間のように魔王も本体となる体があって、あの魔獣と契約しているなら俺たちはまだ敵の正体すらわかっていないことになる」

「いいえ、魔王に関しては肉体を持っていないの。私たちが契約している精霊と同じで魔力の塊なんだと思う。

 だけどその魔力自体は精霊の世界から流れているのではなくこちらの世界に存在している。ラックはあれが魔法陣を一度も出していないのを見てるよね。それは魔力自体がこちらの世界にあるからだって」

「確かに」


 エトワールの答えと実際に見たライラックの話を聞いて少しだけ、ジャックは安堵した。

 もし、本体が別にいるなら、本体を見つけない限り、不毛な戦いが何度も起こり、ロザリアの正体がばれているこちらが不利になったからだ。

 さらにエトワールは補足するように過去の事象を語る。


「だからこっちの世界に干渉するには何かの生物に憑りつく必要があるみたい。

 過去の戦いでは人に憑いていたこともわかってる。実際それで人間社会に紛れて、一時的には人を支配してたらしいわ」

「その話が本当なら憑りついた奴には魔王の魔力の影響は受けないみたいだし、魔力も常時放出しているわけじゃないみたいだな。

 むしろ、今回は獣に付いたからその辺の制御が上手く行ってないのか」

「その発想はなかった。そういう見方もできるね」


 その考えに、エトワールは少しだけ目を見開き納得する。

 続いて、ジャックは新しい質問をエトワールにする。


「次だ。おとぎ話では魔王は倒したとなっているが、過去と今に復活している。

 魔王は倒しても定期的に甦るのか?」


 これはさっきのエトワールの答えから、魔王が精霊と限りなく存在が同じであると感じたからだ。精霊には寿命の概念がなく、魔力がある限り存在することになる。魔力の塊である魔王をこれに当てはめるなら不死身ということになる。


「これはおとぎ話が意図的に改変を加えられた部分だと思う。魔王という存在そのものの恐怖を少しでも隠すために。

 そもそも、魔王は殺せない。さっきも言ったけど魔王には肉体がないの。憑りついた人間を殺しても、別の人間に憑りつくだけ。

 だから、封印という形で魔王を閉じ込めていた。その依り代が……」


 エトワールはそこで喉を詰まらせるかのように言いよどむ。

 その様子からジャックは誰の名前が出てくるのかが察しがついた。


「……リアよ」


 ライラックは衝撃を受けたように口を開けるが、ジャックには思いもよらない質問をする。


「ちょっと待って、じゃあリアはずっと魔王と戦ってきているからものすっごいおばあちゃんってこと?」

「恐らく、おとぎ話の精霊と人間がまだ同じ世界に居たときが本当なら何百、何千、もしかしたらそれ以上昔の人間かもしれないわ。

 だけど、封印の影響か、彼女の成長は止まっているのかもしれない。

 記憶がないのも彼女自身が記憶で自分殺さないために、誰かが施したものじゃないかって言われてるわ」


 エトワールは悲しげな表情を作りながら、一つ一つ丁寧に話を進める。

 最後まで聞いていたライラックも同情するように、小さく呟いた。


「そんなの……辛すぎるだろ」

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