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【書籍化】悪役令嬢の兄に転生した華族令息の俺、破滅回避のために妹教育を頑張ったら、最高に可愛いブラコン令嬢を爆誕させてしまいました  作者: 遠 都衣
中等部2年生編

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第82話 秋とイベントと車内の会話

 楽しかった夏休みは瞬く間に終わり、あっという間に秋めいてくる。


 

 ――華桜学苑の秋は忙しい。

 


 春の運動会の時にも述《の》べたが、この学苑には運動会が春と秋にあり、秋の大運動会は華桜学苑の全生徒を組み分けして競うという、ある種、年に一度のお祭り騒ぎだ。

 

 その大運動会が10月の初旬に開催され、それが終わると学芸会。

 学芸会が終わると、今度は生徒会選挙が始まり、学苑が選挙ムードで騒然となる。

 

 今年の大運動会は父がパパカメラマンになって初めての運動会だったので、それはもう張り切りに張り切った結果、動く被写体を取ることの難しさに激しく苦悩していた。


 その次に行われた学芸会はというと、無難にクラス全員で合唱をして終わった。

 初等部の時の騒動をいまだに覚えているものも多く、「西園寺様に負担のないように……」という暗黙の空気が流れたのもある。

 いや、そこまで気を遣われると逆にこっちが悪いことしたようなみたいな気持ちになるからね!


 余談だが、妹たちからは時々思い出したように「お兄様はもう劇はしないの?」と聞かれるが「ごめんね。お兄様は忙しくて、もう劇は無理かな」とにっこりと交わして答えている。


 お兄様はむしろ、君たちの劇を見られる日を楽しみにしています……。


 

 

 ――そうして、次に迎えるのが生徒会選挙なのだが。


 

 

 この学苑は基本的に中等部以降は生徒の入れ替わりがほとんど無くなるため、生徒会は中等部と高等部それぞれにではなく、中高一貫でひとつの生徒会が取り仕切る形になっている。

 現在の高等部3年生の卒業・引退と、年度の変わり目で結婚・婚約を機に中退していく女生徒が毎年必ず何人かいるため、そういった点を踏まえて毎年11月に生徒会役員の入れ替え選挙をするのだ。


 流石に中等部1、2年で生徒会長もしくは副会長に立候補する人物はいないけど、書紀・経理あたりから虎視眈々(こしたんたん)と上の役職を狙っていく生徒が一定数存在する。

 

 で、去年1年だった時は「西園寺様は生徒会に入られないのですか?」とよく他の生徒から尋ねられたものなのだったが。


 一応、紫雲亭メンバーは生徒会には入らないという暗黙のルールがあるのだ。


 別に学苑の規則で定められた決まりではないのだけど。

 生徒会はあくまでも学苑生活を有意義に送るための、生徒による生徒のための活動組織であり、対して紫雲亭は優れた異能者を育成し、世に送り出していくための団体として定義されている。

 

 表向きはどちらが上とか下とかは謳《うた》ってはいないが、実のところ、紫雲亭に入っている方が格が高いというのは、みんな口には出さないけれど思ってはいることだ。


 生徒会は生徒からの票を得ることができれば入ることができるが、紫雲亭はそうではない。

 家柄、与えられた異能の才、人柄――、このどれかひとつでも欠けていれば入ることができない紫雲亭は、華桜学苑全生徒からの憧れの対象でもある。


 故に、『紫雲亭メンバーは自身と自身の所属する団体の向上、また華族の一員として他の生徒の手本となるべき姿であり続けることを最優先とすべきで、学苑生活の運営に携わる生徒会には参加しない』という建前のもと、生徒会への参加をよしとしない風潮《ルール》があった。


 とは言えまあ、そんなルールがなかったとしても。

 学業、紫雲亭、西園寺家の事業の勉強に加えて、今は白百合のこともある。それに伴って宮姫との時間も捻出しているわけで――。

 どこにも生徒会なんて関わってる時間なんてないよね……。


 そんなわけで、秋のイベントの最後の目玉である生徒会選挙を、他人事よろしく横目でふんふんと眺めていた俺なのだったが――。


 

 ◇



「――てっきり。わたくしは東條様が生徒会長で蓮様が副会長になるものだと思っていたわ」


 というか、そういうお約束展開ではないの? と真顔で尋ねてくる宮姫に「なんですかお約束展開って……?」と答える。


「さっきもお話しした通り、紫雲亭のメンバーは生徒会には入れないので。無事に新会長から役員まで、全員ちゃんと決まりましたよ」

「残念ね。よくある小説ならこれからおふたりが生徒会長と副会長になって東條様と一波乱超える展開だと思うのだけれど」

「残念ながらこれはよくある小説ではありませんし、さすがに中等部2年で生徒会長と副会長はありえません」


 漫画とか小説の読みすぎだよ、宮姫……。

 この人、うすうす思ってたけど前世サブカル女子だっただろ。


 そんな、内心のつっこみはもちろん口には出さず。


 今日は、宮姫が我が家に初めて遊びに来ることになり、家から車を出してもらって迎えに出た俺が、今度は宮姫を乗せて西園寺の屋敷まで向かっている途中だった。

 運転席側と後部座席を衝立《ついたて》で隔てているため、こちらの会話は運転手側には聞こえないようにしてある。

 そのため、宮姫も外での会話の割にはいつもよりちょっと砕けた喋り口調になっている。


「そのあたりのことは、原作の小説に書かれていなかったんですか?」


 と、原作については俺より詳しい宮姫にそう尋ねると、


「どうだったかしら……。白百合ちゃんを紫雲亭に中途入亭させるか否かのエピソードがあったのは覚えているけど。そう考えると、あの作中でも生徒会の存在って薄かったのね」


 紫雲亭の会長はストーリーに出てきたけど、生徒会長なんて出てきた記憶もないものね。と宮姫が言って。

 宮姫が言った、紫雲亭の中途入亭云々の話は俺も知ってる。

 そのエピソードは割と序盤で出てくるからだ。

 

 結局、白百合が自分で周囲を納得させるだけの能力を発揮し、無事紫雲亭入亭を認められたところで蒼梧が現れて、元紫雲亭会長の登場に周囲が驚いて……。


 ……ん?


 あれ、そういえば……。

 原作で、蒼梧がかつて学生時代に紫雲亭の会長だったって、はっきり書いてあったことを、今更思い出した。

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