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「ミヤ姫、宜しければこの後一曲踊って頂けませんか?」
そう誘って来たのは王太子のファースト。もう直20歳になる。正当な王子様と言う雰囲気を持っている。
「まぁお兄様だけズルいっ」
「独り占めはダメですわっ」
お姫様達が抗議する。
「ごめんよ、後で一緒に踊ってあげるから」
「サリー、メリー、お父様にその分甘えておくれ?」
国王様は、娘達にはとても甘そうな父親の顔をしている。
みやは話の流れで一曲だけ付き合う事にした。
「私、社交ダンスはまだ上手ではなくて・・・」
「心配要りません。リードはお任せください」
みやの手を取ってホールの中央に連れて来たファーストは、片手をみやの腰に触れる。
「ゆっくり踊りましょう」
にこやかに言われ、少し緊張しながらもやがて始まった曲に合わせて動く。
「お上手ですよ」
「どうも・・」
注目されているのもあるし、1対1で踊るのはドキドキする。
「(人生って何があるか分からないわね)」
お姫様扱いにも慣れてきたような気がするこの頃であるが、ドレスを着てこうして王族と関わる生活とか、人生設計上には全く存在していなかった事である。
社交ダンスと言うだけあって、ただ踊るだけではない。
「お噂では、明るく活発で情熱的だと聞いていますが、今はそうでもないのですね?」
「え?」
「先程の音色には熱い思いが致しましたが、こうして共に踊っている時のミヤ姫はしおらしく見えます」
「あー、そうですか?・・・、公私は分けているので、あれはお仕事としてやっているから違うのかもしれません」
「成程。ー。 こう言う一面も彼は虜にされたのでしょうかね」
「え?」
みやは問い返すも、にっこりと微笑み返されただけだった。
「音楽の他にお好きなものはありますか?」
「そうですねぇ。ー、おいしいものは好きです。ご飯もお菓子も」
「ふふ。 女性は皆お好きですね。 母と妹達も、綺麗な花やお菓子は大好きですから」
「そうですか。 分かります」
「明日は庭園をご案内致します。自慢の庭ですので、きっと気に入ってもらえるかと」
「それは楽しみです」
「この後はどうしますか? 次を待っている方々が居そうですが」
ファースト王太子はチラリと周囲を確認する。
「それは困ります。 もう休ませてもらえると助かります」
「では終わったらお送りしましょう」
その後も踊り、曲が終わるとファースト王太子はスマートにパラディン達の所まで送ってくれた。
「ありがとう」
「いえ。十分にお休み下さい」
「えぇ。 明日は一緒に朝食を頂きませんか?」
みやは朝食のお誘いをした。するとファースト王太子は更に甘く笑んで答えた。
「喜んで。 良い夢を」
ファースト王太子はみやの手に口を落として挨拶をすると、パラディンに手渡して見送った。
みやは部屋戻って来ると直ぐに着替え、寝る支度をした。




