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訪問の旅の準備をしている中、みやは再びアビス国へと来ていた。
「その節は大変失礼を致しました。改めてお詫び申し上げます」
「いえいえ、もういいですからっ。気にしないで下さいっ」
深くお辞儀をする隊長達に、手を振って大丈夫だと言うみや。
あれから半年程経つと言うのに、まだ気にしているようだ。
「そうだ、偶々とは言え、みやがこちらに身を寄せて受け入れてくれたのは、時期的に見ても幸運だった。私も感謝している」
ルーイも援護する。
「お許し下さり感謝致します。 本日はキチンと然るべく対応致しますので」
「いつも通りで構わない。遊びに来たのだし、堅苦しくする事はない。なぁロイナ?」
「あぁ。隊長達は警護の方を頼むぞ」
「「はっ」」
「お任せ下さい」
みやとルーイ、そして王子のロイナと護衛が連れ立って、今日は首都巡りをする予定。
なのでみやは男の子の格好だ。
「おぉ、馬車っ。 あれに乗るの?」
「あぁそうだ」
「お馬さんも1・2・3・4・・・ 8頭も居るねっ。 触ってもいいかなっ?」
みやは馬や馬車にテンションが上がる。
「いきなりは駄目だ。ビックリするからな。 ちゃんと許可が出たら良いだろう」
「うんっ」
みやは喜んで馬の所へと駆け出す。
「! みやっ、そんな急がなくてもっ、 そんなに急に近づいたら危ないぞっ」
とルーイも追いかける。
それをロイナは活発な姫君だなぁと思いながら、後からゆっくり向かう。
馬に挨拶して触れ合った後、みや達は馬車の中に乗る。
ステップを踏んで入ると、思ったよりも広いと感じた。もっと窮屈なイメージがあったが、みやの身長だと屈まなくてもいいし、座れば足も伸ばせるだけの広さがあった。
ワクワクしながら座面に座る。
「あれ? 膝の上じゃなくても良いのかな?」
「え?」
ロイナに指摘された意味が分からないみや。
「馬車は揺れるから、その方が安全と言う事だ」
とルーイが教えてくれた。
「あぁ、大丈夫です。安全運転であればその揺れも楽しいですから」
「あぁ・・・そうなの?・・」
ロイナはルーイを確認で見るが、ルーイは穏やかに笑みを浮かべているだけだ。
ロイナは本人達がそれで良いならと、首を傾げながらもそれ以上は突っ込まなかった。
馬車が走り出した時に少し手で支えた以外は、隣りに座っているだけの様子に大丈夫なのか?とは思ったが。
「ミヤ姫は動物がお好きなのですか?」
馬や馬車に乗りたいと言うのはみやのリクエスト。ロイナはリサーチする。
「そうですねー。比較的好きな方だと思います」
「んー、なら、動物を飼っている所も見学しますか? 我が国には広大な牧草地がありまして、色んな動物がいますよ」
「もしかして、ミディヌエットとの間にある領地ですか? 1日では見て回れないと思いますけど・・?」
「勿論、一番近い所だけになりますよ」
「みやはどんな動物が好きなのだ?」
ルーイも聞く。
「んー。 犬も猫も普通に好きだしー。兎も可愛いと思うしー。鳥も嫌いじゃないかな? フワモコなのは魅力的に思うよ」
「そうか。ーー」
ルーイはそう聞くと、何か考えているようだった。
その日は午前中に演芸団の公演を観て昼食を取り、午後に牧場を見学し、お土産を買ってからお茶を頂いて、帰宅した。
一晩くらい泊まっていけば良いと言われたが、またの機会にとお別れして来た。
後日、ルーイから特大のぬいぐるみをプレゼントされた。真っ白な毛並みに青い目。それに青いリボンを掛けている、まん丸な生き物。上に小さい三角耳があり、短い尻尾もある。
そしてそれはみやよりも大きかった。
「・・・こ、 これは・・?」
「これはムックリンだ」
「・・・ムックリン・・・」
何だそれは?
「ノース大陸に居る生き物らしい」
「へぇー・・・ 大きいね・・」
「あぁ。本来は手乗りから抱えられる程の大きさらしいが、その愛らしさから女性に人気で、大きいものも作ってみたそうだ。 触ってみると良い」
「・・うん・・」
みやはムックリンのぬいぐるみにそっと触れる。
フワッとした手触りが伝わってきた。
「 おぉ・・・」
埋もれるモフッと感。
みやはキュッと抱きついた。中身はしっかりしているようで、モチッとした弾力性があって安定感がある。
堪能するみやに、ルーイはふふっと笑って満足気。パラディン達も目尻を下げていた。
何でぬいぐるみを贈ってきたかと言うと、この前動物が好きだと知ったからだそうだ。
それからみやはムックリンのぬいぐるみをソファー代わりにして、本を読むようになった。
のだが・・。
その更に後日。
今度はパラディン達から色とりどりの竜のぬいぐるみを貰った。腕に抱えるととっても嬉しそうにする。
まさかお手製か?
「(別に、すっごくぬいぐるみが大好きって訳じゃないんだけどな・・)」
みやはそれらをベッドに並べ、抱き枕にすることに。
それをパラディン達は影でコッソリ、今夜は何色を抱いておられたと話題にするようになった。
そんな事など知らないみやは、最近妙な期待の目を向けられるなぁと思っていたのだった。




