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ルーイの仕事は何をしているのかと言うと、主に外交だ。各国とは手紙のやり取りをしているが、訪問もしている。
大陸内であれば日帰りか2日以内で済むが、五貴族などは1週間掛ける事もある。
みやがお披露目をしてから、ルーイは寄る所々で祝いの言葉と一緒に、誘いの言葉と揶揄う言葉を掛けられる。
その一つ、アーラン国ではお忍びスタイルで訪問して国内を歩いていたのに、この国の王子に絡まれた。
第二王子のユファスはよくフラフラと遊びに出る事で有名で、陽気な性格は国民に受け入れられている。
「なぁー。ミヤ姫ちゃんはいつ来るの?待ちきれないんだけどー?」
とルーイの肩に腕を回す。
人懐っこくて軽い口調は王子らしくないが、これでも国の事を考えている一人だ。
「今はその準備に忙しくしている。ここはまだ当分先だ」
「えぇ~? 先ってどのくらい?時間が掛かるのは分かるけど、早く会ーいーたーい~~。 何ならこっちから迎えに行こうかー?」
「大丈夫だ。パラディンで直接来る。 祭りは好きなようだから楽しみにしていると言っていた」
「あ、そう? 楽しいのが好きなら気が合うかなぁ?」
「連れまわすなよ?」
釘をさしておく。
「だーい丈夫だよ~。女性には優しくするしー。気遣いだってバッチリさー」
「みやは他の女性とは違う。同じ扱いだと避けられる事になるぞ」
ルーイはユファスの女性扱いについて信用していない。
「ええ?ちゃんと極上のおもてなしをするってー。 移動中はずっと抱っこしてー、食事はあ~んって食べさせてー、夜はマッサージして甘く癒してあげるんだ~」
それにルーイはやっぱりと溜息をつく。
「それは逆効果だ」
「んー?」
「みやは過度の接触を好まない。 やっとパラディン達にも慣れてきたところだ。私は兎も角、父上でさえ触れるのを我慢しているのだぞ?距離を詰めたら確実に避けられるだろうな」
と注意しておく。
「えっ?何それ? どゆこと?」
ユファスは目を白黒させて聞くのだった。
また別の国、アビスでは。
「ル~イ~~ 遅ぉいっ」
「予定通りだ」
待ち構えていたのはこの国の王子ロイナ。
「そこはっ真っ先に来ても良かったんじゃないかっ?長年の友としてっ」
「友人だからこそそこは深い懐で構えていて欲しいな」
「むむむ」
始めの軽い挨拶はそこまでにして、お互いお茶の席に座る。
こうして軽口を言えるのも長い付き合いのお陰だ。
「大体な、水臭いだろ? 俺がどれだけ心配していたと思う?なのに、実は恋する人が居ましたとかな?話してくれても良かったと思うぞ? 何か事情があったなら相談くらい受けたさ。 そんなに信頼されてないのかと、地味に傷付いたんだからな?」
色々と不満がおありの様子。
「・・・すまん」
「言ってくれてたらここまでの恥をかく事も無かった、とは言わん。俺もそこまで目を通さないからな。 ちょっとクノ国の王子にネチっと言われたとか、家の隊長補佐が辞任願いを出して、その部下も責任を取るとか言い出して、問答もあったけどなっ」
そう言われてルーイもすまなそうな顔をする。
「・・そうか。 まぁ、みやもそれは気にしてたな。そんな事になるなんて迷惑を掛けたと。 今度一緒に遊びに来る事にしている」
「今度っていつ!」
そこに食いついた。
「その内に」
「その内ってっ?明確な日にちを求めるっ」
「まだそこまでは決めていないが、、今大陸一周の訪問計画を立てているところだから、ここはその最後になるだろうな。 まぁ、遊びにはその前になるかもだが・・」
前のめりになるロイナにルーイは身を引く。
「そうか。 一周となると長旅だな」
「そうだな。 一つの国に2・3日滞在するそうだから、1ヵ月以上掛かる予定だ」
「ふむ。ーー」
そこで一息つく。
「それで?彼女がどうして家の国に来たのかも分からないんだけど、どういう経緯と事情なわけ?」
「あー。それは私も予想外だった。 みやも気付いたらこっちに来ていて、歩いて辿り着いた先がここだったそうだ」
「は? 気付いたらとは? まさか拉致されて来たとか言わないよな?」
それだったら大事である。しかしそれはルーイが直ぐに否定した。
「いや、そうじゃない」
「そうか・・」
ロイナはホッとする。しかしルーイの次の言葉で思考が飛んだ。
「みやは、総天地竜様の力によってこちらへ来たのだ」
「・・・、え?」
「竜の翼でも行く事が出来ない所で暮らしていた。だから次にいつ会えるのか、分からないままに時が過ぎて今に至った」
「・・・。 そんな事があるのか・・・?ーーー、そんな所から・・。 通りで今まで噂にもなっていなかったのは分かった。ーー」
理解が追い付かないが、そこのところは納得した。あれだけの才能が今まで誰にも知られていなかったのは不思議だったのだ。
「まぁ良かったな。 竜都国に花嫁が来てくれた事は他の国からしても喜ばしい事だし、安心出来る。 そちらの式はいつ頃になりそうだ?」
そう聞くロイナにルーイは一瞬口ごもる。
「・・・、決まっていない」
「ん?そうなのか?」
「あぁ。今は音楽大使で十分忙しいし、・・当分の間は保留だ」
「ーー。何か訳があるのは分かるが、ーー、念をして周知させないと取られるぞ?」
「・・・、誰に?」
「いや誰って訳ではないが、あんな魅力を持った女性だぞ?ほっとかないだろ」
「ーーー、お前もか?」
穏やかではないオーラがひしひしとロイナに伝わる。
「待て待て待てっ。 俺はそんな不埒な事しないからっ。お前を応援してる側だからっ。 もうちょっと信用してくれっ。これでも常識はあるぞっ」
「ーー、すまない、つい」
「・・・・・・」
つい、でそんなオーラを出すなと言いたい。
「ー。 お前がぞっこんなのは分かった。竜族を相手に愚かな事をする者は居ないと思うが、それでも気を付けろよ」
「あぁ」
一途と言う事では、固い蕾はある意味今も健在だと言える。
ロイナはそっと胸を撫で下ろした。
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