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「竜王様っ、サインして下さい!」
「?・・どうしたのだね?」
執務室に入って来るなり、真っ直ぐに向かって来ての言葉に目をパチクリする竜王アイル。
「これに、許可・了承の署名を下さいっ」
と机の上にパシッと置かれた紙。それを手に取って読む。
「・・ふむ。 『求人募集』?」
最初に目についたのはそこだ。
「はいっ。お披露目の舞踏会に先立って、人材を募りたいので」
「ふむ。 わざわざ募らずとも、当日も皆協力してくれるから心配は要らないよ?」
協力の事は前にも聞いたし、言われずともそうするつもりだ。
「いいえ、この求人は人材発掘なのです」
「ん?」
それは何かと聞く。
「私と一緒に踊ったり歌ったり、音を奏でられる、つまり音楽の才能のある人を募集したいのです。 特に今回は育成する時間があまりありませんから、即戦力に近い人の協力が必要です。もちろん演芸団の方達も交えて。 お城に居る方達は難しいかもしれませんが、当日給仕をされる方とかは特に協力が必要になります。それならその中で出来そうな人がいたら参加して欲しいなって考えていますし、パラディンさんを含めた竜族の人達にも募集をかけたいです。どの道パラディンさん達は護衛でそのまま引き入れる形にはなりますが、活動を拡げるなら今のうちから確保して練習をしていきたいと考えています」
と力説する。
「ふむ・・。それで許可の署名かね?」
「はい。雇用主は竜王様ですから、私の勝手でお願いする訳にはいきません。皆さんのお仕事にも差し障ってくる事ですから。 竜王様が了承している事ですよって前提があれば、堂々と募集出来ますし、皆さんも考えて下さるかと思います」
「成程。 ミヤは本当に賢い子だね。そこまで考えてくるとは。ーーー。 分かった。許可を出すから思うようにしてみなさい」
「ありがとうございますっ」
「・・・・・ハグはないのだね・・・」
「? はい?」
アイルの小さな呟きは聞こえなかったよう。少し残念そうな顔にみやは小首を傾げた。
それから直ぐに募集をかけた。その反応たるは・・・。
「・・・・・・」
思わず眺めてしまう程のものだった。
「(・・・こんなにとは・・、なめてたわ・・)」
募集は先ず紙にて送って来るようにしていたが、正解だった。
ざっと数えても300枚はある。
「こんなに来るなんて思わなかったわ」
「人気ですから」
「でも意外と音楽の才能有りと思ってる人が多いと思うわ。 皆何かしら手習ってたりするのかな?」
「そうですね・・。中には居るかもしれません」
「ん?」
少し苦笑うエリネに疑問。
「例え一時でもミヤ姫様にお会い出来る機会は、それだけでも魅力的でしょうから」
「・・・」
つまり関係ないものも入っていると。
みやは溜息をつく。
「じゃあ、取り敢えず仕分けしましょう。 手の空いてる人は手伝って?」
他のパラディン達に手伝ってもらい、お城勤めの人、竜族、パラディンに分けていく。
「エリネさん達はお城の人達の名前を見て分かる?」
「いえ、多少なら存じている者もいますが・・」
「誰なら分かる?」
「そうですね、 ウイリス殿や、侍従長のハンサと言う方なら把握されているかと」
「ならこの束はその2人に聞いて決めましょう。 竜族の方はどう?」
「大方なら私でも」
「じゃあお願いします」
そして別の日に、ウイリスと侍従長を交えて振り分けた。
2人にはこれからの予定も伝えて協力してもらう事になる。




