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「いつまで居るの?」
少しだけ仲良くなったかもしれない少年フルノがそう尋ねた。
「明後日の昼には出るって言ってたかな?ー、明日も会える?」
みやは折角の貴重な出会いをこの一回で終わらせたくなかった。
「いいよ」
フルノは気負いなく返事した。
約束をした2人はそこで別れた。
そして翌日の同じくらいの時間に、また同じ場所に会いに行った。
「ねぇ、また歌って。 昨日は途中からだったから、始めから聴きたいんだ」
「んー、、いいよ」
フルノは昨日の様にお立ち台に立って、そして一礼する。
一呼吸おいて、ゆっくり大きく息を吸って、始まった。
空気を伝わって溶ける様な澄んだ声。
それをうっとり聴きながら、やっぱりいい声だと思った。
歌い終わると再び一礼して、照れた笑みを見せた。
「ありがとう。 何度聴いても素敵だよ」
「どういたしまして」
フルノはみやの横に座る。そして尋ねた。
「ミヤは音楽に興味があるみたいだけど、なんで?」
「あぁ、それはね、仕事上ってやつなんだけど、、何かはまだ言えない、秘密なんだ。 ま、言えるのは音楽に関係することの勉強って事だね」
「ふ~ん」
事情があるなら深入りはしないフルノ。まだ知り合ったばかりだ。
「一応ね、得意なのはピアノなんだ」
「へぇ、珍しいね」
「珍しいの?」
「そりゃあね?気軽に持ち運べないもん。 練習もそこに行かないといけないし。大きめの部屋が必要でしょ?気軽に習えるものじゃないよ」
「あぁー、まぁそぅか・・」
お金がある人の楽器だとみやも納得する。
「この街にも置いてあるのは、僕は一ヶ所だけしか知らないな」
「あ、それ昨日の夜に行ったかも。食事が出来る所?」
「あぁそうだよ。 もしかしてシェーラさんの歌を聴きに行った?」
確かにそう呼ばれていたのを覚えている。
「うんうん。大人の女性って感じだった」
「深みがあって魅力的だよね。 僕にはまだまだだって思うよ」
未熟さを感じているようだ。
それに対してみやは言う。
「え?フルノにはフルノの魅力があるよ。 将来変わってしまう歌声でも、フルノらしさはそのまま持っていて欲しいなって思うよ?」
声変わり前の独特な歌声だから、次に聴く時は変わってしまうだろう。それでも今でさえ魅力的なのだから、今後も持っていて欲しいと望む。
「・・僕らしさ?」
「そう。 この澄んだ星空の様に、どこまでもすぅーっと溶けていく様な、伸びと響きはとてもキレイだし、ずーっと聴いていたいって思える。 その丁寧な気持ちを忘れてほしくないなって」
「・・・・・・」
フルノは星空を見上げる。それにみやも付き合った。
「 ありがとう。 ミヤのピアノもいつか聴いてみたいな」
「ふふっ。こちらこそ。ーー、あっ、いい事考えたっ」
「?」
みやは閃いた。
「いつか2人でデュエットしようっ。トゥファオールでっ」
「えっ?・・・、デュエット・・?」
フルノは首を傾げる。
「そうだよっ。一緒に演奏と歌を披露しようっ。 目標は必要。夢は夢で終わらせない努力が必要。 ねっ?」
「ええ?」
「決まり決まりっ。 その時は手紙で教えてねっ」
「いやでも・・・」
なんか急に決まった事にオロオロするフルノ。
「いつかでいいの。 約束」
「ーーー・・・、いつかでいいなら・・」
押し切られました。
「じゃ、待ってる。 私の事はー、、その内噂になるかもだけど、 遠慮しないでねっ。 あ、因みに手紙は竜都国宛に出して。友達のって書けば私の所まできっと届くから」
「えっ?」
実はそんな遠くから来てました。しかも竜都国!
「次に会えるの楽しみにしてる。 じゃあねフルノっ」
そうしてみやはそこを去った。
フルノが自分の事を知るのはいつになるだろうか?知った後もまたこうして会ってくれたら嬉しい。
そう思いつつ夜は更けた。
翌日の昼頃にみや達はサニーの街を出立し、夕暮れから野宿をした。
ゆさゆさと起こされた時には陽が昇る少し前でもう上空だった。
そして・・。
「・・・・・・ おおぉーー 」
木々や家々が霧の中に埋まっている景色に感動した。
「 すごぉ・・ 」
言葉少なだが、じぃーっと見入る。
生で見ると自然は迫力あるものだ。
暫くその景色を鑑賞した後は、パラディン達と帰路に就く為にマーリニの地を後にした。




