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「( 私は人形 私は銅像 ・・・ 何も考えるな 考えたら終わりだっ )」
自分にそう言い聞かせること幾度。
悟り?を開いてからのみやは、何も感じないように己を律している。
「(何も見ない 見えないわっ。 これは私じゃない。 私は何も知らない。 これは動物よ。 竜は動物。 ただのお世話好きなアニマルだからーー!)」
現実逃避していた。
認めてしまえば女性の何らかを失う気がする。
ポイントは直視しない事。目を合わせれば良心が痛む。
悪いことはしていないはずだが、悲しんでいるのが分かるので困る。
だがこちらも羞恥で死ねるくらいの思いなのだ。何が悲しくてここまでお世話されなくてはいけないのかと。
全てを忘却したいっ。
そんなみやに医竜が話し掛ける。
「ミヤ姫様、今日は問診を行います。 パラディン達には外へ出て頂きますので、私とお話をしましょう。良いですか?」
みやはゆっくりと顔を上げて、少し考えた後、控えめに頷いた。
医竜はそれを見てパラディン達に合図する。
そして部屋にはみやと医竜の2人だけになった。
「まず、お身体の方はどうですか? 気分が悪かったり、怠いとか、痛みがあるなどはありますか?」
みやは間をおいて、首を横に振る。
「傷痕も引いてきましたから、そろそろ動かれてもよろしいのですが・・。最近ずっと塞ぎ込まれていて心配です。 外へ出るのは怖いのでしょうか?」
その質問に、みやは迷いつつゆっくり否定した。
「・・・ 私達のせいですか? 」
それに対しては、どちらとも言わないが顔を背けた。それは肯定と同じだった。
「ーーー。 どの様な理由で元気を無くされたのでしょうか? 皆、またミヤ姫様の笑顔を見たいと思っています。 以前のように元気なお姿になって欲しいと」
「・・・・・・・」
「色々とご計画なされていたと聴いています。他の地への訪問や、お披露目についても。とても楽しみにしていらっしゃったと。 このままでは身体が弱り、倒れてしまいます。 どうか教えて下さい。何がお心を塞いだのか。 ミヤ姫様・・ 」
長い沈黙が続いた。
そして少し、みやの口が開いた。
「 駄目って・・ 」
「!・・・?」
「・・・みんな 駄目って 言う・・・ 」
小さな声に真剣に耳を傾ける医竜。
「何をですか?」
「・・・・・・ ひとり 駄目 走るも 駄目 運動も・・ だから・・・ もう なんにも しない 」
言っていて、みやは涙が出て来た。止められなくて、声を殺して顔を俯ける。
そんなみやに医竜は手を触れて撫でた。
「ーーーーーー。 駄目だと私達が言ったので、外にも出たくないと思われたのですか? 」
みやは膝に顔をうずめて体を縮めた。
「責めてはおりません。 ミヤ姫様の心を追い詰めてしまったのですね・・。申し訳ありません・・・」
医竜は肉体も心も深く傷ついている時に、自分達は悲しませる事を言ってしまったのだと知った。
「ミヤ姫様、私達が言ったのは、回復なされるまでの事です。 ミヤ姫様は少々ご無理をされる傾向があるようですので、キチンと治して下さる為に制限をかけさせて頂きました。ですから、動いてもよろしいのですよ。 今から少しずつ体力を戻せば、また以前の様に動けますから」
「 ほん と? 」
「はい。 竜王様方が言われた事は、私にはどうこう言えませんが、 パラディン達は自らを責めているのです。ミヤ姫様をお一人にしてしまったばかりに、守れなかった事を悔いているのです。 どうか、その気持ちは汲み取って頂ければと思います」
「ーーー。 うん 」
「 ありがとうございます 」
弱々しい返事に、医竜はそっと抱き寄せて、良い子良い子とする様に撫でた。




