71
*怪我をする表現があります。
みやはこの日、とうとう脱出を決行した。
別に逃げ出して他の土地へ行こうとした訳ではない。
一人の時間を獲得するためだ。
そして今現在は隠れ鬼ごっこの様な状況だったりする。
みやにとっては少しスリルがある遊びであった。
窓から木へと飛び移り、そこから降りると林の中へと入って走る。
そして再びお城の中に入ってダッシュ。
途中人とぶつかりそうになって回避し、適当な部屋で一休みをするが、見つかりそうになってまた外へ出る。
「(なんで分かるのっ? GPSでも付いてるんじゃないのっ?)」
隠れても少しすると来る。
実際は鼻を効かせてあたりを付けているのだが。
「(大体鬼が多すぎでしょっ! そっちが多勢で来るなら私も本気なんだからっ)」
と海方面にある森へと足を入れた。
「(ここまでは来ないよねっ)」
迷わないよう目印を残しながら、あまり深く入らない辺りで潜む事にする。
「このまま進んだら海に出るのかな?」
そう思うがそこまで行くつもりはない。
みやは左に回って、庭に出るか塔に戻るつもりだ。
遠目にお城の壁が見えるか見えないかの堺をジグザグと歩く。
すると突然。
「っっ!??」
ゾワリと背筋を悪寒が走った。
何だと思わず止まり、辺りを窺う。
虫か動物か?
居てもおかしくないため、よぅーく確認するが見当たらない。
何だったのか分からないまま、再び足を進めた。さっきより慎重に。
しかし。
「ひっ!?」
ビクッとする。
今なんか変な風を感じた。
何か居る。
パラディンかと思いたいが、みやの直感が否と言う。
見たくないと思いつつ、確かめなくてはとも思う。
「(どうする? どうするの?・・・)」
自問して出したのは、
気づかないふり。
多分木の上に何か居る。
みやはさり気なく石ころや木の枝を拾い、あからさまにならないように進路を城側にする。
気を張りながら、いつ襲われるかもしれないと五感を澄ます。
ガサッと音がした。
「!」
みやは咄嗟に走る。
背を向けるのはいただけないかもしれないが、危険を感じたのだ。
音の位置から斜め後ろに居る。
すると音がザザザザッ ガザガザガザッ と迫って来ているように聴こえた。
みやはスピードを上げて、なりふり構わずソレから逃げる。
何か分からないが小さくは無い。
こんな事になるならもう少し近くに居るんだったと後悔するが、今は全力疾走だ。
だが。
「あっっ!!??」
何かに引っ掛かった様に前に進めなくなった。
慌ててグイグイ引っ張るが逆に引っ張られる。
そこで えっ!? と思い初めてソレを視認した。
「ひっっ!!??」
目を見開き絶句する。
硬直する体。
しかし引っ張られる力は止まらない。
ソレは黒い塊だった。それに大きな目が一つと、気持ち悪いウニョウニョが何本もこちらに伸びて、みやを絡めていたのだ。
「 や・・・ いやぁっ・・・ 」
得体の知れないソレにみやは恐怖する。
ズルズルと引っ張り、片腕と手首だったのが、足や腰、首にまで巻き付いてきた。
「 いやぁーーーっ!! 」
みやは叫んで、手に持っていた石や枝を投げつけた。
それで一瞬緩んだ絡まれたものをみやは振り払い、逃げる。
せめてナイフがあればと思考がよぎる。
みやは足を動かして、頭だけ振り返る。
「っ!!?」
ソレは自ら飛び掛かって来た。
みやは咄嗟に回避。
しかし分が悪い。
「あ゛っっ!!」
脇腹に熱いのが走った。
やられた。
アレには針もあるらしい。
そして次には足が地面から離れた。
どうする事も出来ないまま放られ、木にぶつけられる。
防御姿勢はとったが、そんなのは役に立たないくらいの勢いで当たり、ダメージは大きい。
息が一時出来ない状態になり、意識も飛んだ。
対抗出来る手段が無い。
戻った意識でみやは叫ぶ。心の中で助けてと呼ぶ。
ソレはみやが動かなくなると、再びウニョウニョを巻き付けてきて、引きずる。
拒絶し気持ちでは抗うが、無力。
「(いやぁ~~~っ!! 助けてっっ!!)」
声に出す事も出来ず涙するみや。
するとその時だった。
みやの胸元から光が。
空に向かってその光は放たれた。
黒いソレは逃げようとするが、みやを放さない。
当然引きずられるままになる。
しかしその状態は長くは続かなかった。
強い風が吹く。
そして上から木々の間を抜けて、パラディン達が飛び降りて来たのだった。




