7
翌朝。朝の陽射しに目が覚める。
「んん・・・」
寝返りをうって軽く伸びる。
いつもの枕と違う。 いつもの匂いと違う。
「んん・・?」
薄く目を開けると、自分のいつもの部屋と違う。
眠たい頭を回す。
「(・・どこ・・・ あー・・・)」
家ではなかったと思い出す。そして不安も。
隣りのベッドにはナッチがまだ寝ている。
みやはそっと身を起こし、着替えなどを持って浴室へ。
「(ほ・・ 今なら)」
誰も居ないのを確かめて急ぐ。
「(髪乾くかなぁ。 くし欲しぃ~。 無いのかなぁ)」
と探してみると。
「あ」
何とかお粗末ながらに1本置いてあった。念入りに洗ってから使う。
後で聞くと、顔を洗う所に数本あるらしい。みやは自分用に1本欲しいなぁと思った。
部屋に戻ると。
「!っ」
見えたものに開けたドアを再び閉めた。そしてドアの外でじっとする。顔が真っ赤だ。
すると直ぐにドアが開いた。
「どした? そんな所に居ないで入ればいいのに」
とナッチが不思議そうに顔を出して言う。みやはぎょっとした。
「っ! ふ、 服着て下さいっ」
「は?」
ナッチはキョトンとする。
「・・・、いや、服は着ますけどね? 別に外で待ってなくても・・?」
「ーー しゅ、 習慣 です・・」
咄嗟にそんな説明をした。
「わ、私の所では、それがエチケットと言うものなんですっ」
「・・・ えちけっと??」
「ー 礼儀作法 です」
「ふーん、そうなんだ。 今までそんなの気にしなかったけど・・。 んじゃあちょーっくら待ってて。直ぐ終わるからさ」
「・・はい」
一応納得してくれたようでほっとする。
そして着替え終わったナッチと朝食に向かう。
「(うわー・・・)」
昨晩もそうだったが、男所帯はむさ苦しい。
朝からガッツリ食べている。
「ミヤ、こっち!」
「あ、はいっ」
空いた席に座る。
「そんだけでいいのか?腹減るぞ?」
「いえ、十分です」
たっぷりのスープにパンが2つ。ナッチは5つ持って来ていた。
他の人ではその倍ある人もいた。
朝食を終えると昨日言われた中庭の北側に行った。
「ナッチさんはここに来るのが3回目だと聞いたんですが、普段は何をしてるんですか?」
「あぁ、まぁふらりふらりとしながらあっちこっちで報酬を貰えそうな情報を探して、生計を立ててる。在り来たりな人生だよ」
「騎士を志願とかしないの?」
「いやぁ、俺みたいなのは向いてないよ。特に恩や義理も無いしな。 その内落ち着く所を探すさ」
「そっか」
気楽な人生設計のようだ。
「お前は?取り敢えず舞踏会が終わってから給金貰って、その後決めてんのか?」
「え。ーーー。 まだ、何も分かりません・・。」
帰りたい。けれどその方法が見当たらない。
「ー。そうか。 ま、時間はあるんだし、ゆっくり考えな」
「うん」
そして話題を変える。
「あの、舞踏会で何でこんなに警備を雇うんです?やっぱ大きいから? でも、お城なのに見ず知らずの人を雇うなんて、それはそれで不用心かもですよね?」
「あれ、何も知らずに来たのか?」
それにみやはコクリと頷く。
「そうなのか。ー。まぁあれだよな。貴族の人が沢山集まるんだよ。勿論護衛も付けて来るけど。 ここの兵達はその分いつもよりも城の中や街中に配備されるんだよ。それで俺達みたいなのが、まぁ差し障りない所を宛がわれるって訳。俺達にとっちゃあ有り難い話さ。給金いいし、働いている間もちゃんとした生活が出来るんだからな」
「ふんふん」
「見ず知らずのって言うのはまぁそうだけど、誰しも最初は初めましてだからな。 それに別にやたらめったらに雇っている訳じゃないさ。下心がある奴は大抵分かる、目を見れば。ってベア殿が言ってた。 まぁそれでもケチ付けたりちょっかい出したりする奴もいるから。あんま気にすんな。 ベア殿もそれで多少は知ってる俺の所にお前を連れて来たんだぜ」
「・・・そうなんだ」
それを知るとちょっと嬉しいし、へぇと感心する。
「それに舞踏会だからな。運が良けりゃあ可愛いお嬢さんか姫君を拝む事も出来るかもだろ? いやぁ、前にチラーっとだけ見た事があってさぁ。もうそれだけでお空に舞い上がりそうだったぜ。そりゃあ美しくて綺麗で愛らしくてさぁ。正に夜に咲く花だよなぁ~っ」
とナッチの頭の中で回想に入った様子。腕を抱き締めてぎゅんぎゅんしている。
それもある意味下心では?と思うみや。突っ込まないが苦笑う。
とそこにベアが来た。
「何を朝から気持ち悪い動きをしている」
「え」
「あ、 おはようございます」
一礼。
「ベア殿、気持ち悪いなんて失礼な。男なら誰しもよくある事です」
と堂々とのたまうナッチ。
「ー、私も男だが身に覚えが無いな」
「・・・。自覚症状が無いだけでは?」
お互いの間で暫しの沈黙が流れた。
しかしそれについては終わりだと早速今日からの仕事内容を言い渡される。




