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あれこれ準備をしていればあっという間に1ヵ月が経った。
只今みやはパラディン達6名を連れて、山を越えたもう一つのお隣、クノ国のコルト街に訪問している。この前のミディヌエットより小さいが、これくらいが平均的な大きさらしい。暮らすのに一通りの物は揃っていて、宿も大小幾つもある。
クノ国の楽器には木で作られた打楽器があった。カンコン鳴らす簡単な物が多いが、首都には木琴があるようだ。
後は木筒に布を張った太鼓っぽい物もある。
やはり土地柄が出ていて良い。
しかしっ。それよりも重大な発見がここにはあった!
「っ~~~っ・・・ 漬物っ・・」
「ご存知ですか? この国の特産なのですが、あまり広くは他に回っていない食べ物なのですよ。 クノ国は保存に関する食べ物が多い事も特徴的ですね」
と説明してくれる。
「ーーー そう・・。 って、ううんっ。何故漬物なの?パンに漬物はおかしいよね?お魚も干物の焼き魚だよ?それでパスタにミネストローネ? 組み合わせがおかしいっ」
そこは白飯だろうっと言いたいっ。
「落ち着いて下さい。 漬物はお酒のおつまみで出されている物です。チーズの代わりと言ったところですね。 歯応えがあって、他国でも一部で好まれているのですよ」
「お~ぅ・・(何故っ 何故米ではないのだっっ。 恋しくなるではないかぁ~~~っ!)」
心の涙を流しながら口へ運ぶ。
「うぅ・・ ご飯・・・」
誰か米と味噌と醬油を恵んで下さい・・。
「・・・、お口に合いませんでしたか?」
ガッカリした感じでしょんぼりした様子にそう聞かれる。
みやは緩く首を振る。
「・・・。とても懐かしくなっただけだよ。 おいしい・・」
残さず食べた。
そしてみやは宿で思わぬ訪問者を受ける事になった。
「ミヤ姫様、クノ国の王子2名が目通りを願っております。如何致しますか?」
「え?」
突然の事に動きが止まる。
「え?今? ここに?」
「はい。既に戸の向こうにおられます」
「!」
来てるんかいっ。と心でツッコミ慌てる。
「え、突然、何で? どうしたらいいの?」
声を落として聞く。
「ご挨拶に来られたのだと伺っております。クノ国は耳が早いですので、馬を走らせて来られたのでしょう」
「ええっと、、でも・・・」
会う予定など無かったし、知らない人に突然なんて緊張する。今回ルーイは一緒ではないので、対応が分からない。
「・・・断ったら失礼になる?」
「いえ、突然の非公式ですし、お断りする事は出来ます。 そうされますか?」
「うーー・・ん・・」
出来れば断りたい。服も男装バージョンだし、会話だって自信ない。
「エリネさん、私、こんな格好だし、どうしたらいいか分からない」
困り顔でそう言うと。
「大丈夫です。服なら用意がございます」
「ん?」
何て?
「この様な事もあるかと思い、荷に数着お持ちしております」
「・・・・・・、えーー・・」
万が一でも無くていい予想。出来たナイトだ。いや執事?
みやは考える。
「ーーー。 本当に挨拶だけ? 直ぐに終わるかな?」
「手土産がお有りのようですから、お茶の一杯はお誘いになるのが宜しいかと思います」
「そう。ーーー。じゃあ、お待たせするけれど、会うわ。 でもエリネさん、一人にしないでね?助けてね?」
「はい」
「絶対だからね?」
「はい」
エリネはにっこりと嬉しそうだ。
兎に角着替える事になった。髪もセットする。
いつかは会わねばならない相手だ。一度に会うよりも、顔見知りが居た方がまだましだろうと言う考えで会う事にした。
準備をパパっと整えると、王子2人を中へ入れた。
入って来たのは、紺色の髪に茶色の瞳の青年と、その髪と瞳の色を反対にした幼い少年。
2人は目立たないようにフードマントを羽織っていたが、所作からなのかそう思う偏見からなのか、佇まいが綺麗だなと思う動きでみやの前に来た。
「お初にお目にかかります。この国の第一王子、ダイキ・クノと申します。 こちらは私の弟です」
「アズキです! お会いしてくれて、ありがとうございまするっ」
下の王子は元気一杯で目をキラキラさせて見てくる。
因みにアズキのアにイントネーションがついている。
「初めまして。 大野みやです。 みやが名前なのでそう呼んで下さい。 あの、このように会うとは思っていなかったので、申し訳ないのですが、、どうぞお座り下さい」
ぎこちなく椅子を勧める。
「いえ、こちらが前触れ無く訪れてしまったのです。お疲れでしょうに、時間を取って頂き嬉しく思います」
「ミヤ様とお呼びしても良いですか? 贈り物を持って参りましたっ。受け取ってくださいっ」
「ありがとう。 何ですか?」
贈り物は2つあった。
「こちらは菓子折りで、こちらは笛です」
「笛?」
「宜しければここでお見せしましょう」
「ミヤ様はお座りになって下さい。 兄様は吹くのがとてもお上手なのですよ」
とアズキ王子に手を引かれて椅子に座る。
入れ物から取り出したのは、木製の穴の開いた細長い笛。
「笛にも色々とあるのですが、こちらは大きさも手頃な横笛になります。 音楽大使に任じられる程、音楽に関心があお有りになられるミヤ様に、是非ともこれを」
と差し出されたので手に取る。
滑らかで綺麗な作り、彫刻もされているし色も綺麗だ。
「綺麗ね。 とても良い笛では?」
「お気に召しましたか?」
「はい」
「ミヤ様も吹いてみますか?」
「え? でも・・、難しいんじゃ?」
「大丈夫です。僕でも音は出るようになりましたから」
「私で宜しければ、簡単にお手本を見せましょう」
ダイキ王子はそう言って、懐からMy笛を取り出した。
上手と言われるだけあって、構えから様になっている。
そしてそっと出された音は、澄んだ音色で落ち着きのあるものだった。
ゆっくりとメロディーが流れ、少し古風な曲に耳を傾ける。
ほんの数分で終わったが、みやはアズキ王子と共に拍手を送った。




