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「そろそろ宿に戻ろう。ずっと歩いて疲れただろう?」
空はもう夕暮れ、流石に休んだ方が良いと判断するルーイ。
「そうだね。 でも酒場に行ってみようよ」
「え?酒場に行きたいのか?」
「うん。お酒は飲めないけど、音楽が聴ける所があるって聞いたからね」
「あぁー、 しかしそうするとかなり遅くなるぞ?」
「うんいいよ。偶には夜更かししてもいいよね?その代わり明日はゆっくり寝てればいいでしょ?」
未成年なのでその様な場所には行った事が無いみや。だからか余計興味がある。
「う~ん・・。エリネ、デュラン、どこか良い店はあるだろうか?」
「こちらで調べたところ、3件程あります」
「食事を主に楽しまれるなら、『カナン亭』でしょうか」
「ではそこにするか」
「賛成ー」
8名様ご案内~。
カナン亭は2階席もあり、1階が見下ろせる。そこのテーブル席を2つとり、料理を注文する。
「ふぅー。 良い時に来たよね」
見下ろす向かい側にはちょっとしたスペースがあり、演奏者達が準備をしている。
後30分程で始まるそうだ。それまでゆっくり食事をする事にする。
「んん~~っ おいしぃ~~♪」
「ふふ。みやは本当に美味しそうに食べるな」
「え?おいしいでしょ? これなんてパリットロッだよ? 最高ぅ♪」
食べ物が美味しいのは幸せである。
そうしてお腹も落ち着いた頃に、一人の青年が弦楽器を奏で始めた。
『 ♬~ 今日は食べよう 沢山頑張ったから
今日は飲もう 沢山考えたから
楽しさも 哀しさも
胸の内におさめ切れないのなら
今夜は語り明かそう 一夜の友よ
今日は食べよう 明日のために
今日は飲もう 星空にカンパイして ~♩ 』
「男の人でも唄うのね」
「あれは吟遊詩人だ」
「へぇ~、初めて。 いい歌だし上手ね。 一人で旅してるのかな?」
「そうだろう。まぁ移動はどこかに同行したりもするだろうが、旅人と言うのは大概一人が多い」
「そんなに沢山居るの?」
「いや、吟遊詩人は偶に見かけるくらいだから、街に1人か、国で2・3人くらいだろう」
「ふ~ん」
「みやがあちこちでお披露目するようになれば、みやの歌も流れるだろうな」
「え?それはどういう・・?」
「吟遊詩人は旅をしながらあった事や噂を歌にする。だからみやの事も歌われるだろうと言う事だ」
「えぇ・・。それはちょっとー・・、恥ずかしくて聴きたくない・・・」
その時を考えると居たたまれなくなる。
『 ~♫ かの国に新しい花芽吹く
大空 翼をはためかせ
新しい風来たりと吹き報す
喜べ 喜べ トゥエルの民よ
かの国に音姫現る ~♪ 』
「・・・・・・」
あれ? この歌はもしや・・・。
「もう出来てたみたいだな」
「喜ばしい事ですからね」
もう既に居たたまれなかった・・。
そんな事もあったが、ちゃんと楽器も見れたし音楽も聴けた。
雰囲気が分かったので今回の目的は果たしたと言っていいだろう。
次は何処に行けるか楽しみになりながら、みやの旅風お忍び訪問は終わった。




