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見学も終わり、その足でお茶会に。お菓子は自分達が食べるものを分けて、後はパラディン達用で渡した。
が!!
「(何っでっ こうっなったっっ!!)」
とても和やかな昼下がり。お庭に敷物を敷いて皆でティータイム。寛ぎの時間に相応しい。
みやの前には竜王アイルとミィナが居て、アイルのお膝にミィナが乗っかっているという、父と娘の姿は微笑ましい限りだ。周りの者達も目を細めて見ている。
それはいい。それはいいが・・・、
「(だからって何でこっちもそうしなくちゃいけないのっっ?)」
この輪の中でみやだけがリラックス出来る状態じゃない心境にあった。
ルーイの膝にちょこんとお座りさせられ、腕に抱き寄せられている。
「(公開処刑ですかっっ!)」
羞恥で死ねます!
「(はいそこぉっ! こっちまで微笑ましく見ないっ!全くっ和ましくないからぁーっ!)」
みやは一言も喋る事無くその時間を耐えて過ごした。
お茶の時間から解放された途端にルーイから離れ、「お先に失礼します!」と一礼して素早く脱兎の如く走り去った。
見送る側は目をパチクリ。止める間も無かった。
パラディン達が慌てて追っかけるのも、またパチクリと見送るだけだった。
一足早く部屋に戻ったみやは、そのままベッドに流れ込んだ。
走って乱れた息を整える。
その直ぐ後に外からフワッと風が入って来て、パラディン達が入って来た。階段側からも到着したようだ。
「(早いな・・・)」
少しでいいから一人にさせて欲しい。暫く放っといてくれないだろうか。いい加減疲れてきたかもと思う。
目を瞑ってても今自分に視線が来ている感じがする。
みやは横向きに態勢を変えて現実逃避した。
そうしている内にいつの間にかうたた寝をしていて、気付けば夕方になり起こされた。
「んんー・・・」
「ミヤ姫様。 ミヤ姫様」
「・・・ んん・・?」
「ご夕食の支度が整いましたが、お召し上がりになれますか?」
みやは部屋に明かりが点いているのを知り、体を起こす。
「んん~っ はぁー・・ もうそんな時間・・」
目を擦る。すると湯気の立つタオルを差し出された。
「どうぞ」
「? あー ありがとう」
蒸しタオルだ。あったかい。顔に当てると気持ちいいし眠気もとれた。
その後は夕食とお風呂を貰い、みやはテラスに出た。
陽が沈んだばかりの空に、チカチカと星たちが瞬いている。
ここに来て暫くしてから気付いた事。それはここには月が無いことだ。夜を照らす太陽が。その代わりの様に星の数は多い。こちらの星空を初めて観た時は驚いたものだ。今もその存在感に圧倒される。
「ミヤ姫様、夜の外はお体が冷えます」
エリネがカーディガンを掛けてくれた。
お礼を言って再び空を見上げるみやに合わせて、エリネも見上げた。
「夜の空がお好きですか?」
「んー、そうね。 こんなに沢山の星を見るのは初めてなの」
「ミヤ姫様のお国は少ないのですか?」
「んんー。本当は沢山あるのよ。でも空気がキレイじゃないから、見えなくなってしまったの。自然が豊かな所だったら満天の星が見れると思うわ」
「そうですか。それは・・、暗そうですね」
「うん。 でも発展してる所だったら、町にはずーっと明かりが点いて明るいんだよ」
「そうなのですか。我々からすると飛びずらそうですね。方向が分からなくなりそうです。星の位置や動きで方角や時を知りますから」
「あぁ。そう言うのが分かるのはいいね。私の世界にはね、お月様があるんだよ」
「おつきさまですか?」
「そう。月って言う星があってね、夜の太陽みたいな星なの。あの星たちを、ぎゅぅ~っと太陽くらいの大きさにしたくらいの光が、夜を照らしてるのよ」
「ーー。それは、不思議な光景ですね・・」
見たことのないエリネは空を見ながら想像しているようだ。
「エリネさん、名前がある星ってあります?」
「名前がある星ですか? そうですねぇ。 ここから見える分かり易いものですと・・。 あの星でしょうか」
「どれ?」
指を指す方を見てみる。エリネが足を曲げ、みやの目線に合わせる。
「この方向にある木の、少し上に、他よりも大きな、少し色の濃い星が分かりますか?」
「ー、 あ、 あれかな?」
「上下左右に小さな星もありますか?」
「上下左右・・・ うん、ある」
「我々はそれを十字星と呼んでいます」
「あぁ、見える見える」
みやはそれから他のも幾つか教えてもらい、部屋の中に戻った。
布団の中に入るとみやはエリネに言った。
「エリネさん、目が冴えて眠れないから、何かお話して?」
「分かりました。どの様なお話が良いでしょうか」
「何でもいいよ。 あでも、実話の方がいいかな?」
「そうですねぇ・・。ー、そう言えば、ミヤ姫様は今何の本をお読みになっていますか?」
「あぁー、まだ全部読めてないんだけど、最初の花嫁さんのお話だよ。まだ半分くらいかな?」
「では、本には書かれていない花嫁様のお話は如何ですか?」
「なぁに?聞きたい」
エリネは穏やかに笑んで、みやに語り聴かせた。みやはそれを聴きながら眠りについた。




