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午後の見学はルーイと一緒。
仕事から戻って来たルーイは、真っ先にみやの所に来てただいまをする。
ギュ~~っとハグしてからの・・・
みやちゃんカーーット!!
ルーイの口を押さえた。
「(そうは問屋が卸さないわっ。毎回会う度にされちゃ私の心臓に良くないからねっ)」
カットされた側のルーイはちょっと残念そうにしゅんとなるが、押さえたみやの手を取って、その手の平にキスをして満足したらしい。
「っ!?~~~(キャァーッ わぁー~~っ あ アホぉ~~~っ バカぁっ!)」
結局は心臓に悪い結果に。
「(手はダメなのかっ いや、口にやるのがダメなんだっ ムムムム・・・)」
まだ精進しなくてはと違った方向に考えるみや。
別に嫌悪はしてはいない。しかし精神がもたないからで、これは立派な自己防衛なのだと言い聞かす。
気を取り直して見学する場所へ。
「ご覧になっても余り面白いものではありませんが・・。ーー」
エリネがみやを見ると、その目は既に楽しそうだった。
その通り、みやの気分は上がっていた。真剣で稽古、ドキドキする。
「(おぉー。 カッコイイっ!)」
生の打ち合いはハラハラものだ。それでもまだ稽古であって試合ではない。
「ー。 いつも皆真剣で練習をしているの?」
「はい。パラディンは皆そうです。 見習いの卵くらいなら、代わりの物を使用します」
「代わりの物って、木の棒とか? 私にも持てそうな物?」
みやは興味を持って質問する。
「そうですね。木の中では一番堅く重い素材ですが、お持ちになるだけなら持てるかと」
「ふーん。ーー。 パラディンになるのって、何か試験とかがあるの?」
「はい、見習い前と、パラディンになる前で2回、その後を入れて3回あります」
「そうなんだ。じゃあパラディンって今はどれ位いるの?」
「パラディンは現在 総勢約2万7千人程で、見習いは千人程おります」
「へぇ~。ー、それって、多い方なのかな?」
覚えられない数だが、一国の兵の数として、大陸を守る数としてもそれは足りるのか、比べるものが無いから分からない。
するとルーイが答えてくれた。
「他国からすれば少ないだろうな。しかしそれを十分補える力がある。1日あれば大陸を一周出来るし、竜族は五感が良いので夜目も効く。体力も普通の人の何倍もあるし、寿命も長いからその分培ったものの差があるだろう」
「へぇ~」
取り敢えず常人ではないのは分かった。
「そう言えば、ルーイも稽古するって言ってたよね?」
「あぁ。一人でする時もあるが、パラディンに相手を頼む時もあるな」
「(ほーう) 見たいなぁー」
「ん?」
「ルーイの稽古をしてるところも見たーいっ」
期待の目、キラキラビーム!
「・・・ 見たいのか?」
「うんっ」
「ーー、んんっ・・そうか 」
見たいなー視線を送り続ければ、ルーイも満更でもない様子だ。
「分かった。 エリネ、頼めるか?」
「はい」
「ありがとうっ。(やったっ♪ しかも相手はエリネさんか。お手並み拝見っ)」
少し準備をしてからパラディン達が稽古をしていた場所に立つ。
「ルーイー! 頑張ってねーー!」
笑顔で飛び跳ねんばかりに手を振るみやに、ルーイがにやけ顔を引き締めるのが分かる。
稽古のはずだが、これは頑張っていいところを見せたい。ルーイは一つ大きく深く息を吐き、向かい合って構えた。
「行くぞ」
「いつでもどうぞ」
見合って探り、ルーイから動く。
剣と剣のぶつかる音。真剣で打ち合うのを初めて見るみやも真剣だ。
扱い慣れた動きは見応えがある。しかしこれは手合わせだ。実践ならきっとこれ以上だろう。
肉を切る事に躊躇なく、血を流すのだろうか。いや、そもそも切る為の武器だ。武道を極めるスポーツとは違う。
頭では分かっている。でも、とみやは思う。
その光景を自分は見た時、受け入れられるのか。
その後も彼等を同じ様に見て接しられるだろうかと。
「・・・怖くないのかな・・・」
ポツリと洩らす。
すると傍に控えていたラーナが言葉をかける。
「お止めしましょうか?」
「え?」
「無理にご覧にならない方がよろしいかと・・」
独り言が聴こえたらしいと分かり、みやは首を振る。
「違うの。私じゃなくて・・、剣を振るっている皆が、怖くはないのかなって」
「? ・・私達がですか? 」
「うん。 まぁ、怖いと思ってたらナイトは出来ないよね。 皆さんは、その剣を使って戦った事はあるの?」
「えぇ。ですが大きな戦はもう随分とありませんから、使用する機会は減りました」
「そうなの。 じゃあ他の人達が剣を持っているのはー、賊が出るからとか?・・」
「それもあります」
「他にも?」
「剣や弓矢、槍などの武器はそのまま武力になります。そしてそれは国々の力を示します。このトゥエル大陸内で戦が無くとも、他の大陸ではまた異なります。如何に我々が強いと言っても、全てを守れる訳ではありません。甘んじず自らの力でも守っているからこその安寧です」
「なるほど」
一人一人が優秀であっても数は多くない。だからこそ皆一人一人が警備の目を持った方が事件は少なくなる。それぞれ出来る事を協力し合っているから平穏なのだろう。
「(それにしてもエリネさん、余裕だなぁー。流石総隊長ってところか。 ルーイも太刀筋綺麗ー。 これは惚れるわ・・)」
好きだと言われてスキンシップも積極的で、意識しない訳がない。しかもこんなカッコ良くてイヤな訳が無い。そして人柄も良いとなれば断る方が難しい。
ただ、世界も暮らしも2つの意味で、別の世界の人と自分では夢か幻の様な差がある。
姫と呼ばれる自分が不安定だ。ここに居るのが可笑しいと感じる時があるのは、当然だと思う。
「 あっ そこっ おおー カッコイイ・・ 」
どっちも応援して眼福。
そして前のめりに反応を示すみやに、周りは複雑な思いをそっちのけて微笑ましく見ていた。




