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“ コン コン コン ”
竜王の執務室に訪問者を告げるノックの音。
ベルネが応対しに扉を開けると、いつもの服装とは異なった装いをしているみやが立っていた。
「こんにちはベルネさん。お仕事中すみません」
ペコリと頭を下げる姿も可愛らしい。
「これはミヤ姫様。どうかされましたか?」
冷たく見えるベルネもみやを見る目は優しくなる。
「はい。実は午後のお茶のお誘いに。時間が出来てしまったので、先にお菓子を配りに来ました。取り込み中でしたら午後にしますが・・」
すると中に居た竜王アイルが声をかけた。
「ベルネ、入ってもらいなさい」
「はい」
部屋に入って来たみやをアイルは優しく迎え入れて手招きする。
「おいで、ミヤ」
呼んで来たみやをアイルはハグする。
みやは触れると体に力が入る。そこから安心して力を抜いてくれたら嬉しいのだが、ずっとそのままなのでまだ慣れてもらってないのだと分かる。
「来てくれて嬉しいよ。時間があるならゆっくりして行きなさい」
「え、でも・・・」
遠慮しようとするのをアイルは妨げる。
「仕事の方なら気にしなくて良い。ミヤが居てくれれば私の為にもなる。それに、ルーイやパラディン達ばかりでは狡い。私だって一緒に居たいのだよ」
「はあ・・・」
まだダメか。
「あぁ、そうそう、実はミヤには仕事の方での報告があるのだった」
「? 仕事の報告 ですか?」
反応してのって来た。アイルはここだと誘う。
「あぁそうだとも、音楽大使のね。さぁおいで」
「・・はい」
みやはなかなか甘えないし、真面目な子。その身の固さは女性とは思えないほどで、少しルーイと張り合えそうだ。
「そう言えば今日は少し違う服だね? 可愛らしく似合っているよ」
「ありがとうございます。今日はパラディンさん達の訓練を見学するので、その様な身軽な服がいいなと思って。 今度の外出はこんなリボンは付けないですけど、加工して作ってもらったんです。パラディンさん達、とても手が器用で驚きました」
「ほぅそうかね。 しかし、やはりミヤは可愛いから直ぐに身がバレてしまう気がして心配だねぇ」
この可愛らしさは隠せないのではと心配だ。
「大丈夫です。いざって時は逃げますからっ」
「ーー」
そこは素直に助けを求めて欲しいところだ。
ソファーに座って落ち着いて話をする。ベルネがお茶を出してくれた。
「それで午前の見学はどうだったかね?確か飛行訓練をしたはずだが」
「はい、とても凄かったです。綺麗に列を組んで、本当に姿が変わっても、自分の体と同じ様に動かしているのだと思いました」
「ミヤは飛ぶのは怖くないかね?」
「あーえぇっと、、はい。 正直怖いですけど、・・でも、パラディンさんの上で、一緒に乗ってますし、そこは落ちないようにしてくれていると、信じてます」
「そうか」
今はそれだけでも十分なのかもしれない。が、こちら側としてはもっと好意を持って欲しいと望んでしまう。
「それで、報告って言うのは何ですか?」
「あぁ。早速あちらこちらから手紙を受けているのだよ。史上初の事だからね。 音楽大使と言うのもそうだが、それが女性と言うのに反響があってねぇ。良ければ招きたいと申し出も来ているのだよ」
「もうですか? まだ活動らしき事もしてないのに・・」
「ミヤの音姫の噂でも届いたのかもしれないね」
「・・・」
微妙な顔をするみや。
「どう返事を出そうかね?」
「そうですねぇ。ーーー」
みやは真面目に考えている様子だが、その様も可愛らしいと思うアイル。
「直ぐには考えていません。行くとしてもそんな大それた所なら、それなりにお披露目出来る形を作ってから行きたいですし。準備をする期間が欲しいですね」
「うむ。 まぁそんなに急ぐ事もない。理由は何とでも付けれよぅ。今はまだ挨拶程度だからね。 しかし行く行くは訪問する事になるだろうから、その心づもりでいてほしい」
「はい、・・考えておきます」
アイルは、よしよしと頭を撫でてあげたい、膝に乗せてギュッと抱いてキスの一つや二つはしてあげたい、そんな思いをグッと抑えて笑むに留めた。
みやはお菓子を置いて、またお茶の時間にと行ってしまった。
アイルは はぁーっと溜息をつく。
「なかなか簡単には慣れてくれそうにもないねぇ・・」
「はい」
ルーイも大変だ、とその気持ちを察するのだった。
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