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ルーイと一緒に来てみれば、既にお茶の用意が出来ていた。
長椅子に2人で座る。
「取り敢えずお茶を一杯飲みなさい。喉が渇いただろう」
そうアイルから言われて頂く。お茶請けには小さなケーキがついていたのでこちらもパクっと頬張る。
こちらに来てからお茶の時間は必ず取るようになった。こんな優雅な事をしたのはほぼ無い。学校帰りに友達と、とか、家にある物をちょっと摘まんだりとかくらいだ。
お茶を飲んで一息つくと、ウイリスがお代わりを注いでくれた。
「ぁ、ありがとうございます」
「いいえ、遠慮なくどうぞ」
有難く頂く。
「ではそろそろ話に入るとしよう。 実は先程も3人で話してみたのだよ。何分初めての職だからね。 始めからあれこれと多く決めるつもりはない。必要なら増やせば良いだけだ。 今のところの目的としては、ルーイからの提案にあった、楽譜の認知と普及で良いかな?」
「あ、はい」
「その為には各地の者に教え伝える必要が出て来るだろう。ここに呼び集めても良いし、現地に行くのも良しだ。 いきなり出向くのは心配故、招待してパーティーを開くのが良いと思う。 急ぐ事柄でも必要に迫る事でも無いので、馴染むのは何年かかかるであろう。先ずは友好を築き、少しずつ広めて行けば良いと思う。 どうだね?ミヤからは何かやってみたい事はあるかね?」
そう聞かれてちょっと考える。
「んんー・・・、そうですねぇ・・。 えとぉ、、知り合うのはもちろん必要だと思います。ですがそのぉ、、私、パーティーとかはあまり馴染みが無くて・・。 それに、相手の人が畏まってしまうのではないかと思います。こそで楽譜の事を切り出しても、そうですかで終わってしまうような気がします。 習わないといけないと、義務の様に感じる必要は無いですから。 楽譜は謂わば、曲を形作ったものです。記録です。 今まで自由に奏でていたものを型にはめて、その通りに奏でるとしたら、それは窮屈に思う方が居ると思います。 ですが楽譜はその曲を作った人の感情や、その曲の情景がそこにはあります。ですから記録をすると言う意味合いで、興味関心がある人に先ずは教えてみるのは良いかなと思います。また新しい曲作りや、知らない曲を覚えるのに使用するのも良いと思います。 ですからー・・、先ずは私が行く方がいいんだと思います。あでもっ、表立って行くよりは、自由にこっそり訪問したいです。まだ大々的に広めてやると言うより、私が学びたいと言うか、知りたいので。教えるなんてやった事ないし、経験者の方にあーだこーだと言うのは自信がありません」
「ふむ。ーー。言い分は分かるが、知らないからこそ心配だ」
アイルは訪問する事はまだ早いと思っているようだ。
「竜王様、百聞は一見に如かずと言います。 知識は有るに越したことはありませんが、沢山聞くより一度で良いから見た方がいいと言う事もあります。本を沢山読んでも、体験した事から学ぶ事の方が勝るのです。 仕事は習うより慣れよと言いますよ。実際色々動いてみた方が分かる事が多いかと思います」
説得するみや。
「ふむ・・。ーーー、良かろう。 しかし、一つ問題がある。 ミヤは女性だ。どうしようにも外へ出れば人目につく。護衛は勿論付けるが、直ぐに噂となって広まるだろう」
結局バレて騒ぎになると懸念する。
「えーと・・。 多分、それは大丈夫だと思います・・」
「? 何故だね?」
「男装すればいいですから。 アビス国でもバレませんでしたから、その様な服装なら行けると思います。マントでも羽織れば隠せますし、多少なら少年のふりだって出来ます」
「・・・」
「ついでに色々と見て回って、美味しいものを摘まんで、いい物があったらお買い物もしてみたいです。 ダメですか?竜王様」
お願いのポーズ。
「・・あぁ そうだねぇ・・・」
やや押され気味のアイル。
「父上、物は試しです。みやもやる気ですから、負担にならない程度にさせてみるのが良いかと。 パラディン達も供をしますし、私もついて行きます」
ルーイもプッシュ。
「ふむ。ーーー。 良かろう。 但し、始めは近い所にしなさい」
「はい」
「ありがとうございます」
パーティーは回避した。
「では早速日取りと場所を考えましょう」
「うむ」
その後予定を決めて、地図を広げて行く所を話し合った。
その結果、日は1ヵ月後、場所はアビス国の領地。国境である山を越えて一晩行った先の街となった。




