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約束通りみやは食事の後そのままルーイと一緒に過ごす。午後のひと時を散歩していた。
ルーイはみやの手を握って当然の様に歩くが、みやはそれだけでドキドキしてしまう。まるでデートだ。
こちらにデートと言う意味の言葉があるのか知らないが、2人で過ごす時間は紛れもなくデート。
「(こんなの初めてだし慣れないよぉ~)」
こんなにハッキリと好意を持たれ接し続けられると、息苦しくもあるが嬉しさもある。何気に幸せっぽく感じるし、こんな関係がこの先も続いたらなんて思ってしまう。
考えてみれば初恋の相手?なら今も恋をしているのかもしれない。ただ怖い。本当に好きになった後が。失恋したら・・・。
とそこにルーイの手が伸びてきた。
「!・・・?」
「じっとしてて」
手には一輪の花が。それを耳の上に差し込んでくれた。
「似合う」
優しく満足そうに笑む。その顔にときめくみや。
「・・ありがとう」
ルーイはみやを気遣って、ベンチで休もうと促して座った。
「緊張して疲れてないか?」
「え、 あー うん・・」
「みやの音色も私は好きだ。何度聴いても心に来る」
「ありがとう・・」
「音楽大使としてはこの後父上達と話し合う事になるが、みやも考えておくと良い。みやがどうしたいかが一番だと思う。 楽譜を広める為と言うので与えられたものではあるが、拘らなくても良い。みやの自由に」
「うん。ーー」
義務として気負わなくてもいいと言われた。ルーイの王族の面が窺えた。そこに自分との差も感じるが、信用もそこにはあった。好きに役職を利用してもいい。それは乱用しないと言う信用があるからだ。
これは真剣にキチンと考える必要があるとみやは腹をくくる。
国の仕事ではないが、国から頂いたもの。自分の行動は国に影響を及ぼすものだ。
今更ながらに大変そうだと思うが、そこは周りに頼って何とかやろうと考える。
「自分なりに考えてみるね」
そこでその話は一区切りさせ、みやは気を落ち着かせた。
「ルーイ、話はちょっと変わるんだけどね、いいかな?」
「何だ?」
「うん、、あのね・・、あのさ・・・、 ルーイは、、私のどこがいいと思ってるの? その・・ね? 正直、嬉しいとは思ってるよ? でも、私なんか可愛くないし、綺麗でもないし、・・そんな魅力的でもないし? 王子様の隣りに居るような女の子じゃないからね・・。 その・・、 ごめんなさい。 私、きっと皆を悲しませる。期待に応えられないかもしれないから・・。ルーイの気が変わったら、ちゃんと言って欲しいんだ。でも、良かったら、、友達でいてほしい。図々しいけど、そうしてくれたら嬉しい。それで、大丈夫だから・・。私、一人でも何とかやっていくし、ルーイは気にしずに前に行ってくれたらいいよ。だからね・・っ!?」
早口になっていくみやの口をルーイは指で触れて止めた。
「・・・・・・もういい 。 それ以上 言わないでくれ 」
「・・・・・・」
ルーイはどこか辛そうで悲しい表情と、熱の籠った瞳をしていた。
みやは黙った。自分でも言ってて少し悲しかったので、止めてくれてほっとしたのと、指が触れてドキッとしたのが混ざって固まる。
ルーイは深い青い瞳で見つめながら、想いを込めて言う。
「 好きだ。 愛してる・・・ 」
「・・・・・・」
ドストレートな告白。
ルーイは口に添えた手を顔の横にやり、顔を近づける。
それが触れようとした時、みやは僅かに身を固めて引いた。それにルーイは悲しげにして離れた。
みやはそんなつもりは無かったが、ルーイからすると拒否にも似たものだったので、心が沈む。
「・・・すまない・・ 私の一方的な想いが・・・ 」
「 ぅ・・・ううんっ。 わ、私の方こそごめんねっ。・・・・・・」
みやは思う。どうしてこんなに想われて、自分はYesと返せないのかと。
何がいけない。違うのか。
今まで通りの生活でなくなったから、色々と不安な材料がある。
花嫁になってしまったら、もう戻れないかもしれない。そんな寂しさもある。
どうすれば良いんだろうか。心が苦しい。
良いよと言えば楽になるだろうか。
でもまだその決意には至らない。自分の気持ちが足りないのだろう。ルーイと同じだけの気持ちには足りないのだ。
友達ではあるが、知らない事ばかりだ。
「(そうよ。今はまだ友達。だからもっと知って仲良くなればいいよね?)」
異性の友達は居る。意識するような相手は初めてだが。
「(そ、それだったらー・・・こ・・恋人、とか? 一応告白されてるし? お付き合いしてもしてなくても、現状で既にそれっぽいし?)」
それに告白されたのに、返事を保留のままお友達にと言うのはそれはキツイと思う。
「ーーー。 る・・・ ルーイ 」
みやはベンチから立って向き合う。
「あのですね、私・・・、 結婚はやっぱりまだ無理だと思うんです。 で、でも・・、その・・、ふ、普通の、お付き合いなら、大丈夫です。 私、もっとルーイと仲良くなりたい。恋人まではいかないけど、えとー・・、私も、ルーイのこと、、好き だし・・・。友達以上になれたらいいなーとは思ってるから・・」
「・・・みや 」
ルーイも立ち上がる。
「だから、ルーイの信頼に応えられるように、音楽大使、頑張ってみるっ。 だから・・、皆の好意に甘える形になるけど、務めを果たせるまでは、お世話になるね。不束者だけど、よろしくお願いします」
ペコっとお辞儀をする。あれ?告白の返事だったはずだが・・?
ルーイは眉を下げてちょっと複雑そう。
「・・・そんなつもりで言った訳ではないんだが・・。 引き受けてくれてありがとうと言うべきかな? 人の事は言えないが、みやも真面目だな」
「そう? 普通だけど・・」
その普通の差もかなりあるようだ。
「ー。 ではそろそろ行こうか」
ルーイは再びみやの手を取る。
時間が来たようなので移動した。




